本日は昨日の第1講でも述べたように、貸金業法の2回の改正のうち、第1回目の平成15年に行われた改正を焦点に述べる。
貸金業法の平成15年改正では当時深刻な社会問題となっていた「ヤミ金融」の取り締まりを目的として改正された。
それゆえに別名「ヤミ金融対策法案」とも言われている。
ヤミ金融とは、その定義が明確になされているわけではないが、以下の二つに大別できると考えられる。
①貸金業を営むものは通常、都道府県や国に対し、貸金業法に定められた手続きを行うことが義務付けられているが、その手続きを行なっていない、あるいは一部が欠けているもの。
②①で述べられた手続きはなされているものの、同じく貸金業法に規定された利息や金利の制限を超えて出資するもの。
いずれにせよ、借り手の人権を無視した取り立てが行われることが多く、夜間に急に押し立て返済を迫るものや、日中であっても鳴り止まない電話で返済を訴えるもの、あるいは借り手に生命保険に加入させ、あおの借り手の死亡でおりた保険金により返済することを促すものなど、その手法は多岐に渡り、当時深刻な社会問題となっていた。
そこで平成15年に当時の貸金業法で不足する部分を補うべく、以下の5つを主軸として改正がなされた。
①貸金業登録の規制強化
貸金業登録の審査において、それまで行われてこなかった事業者本人の確認を義務付け、暴力団排除などの人的要件、財産的要件、さらにはその貸金業者の各営業店舗に主任者を設けることを義務化するなどして、貸金業の参入のハードルをより高く設定した。
②違反罰則の大幅な引き上げ
貸金業法に違反した業者(主に無登録業者や法で定められた範囲を逸脱した金利を定める高金利貸付業者)に対してそれまでの罰則とは大きく次元の異なるレベルの罰則を導入した。具体的には、
⑴無登録業者:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科 ⇨5年以下の懲役若しくは1千万円(法人の場合3千万円)以下の罰金又は併科
⑵高金利貸付業者:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科 ⇨5年以下の懲役若しくは1千万円(法人の場合1億円)以下の罰金又は併科
となり、より厳しい罰則が設けられることが決定した。
③違法な広告出稿、勧誘行為などに対する規制強化
これまでになかった無登録業者に対する罰則が新設された。詳細には、携帯電話を用いた広告行為が禁止され、さらに誇大広告(当時、広告段階では低い金利での貸付を行う旨が記載されていたにも関わらず、実際に貸付段階になると、違法な高金利で貸付を行う業者が跋扈していた)の禁止に対して罰則が導入された。罰則としては、100万円以下の罰金が与えられる。
④違法取り立て行為の規制の強化
最も現実的な部分として存在した、借り手に対する人権無視の取り立てに関して規制を強化した。また、正当な理由のない夜間の取り立てや、勤務先や親戚宅など借り手の自宅以外の電話や訪問、さらに第三者への代理弁済などの要求など、これらを具体例をあげ禁止し、罰則を2万円以下の罰金、または300万円以下の罰金、あるいはその両方と、これまでと比較して規制を強化した。
⑤高金利を定めた貸付契約の無効化
これまでには存在しなかった貸付契約の無効化処理に関して定められた。具体的には、登録業者、無登録業者に関わらず、年109.5%を超える金利での貸付の契約は無効化され、その利息に関しては一切を払う必要がないと定めた。
これらの改正案と同時に、警察などの取り締まり組織との連携をより強化することで、それまで問題となっていたヤミ金融業者は衰退をはじめた。しかしながら、このヤミ金融対策法では取り締まれない貸付業者、すなわち登録をされた上でこれらの法律の目をかいくぐった業者についての問題が社会問題となることとなる。
それにより第2回改正が行われたが、これに関しては第3講で記述する。
