スカウティングとは野球の才能という1点において、人が人を見極める行為。「見る目がある」とは何なのか。何を信じて最後の決断を下すのか。幾多の一流選手を発掘した著者がスカウトの表と裏を語り尽くす。
著者の片岡氏は、2004年に退社するまで、若松勉、尾花高夫、池山隆寛、川崎憲次郎、古田敦也、高津臣吾、岩村明憲、藤井秀悟といったスワローズの全盛期をつくった選手たちを入団させた辣腕スカウトである。
タイトルの「節穴」というのは極めて逆説的な物言いで、片岡氏ほどのスカウトは鉦や太鼓で探してもそうそう見つかるものではない。
もちろん、片岡氏にしてもいくらも失敗はあっただろう。
たとえば、本書の中では、高橋由伸を「20年に一度の逸材」と絶賛し、獲得寸前までいったにもかかわらず、ジャイアンツに強奪されたことを悔やんでいる。
それでも片岡氏が一流のスカウトマンであることに変わりはないし、彼の手腕なくしてスワローズの躍進もなかったと、本書を読めば確信できる。
「球界の寝業師」と呼ばれ、ライオンズやホークスの黄金時代の礎をつくった根本陸夫。
ボイヤー、シピン、ミヤーン、ポンセ、パチョレック、ローズ、ブラッグズら優秀な外国人選手を次々と獲得したベイスターズの牛込惟浩。
立川光男、高橋慶彦、川口和久、大野豊、長嶋清幸、紀藤真琴ら無名選手を発掘して広島カープを支えた、「スカウトの神様」木庭教。
ひとつの時代をつくったチームには必ず、優秀な裏方がいる。
それは間違いなく真実である。