「三毛猫ホームズの駆落ち」 赤川次郎 角川書店 ★★★ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

土地持ちの大富豪、片岡家と山波家は犬猿の仲。その片岡、山波の両家の長男、長女が相愛の仲となって駆け落ちをする。
それから十二年。

この日本版「ロミオとジュリエット」の二人を探すべく、両家から東京に人が派遣される。田舎では片岡家の三男坊と山波家の長男が刺し違える事件が起きて事態はますます紛糾し、東京でも第二、第三の事件が起きる。



三毛猫ホームズの駈落ち (角川文庫 (5946))



ところでこの「ロミオとジュリエット」の二人、名前が義太郎と晴美だというのだから偶然とはまことに恐ろしい。

そんな縁もあって片山兄妹や石津刑事、さらに我らがホームズも事件に巻き込まれることになります。


赤川次郎さんのこの手のシリーズに「捜査が非現実的だ」とか「トリックがチャチ」だとか言っても仕方ないことです。

本格ミステリではなくユーモアミステリなのだからその辺はさらっと読めばいいのです。

(停まってないはずのエレベータから犯人が消えるトリックは本格ミステリとしてもちょっと面白かったと思いますが)


本作で面白いのは、ロミオとジュリエットを添い遂げさせなかったところ。

二人は東京に逃げてきてからしばらくして別れ、それぞれ別の人と結婚をしているのです。

なにしろ二人が駆け落ちを企てたのはまだ十代の頃なのだから無理もない話です。

永遠に続く愛なんてそうはないというのが現実。

本家のロミオとジュリエットだってもし二人が一緒になれていたらきっとケンカもしたろうし、もしかしたら別れちゃったかもしれない。


ミステリとしての出来不出来はともかく、プロットとしてはよく練れているなあと思いました。