帯のハナシ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

オビの惹句は、本を購入する際にけっこう重視しています。


(品質面において)保証がある、知った作家さんならともかく、はじめて読む作家さんであれば、本当にもう、オビだけが頼り。

特にハードカバーの書籍には、たいていの場合、梗概や解説がないので、オビに全幅の信頼を置くしかないのが事実。


だからこそ、オビには正確性を。

望みたいのです。


梗概には何度も何度もだまされた経験があります。

(ホントにこの本読んで書いた?って思うものすら……)

正直、あんまり当てにしていないので裏切られてもまあ…仕方ないかなと思えます。


だから、オビの惹句は最後の希望

頼むよ、本当にね。


先日、出版社の営業さんから新刊のゲラをいただきました。

内容はいわゆるサイコサスペンス。


オビのイメージもゲラの表紙に印刷されていました。


出版前なのでそこに何が書かれていたかは差し控えますが、「おっどんな物語なんだろう」と興味を誘うような内容でした。

もしかしたら今までに読んだことがないようなタイプのミステリなのかもしれないぞ、と。


ところが。


読み終えてびっくり&がっかり


オビの惹句に嘘が書いてあったわけではないのですが、

「なんで、わざわざそこを強調したの?」

って言いたくなるくらい。


たとえばですね。

「桃太郎」の本のオビに、

「子供も孫もいない孤独な老夫婦にある日突然、事件が起きる!」

って書かれていたら、どう思います?


いや、そりゃ確かに嘘じゃないけどさ。

桃太郎ってそういうハナシじゃないでしょ?

桃太郎本人のことも、犬猿雉のことも、鬼が島も、鬼退治も、触れなくていいわけ?

「そこは物語にとって重要か?」って思いません?


今回頂いたゲラのオビはそんな感じ。


ねたばらしをせずに、物語の核心部を表現し、その上でインパクトを与える……それがどのくらい難しいことかは理解しています。

(書店のPOPも同じですから)


でもね。

オビから想像した物語と、実際の内容があまりに解離していると、読者は内容の優劣とは無関係に、

この本にはだまされた

という悪印象を抱きます。

オビを頼りに、千何百円かを払うお客様のためにも、ぜひ配慮してもらえたらなあとつくづく思いました。



まあ、僕の場合は、

タダでゲラを頂いているのだからこんなこと言う権利はまったくないのだが(笑)