「46番目の密室」 有栖川有栖 講談社 ★★★★ | 水底の本棚

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本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

45の密室トリックを発表した推理小説の大家、真壁聖一が殺された。

密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。

彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか。

推理作家・有栖川有栖とその友人で犯罪学者・火村英生のコンビが怪事件の謎に迫る。



新装版 46番目の密室 (講談社文庫)



トリック自体はどうということもない。

というより、暖炉から鈍器を落とすというのは今一つ現実味がないような気すらする。

だが、最後に明かされる犯人には意外性があり、告発の場面での火村が非常に格好良く印象的だ。

冒頭のホテル火災の部分は本質的には読者をミスリードするためだけのエピソードだが、火村の


「救った人間が屑だったから損をした、なんて考える人間が、命をかけて炎の中に飛び込めるか? 父を尊敬するその息子がそんなことを考えるか? アリス。お前は小説を書いていろ。間違っても消防士にはなるな」


というセリフが、そのエピソードを意味のあるものにしている。

珍しくせっかく筋の通った推理を披露したかに見えたアリスにはちょっと可哀想だが、この火村のセリフは最高に格好いい。


ところで「天上の推理小説」と評された「46番目の密室」だが、できることなら僕だって読んでみたい。

世界が世界を守るために、よってたかって一人の人間を抹殺するかのような…とは、一体どんな小説なのだろう。

とても興味がある。

いつか有栖川有栖さんに挑戦してもらえないものだろうか。