KADOKAWA | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

KADOKAWA………それは、角川書店にあらず。


角川書店、アスキー・メディアワークス、中経出版、新人物往来社、富士見書房、メディアファクトリー、エンターブレインなど子会社をすべて吸収合併し、事業会社化したものである。


角川書店がKADOKAWAになろうが、どうしようが、


正直、書店としてはどうでもいいっちゃあ、どうでもいい。


角川文庫は「角川文庫」であって、「KADOKAWA文庫」になるわけではないし。


でも、看過できない問題もある。


たとえば、ISBNコードの変更だ。


メディアファクトリーから出版された、ある文庫本があるとしよう。

そうだな。「僕は友達が少ない」でいいや。


「僕は友達が少ない」はラノベの中でも人気のロングセラーだから当然、重版が何度もかかっているし、これからもかかる。

たとえば、来月重版がかかるとしましょうか。


そのとき、出される「僕は友達が少ない」はKADOKAWAから発行されるわけだ。


そうすると、初版の「僕は友達が少ない」と来月重版される「僕は友達が少ない」は別物とみなされる。

なぜなら、別の出版社から出されるのだから、ISBNコードが変更になるから。


ISBNコードは一冊の本に対して必ず一意になっているため、たとえ中身がまったく同じであろうとも、別の出版社から刊行された別の本に対して同じコードは割り当てられない。



すると、何がどうなるか。


おそらく、読者にとっては何も変わらない。



本屋が困るだけ。


「『僕は友達は少ない』はウチの店で何冊売れたかな」

(パソコンでデータを調べる)

「あれ? 一冊しか売れていない……そんな馬鹿な。ああそうか、『はがない』は二種類あるんだった。

 僕が見たのはKADOKAWAから出たほうか。

 どれどれ、メディアファクトリーから出たほうは、と。ああ、やっぱり500冊も売れているよ」


という、面倒くささが生じるのですよ。


またはお客様に在庫をたずねられたとき、


「ただいまお調べいたしますので、お待ちください。

 えっと……『はがない』は、と……あれ、在庫がないなあ。あったと思ったのになあ。

 ちょっと待てよ……あ、そうか。在庫がないのはメディアファクトリーから出たほうか。

 KADOKAWAから出たほうを見ると……ああ、やっぱり在庫が一冊あるぞ。

 お客様、お待たせいたしました。ただいまお持ちしますのでー!」


という面倒くささも。


まあ、KADOKAWAという巨大組織の組織変更に比べりゃあ、こんなことは考えるにも値しない、どうでもいいことなんですけどね。

(ちょっと、やさぐれ)