「完全なる首長竜の日」 乾緑郎 宝島社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

※あらすじ全部書いちゃっていますので未読の方はご注意を


少女漫画家の淳美は「SCインターフェース」を通じて自殺未遂により意識不明状態の弟・浩市と交流していた。

「SCインターフェース」は相手の深層心理に入り込み、記憶に依った世界を構築。
まるで現実世界に居るかのようなリアルさを提供する機器の名称。
これにより、意識不明状態の浩市とも意思疎通が出来るようになったのだ。

だが、ある日を境にこの世界に翳りが生じて来る。
理由を追求するうちに淳美が知る驚愕の事実。

それは、弟・浩市が既に死亡しており浩市として接しているのは淳美に憑依した自殺者の意識であること。
この世界を構成するその他の人物は浩市や数名を除き、“フィロソフィカル・ゾンビ”と呼ばれる淳美の記憶を元に作られた“魂のない人々”であること。
何より、意識不明状態に陥って世界を構築していたのは淳美自身であること。

「インターフェース」を用い淳美の意識に介入してきた医師・相原からそれらを知らされた淳美。
浩市を名乗っていた自殺者の意識により、外界との接触を遮断されこれらの事実を忘れていたらしい。
すべてを思い出す淳美の前で浩市を名乗る意識は拳銃自殺し、消えて行く……。

こうして現実世界へと帰還した淳美だったが、すべてを思い出した淳美にとって現実世界は厳しかった。
淳美が意識不明状態に陥ったのは自殺未遂が原因。
妻子のある当時の担当編集者に一方的に想いを募らせ、半ば強引に関係を持った淳美。
しかし、これまでの関係を壊したくないと考え身を引き仕事に専念することに。
ところが、直後に編集が交代。
それに伴い、それまで上手くいっていた仕事が躓き始める。
業界内ではこれまでの成功は編集のおかげと揶揄され、必死に巻き返しを図るもその最中に原因不明の体調不良に。
実は淳美は編集者との関係で妊娠しており、気付かぬうちに流産していた。
すべてをふっ切るべく転居を考えるが矢先に親を亡くしてしまう。
ショックを受けた淳美はマンションのベランダから身を躍らせたのだった。

現実を生きる淳美にいつかの浩市を名乗る者の言葉が甦る。
誰かの記憶に残ることこそが生きること……。

インターフェース世界。
そこで淳美は浩市が使い自殺した拳銃を用い自身も―――エンド。



【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)




宝島社文庫なんてたぶん買うことはないと思っていたのだがなあ。

ましてや、このミス大賞受賞作。

講談社のメフィスト賞と並んで駄作の宝庫のこの賞の受賞作を……。


「ベスト本格ミステリ2013」(本格ミステリ作家クラブ 選・編)に載っていた「機巧のイヴ 」が面白かったから…。
期待をしてしまいましたよ。


結論から言えばつまらなくはなかったんですけどね。

モチーフは「機巧のイヴ」と同じでした。もっと言えば、岡嶋二人の「クラインの壺」と同じ。

どちらが夢でどちらが現実か。
それがわからなくなる、そんな世界。
それが曖昧なままに迎えるラストも「クラインの壺」と同じ。


つまんなくはないんだけどさあ。
「クラインの壺」大好きだしね。
でも、二番煎じはなあ……。