本日投稿の第3講では、貸金業法の2回の改正のうち、平成18年に行われた2回目の改正に関して記述する。

昨日述べたように平成15年の改正ではヤミ金融業者の撲滅を目的として改正が行われたのに対し、平成18年の改正では法律の穴をついた、すなわち完全な違法行為とは言えないものを行う企業に対して、法改正を行うことで構造改革を行った。具体的には「グレーゾーン金利」と呼ばれるものに対して制約を加えることを目的とした。

 

ではグレーゾーン金利とは一体何か。

 

まず前提として利息に関する法律は「利息制限法」「出資法」という二つの法律が存在したことを述べておきたい。

この二つの法律に関して、かなりざっくらぱんに言うと、利息制限法ではその利息の上限を15〜20%と定めているのに対し、同時に出資法を用いることで、その上限を29.2%まで上昇させることができるのである。この15〜29.2%、あるいは20〜29.2%の間を「グレーゾーン金利」と呼び、高い利息を用いて契約することが可能であったのである。

 

またこの時に利息制限法に関しては刑事罰の対象ではないが、それに対して、出資法に違反すると刑事罰を受けることから利息制限法に平然と違反し、その意味が皆無となってしまう状態が存在した。

 

この状況を変えるべく、行われたのが平成18年に行われた貸金業法の改正である。

詳細には以下の2点に関して改正が行われた。

 

第一に、グレーゾーン金利の完全な撤廃である。

 

先述した通り、利息制限法では上限を20%としている利息を、出資法を用いると29.2%まで上昇させることができるが、その間の利息は元本に充当され,計算上元本が完済となった後も制限超過利息を受領すれば,法律上の原因がないものとなり,過払い金として消費者に返還しなければならないというのが原則である。すると、たとえ刑事罰を受けることがなくとも、利息制限法を超えた利息を請求することは少ないように感じるかもしれない。

 

しかし、ある条件が満たされると、それは「みなし弁済」という制度として扱われ、その返還の必要がなくなるのである。

ゆえに貸金業者はこのみなし弁済を巧みに利用し、高額な利息を借り手に払わせていた。

 

「みなし弁済」となる詳細な条件は以下の5つである。

 

①貸金業登録されている貸金業者であること。

②貸付の際に,貸金業規制法17条所定の要件を満たす書面を借り手に交付したこと。

③弁済を受領した際に,貸金業規制法18条所定の要件を満たす書面を借りてに直ぐに交付したこと。

④借り手が,利息の支払いと認識して約定利息を支払ったこと。

⑤借り手が,任意に約定利息を支払ったこと。

 

である。①に関してはその多くが当然のことながら満たしている(満たしていなければ、その時点でヤミ金融業者として認識される)。また、②については、貸借の契約を結ぶときに交付される膨大な書類の一つとして扱われ、実際に詳細な説明がなされることはなかったようである。③についても、それが契約時か、利息支払い時かの違いに過ぎず、大まかには②と同様の状況であったようであり、④は実際の利息の割合を知ることなく、「利息を上乗せしてこの金額です」と言われたことに関して、特に留意することなく支払うことが多かったようである。そして、⑤にある「任意」とは「強制でない」程度のことで、わざわざ貸金業者側が「グレーゾーン金利ですが、払ってください」などの説明をすることは当然ないため、何も知らない借り手が自然とその合法とは言えない利息を払う仕組みになっていた。

 

ゆえに、このグレーゾーン金利とそのみなし弁済の仕組みは貸金業者側に有利なものとなっており、裏を返せば消費者側にとって多大な負担を強いる制度になっていたのである。

 

そこで、この状況を打破するべく、金利の上限を絶対的に20%と定め、これ以降は刑事罰を定めた。

したがって現在ではグレーゾーン金利やみなし弁済の制度はぞんざいしないが、中には現在も存在すると嘘ぶいて利息を求める業者も存在するため、注意が必要である(余談とはなるが...)。

 

第二に、総量規制の導入である。

 

当時の日本社会には、多くの別会社からそれぞれ多額の借り入れをおこなう「多重債務者」が存在し、その破産や自殺が大きな社会問題となっており、2003年には経済・生活苦による自殺者は過去最多の8897人を記録し、その10年前の約10倍もの数値となっていた(出典:警察庁)。

 

そこでこの状況を生み出す構造を変化させるべく、導入されたのが「総量規制」である。

 

総量規制とは、一個人が借り入れできる「総額」を原則、年収の3分の1までに制限する仕組みであり、これにより多くの貸金業者から多大な借金をする多重債務者を減らすことができると同時に、「返せるあてもないのに、そんな借金をする借り手が悪い」とする社会通念に対し、構造にも問題があるということを認めたこととなる。

 

しかし、ここには一つ大きな問題点があり、詳しくは最終日の第5講で詳説するが、本当に必要な人がお金を借りられないのである。その厳しい貸付条件の結果、貸金業として登録がされていない業者、すなわちヤミ金融へ流れる借り手も少なくなく、ゆえにヤミ金融の跋扈を招いたとする声さえある。

 

ここまでが貸金業法の改正の歴史であるが、明日の第4講では、この度新しく政府が提出した貸金業法の改正案に関して解説する。