母親を高校の同級生・渡部に殺されたライターの銀次郎。
犯行後自殺した犯人の遺書には、高校の頃、銀次郎が原因で自殺した女生徒の恨みを晴らすためと書かれていた。
なぜ母は殺されたのか。
母の死の真相と身に覚えのない汚名を晴らすため、奔走する彼を次々と襲う衝撃の真実。
どんでん返しの連続に一時も目が離せない傑作ミステリ。
イヤミス…と呼んでいいのかな。
少なくとも、読後感がよろしくないことは、保証します。
でも、とにかくスピード感があって、物語に引き込んでいく力が強い。
読者を引っ張るツボを心得ているのですね。
なかなかページを捲る手が止まらない。
ひとつの謎が解けるとまた次の謎がそこから生まれてきて……きりがない。
まるで、週刊連載の漫画がラストの一コマで次週まで読者の興味を引っ張るように。
主人公の銀次郎が母親を殺害されるところから物語はスタートします。
ほどなく、その犯人が自殺を遂げ、なんと銀次郎の高校時代の同級生であることがわかります。しかも、彼の遺書から、実際に狙われていたのは銀次郎自身であることが判明するのです。
銀次郎が高校時代に暴行をし自殺に追い込んだ赤井市子というクラスメイトの仇討……それが彼の犯行動機だというのです。
でも、銀次郎にはそんな覚えはまったく、ない。
その赤井市子とはほとんど口もきいたこともなかったのですから。
それでも、世間は銀次郎を疑います。警察も父親や兄までも。
そりゃそうです。
だって、相手は自殺しているのだから。
死んだ人間を必要以上に敬うのは日本人の悪い癖ですが……まさか死に際に残した遺書にわざわざ嘘を書く人間はいまい、と誰もが思います。
まして、殺人を犯しているわけです。
その動機が嘘だなんて誰が思います?
というわけで、銀次郎は四面楚歌。
自身の名誉とプライドに賭けて彼は真実を探る取材をはじめます。
(銀次郎はフリーライターですから)
正直、ラストはいろんな意味で有り得ねーって思いました。
ひとによっては「こんな理由で……?」と思うかもしれません。
意外性を飛び越えて、がっかりするかも。黒幕の正体にも。
(僕はそこまでではありませんでしたが)
ラストまで読んで、はじめてタイトルの意味はわかります。
そして……おそらく、その異様さと異常さを誰もが薄気味悪く感じるでしょう。
ラストまでたどり着くのにそう時間はかかりません。
きっと、途中で本を閉じることはできないでしょうから。