「いつか陽のあたる場所で」 乃南アサ 新潮社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

小森谷芭子29歳、江口綾香41歳。
ふたりにはそれぞれ暗い過去があった。絶対に人に知られてはならない過去。
ふたりは下町の谷中で新しい人生を歩み始めた。息詰まる緊張の日々の中、仕事を覚え、人情に触れ、少しずつ喜びや笑いが出はじめた頃――。
綾香が魚屋さんに恋してしまった!心理描写・人物造形の達人が女の友情に斬り込んだ大注目の新シリーズ。
ズッコケ新米巡査のアイツも登場。




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乃南アサさんは「暗くて重苦しくて、読み終えた後にイヤーな気持ちになることができる作家さん」第一位にランキングする方である。


あ、もちろん当社比です。


ファンの方はごめんなさい。
乃南アサさんにも楽しくて前向きで温かな作品があることも知っています。


でも、僕はこの本書を読んでいる最中、ただの一度も物語を楽しむことができませんでした。


ビクビク、オドオド。自意識過剰とも思えるくらいに卑屈な人生を歩んでいる芭子と、憎めないキャラクターだけど

不器用でやることなすこと何だかうまくいかない綾香。


シリーズ一作目ということで大きな展開はまだないけれど……この先、この二人に本当に幸せが待っているのだろうかとつい首を傾げたくなる。


二人には気がついてほしい。
真面目なのも素敵だけれど、もっと気楽に生きてもいいんだってことに。
それから……二人とも、もっと人並みに幸せになっても構わないんだってことに。


続編ではそのあたり、心理面での変化が二人に起きて、もうちょっと楽しげな話になるといいなと思う。
綾香と芭子にもっと幸せな出来事が降りかかるといいなとも思う。