「ラガド 煉獄の教室」 両角長彦 光文社 ★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

中学校で起きた無差別殺傷事件。物語が二転三転していくなかで暴かれる戦慄の真相とは…。
11月4日午前8時30分。ある私立中学校に1人の男が侵入する。1人の女子生徒が、彼の行動を見て叫んだ。「みんな逃げて!」
果敢に男に立ち向かう彼女を悲劇が襲う。
そして事件後、警察で秘かに行われた、ある特別な「再現」。そこから、思いもよらない事実が明らかになっていく…。
スピーディーな展開に目が離せない。斬新な視覚効果を図った実験的小説が誕生。
第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。




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今までにない新しい趣向の作品が世に登場すると、必ずと言っていいほど、似た傾向の後追い作品が出てくる。
「こういうのは売れる」と踏んだ出版社が作家に書かせるのか、「オレもこういうの書きたいなあ」と思った作家が書いてみるのか、そのあたりはよくわからないけれど、とにかくそういう現象が起こる。


そういう模倣の中から優秀な作品が生まれてくることもないわけではないし、そもそも何の影響も受けていない完全オリジナルの作品などあるわけがないのだから、そのこと自体は否定しない。


便乗だって、いち読者としては面白ければ何だっていいし、いち書店員としてはまあ売れてくれりゃあ何だっていい(笑)


本作はたぶん湊かなえさんの「告白」のヒットに便乗した作品だと思われる。
作品の持つ雰囲気というか、匂いは「告白」そのものだ。


だが、教室の見取り図をばんばん入れて説明するなどかなり実験的な試みも行っているし、学校で起こった事件をワイドショーで取り上げようとするテレビマンが登場したあたりから物語の展開は、あさっての方向にすっ飛んでいってしまう。

似ているのは冒頭の雰囲気だけで、小説としての面白さで言えば天と地ほどの違いがあると思う。比べるのもおこがましいほどだ。


正直言って、面白いとか面白くないとか以前の問題で、わけがわからないというのが本音の感想。
欠点をあげつらえば、キリがない。つっこみどころ満載。
オチまで含めて、何をどう楽しめばいいのかまったくわからないかった。一見普通のミステリのように見えるところがかえってタチが悪いと思う。


これ日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞したときの選評を読みたかったなあ。

(僕の好きな)綾辻行人さんや近藤史恵さんがこの作品をどう評価したのか知りたかった。どんな読み方をしたら楽しめるのか教えてほしかった。


いやあ。本当にわからない。