「こめぐら」 倉知淳 東京創元社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

密やかなオフ会で発生した謎。男たちが真剣に探し求めるのは、とんでもないものの鍵だった!

キツネさん殺害事件の容疑者は当然ながら(?)どうぶつばかり。“非本格推理童話”の結末は?

1994年の本格的作家デビュー以来、コミカルで上質なミステリの執筆に取り組んでいる著者が、16年のあいだに発表したノンシリーズ作品を集成。

ボーナス・トラックとして、猫丸先輩探偵譚を一編収録。


こめぐら (倉知淳作品集)



「Aカップの男たち」は……もう、本当にしょうもない。

ブラジャーを着けることをこよなく愛する男たちのオフ会で、アルミ合金製のブラジャーの鍵が紛失。

このままでは、ブラジャーを外せない!

鍵はいったいどこに消えた?


……って、あらすじを書いているだけで十分に馬鹿らしいのですが、これを一編のミステリに仕上げるっていのは……このアホなパワーはどこからくるものなのだろうかね?

なんかもう、ここまでアホらしいとかえって面白く感じられるから不思議。


「毒と饗宴の殺人」はボーナストラックのようなもの。

倉知淳ファンにはお馴染みの猫丸先輩もの。


作為が一切入り得ない状況下で選択されたグラスに毒が混入されていた。

容疑者たり得る二人も、そのグラスから酒を飲む可能性が十分にあった。

犯人はどうやって、ターゲットに毒入りのグラスを選択させることができたのだろうか?


……というのが謎なんですが。


このパターンっていくつか前例もあるんですが、あまりすっきりした解決を読んだことがないんですよね。

機械的なトリックに走るか、もしくは「そんな無茶な」というような奇想天外な心理トリックで、どっちにしてもあまり美しいとは思えないのです。


最たる例が、有栖川有栖さんの「モロッコ水晶の謎」

あまり書くとねたばらしになるのですが……奇想天外すぎてひっくり返りそうになった。


……が。

もしかしたら、本作のほうがおバカ度ではさらに上をいくかも。


すっげー似ているし、どっちもどっちなんだけど……読み比べてみるのもいいかもしれませんよ。


その結果、本を投げたくなっても知りませんけど。