二十三歳の美術教師・岡里菜は、初めて受け持った中学校で耳にするはずのない声を聞く。
二年前、何者かに殺された里菜の恋人と同じ声。
その声の持ち主である男子生徒・五十嵐薫は、ある不思議な能力を持っていた。
ふたりは絵画を通じて、次第に教師と生徒という壁を越えて心を通わせていくが……。
里菜の恋人だった伸を殺した犯人。
伸と同じ声を持つ教え子の少年。
少年が持つ、絵画からそれを描いているときの情景を読み取るサイコメトリー能力。
少年に恋し、里菜に嫉妬するいとこの少女。
面白くなりそうな要素はいくつもあるのだけれど、それがうまく活かされていないという印象。
ミステリなんだか、サスペンスなんだか、ファンタジーなんだか、青春小説なんだか。
よくわからない。
自分の将来に対する漠然とした不安を抱く十四歳という年齢。
まだ、何者でもなく、自分が何者になれるかもわからない、そんな曖昧な年齢の少年、少女たちの葛藤を描いた物語であるのならば……こんなストーリーにする必要はなかったんじゃないかなあ。
若い読者を対象とした「ミステリーYA!」の中の一冊だから、それを意識したのかな?
でも、若い読者だからと言ってこんなに内容を幼くする必要もなかったような気がするな。
若かろうが、そうでなかろうが、読者は読み応えがある作品のほうが好きだと思うけれど。