長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。
妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。
犬は、サム以外の人間の前にはなかなか姿を見せず、声も立てない。真実の愛の姿を美しく爽やかに描いた大人の童話。
最近、荻原浩さんの「神様からひと言」がまた売れているようです。
何年か前……えーと僕がまだ書店員になる前の2005年だから9年前か……この「神様からひと言」は、書店と出版社の仕掛けで一度けっこう売れています。
僕も書店でPOPを目にし、平積みになっているのを手に取りました。
(それが荻原浩さん初体験)
だから、僕と同じようにそのころから荻原浩さんを読んでいる人は「なんで今さら?」って思うでしょう。
でもね。
9年前って、今ハタチの人が小学校五年生だったんだよね。
たいていの小学校五年生は、書店で仕掛けられている文庫本を買わないよね?
だから今。
9年も経てばぐるっと一周して、昔売れていた本がもう一回売れるようになるのでは?
なんて考えていて、真っ先に思いついたのが、この「白い犬とワルツを」。
何と言っても書店に「手書きPOP」ブームを巻き起こした一冊ですから。
もう一度、ベストセラー狙えないかな?
長年連れ添った愛する妻を失い、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。
妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。
サムの老後は一般的に考えて、かなり幸福なほうだと思います。
苗木を育てる仕事を懸命にしてきたサムは、その道ではかなり名を馳せているらしいし、大勢の子供やその配偶者たちは皆、それぞれにサムのことを思いやっている。
友人もいるし、少々おせっかいだけれど家のことを手伝ってくれるニーリーもいる。
そう、サムは間違いなく幸福だった。少なくとも僕はそう思います。
コウラとは行くことが出来なかった思い出の場所に、白い犬と二人で行くというちょっとした冒険も経験できた。癌に侵された後も、白い犬がずっと彼の側にいてくれた。
裏表紙の梗概に「あなたには白い犬が見えますか?」と書かれていた。
これは作者から僕たちへの問いかけに他ならないでしょう。
白い犬が見えるような幸せは人生をあなたは送ってきましたか、あなたにとって白い犬になってくれるような相手はいますか、と問いかけているのです。
以前何かで読んだ言葉をふと、思い出しました。
「あなたが生まれたとき、あなたは泣き、周りの人達は皆、笑っていたことでしょう。だからあなたが亡くなるときは、あなたが笑い、そして周りが泣いてくれるような人生を送りなさい」
そうありたいものですね。
サムのように、白い犬と出会えるような人生を送りたいものです。