私が診察をした時には、かなり喘鳴(呼吸がヒューヒュー鳴る)が激しく、肩で呼吸をしており、声を出すのもやっとでした。 救急科を専攻していた私は、一瞬で、その様子が、かなり危ない状態になる事を想像できました。
体の酸素濃度は、80%台ですぐに酸素投与開始。ボスミン筋注して、吸入、点滴ステロイド、気管支拡張薬投与を同時並行で行いました。酸素濃度は97%と上昇しているものの、
ご本人が受け答えできず、あばれるほど苦しそうでしたので、ご家族に承諾をいただき、直ちに気管挿管しました。
気管挿管すると、よけい換気ができない状態になる事もあり悩みましたが、決意して行いました。気管挿管をしながら自分自身の呼吸で換気ができる方が、換気量が少なくてすみ、肺の圧障害が軽減されるのですが、自発呼吸を止めるために、筋弛緩剤を投与すると、圧障害が増大して、緊張性気胸などの合併症を起こす事があります。しかし、今回は、呼吸のタイミングも合わず、咳もかなりしており、圧障害のリスクが高く、筋弛緩薬を投与して強制換気にしました。入院治療が必要ですが、かなり管理も厳重にしなければならず、3次救急指定病院へ搬送する事にしました。
なんとか、心停止にならずに対応できたのは、機敏な判断とチームワークによるものだと感謝しております。
原因は、いろいろあるのですが、普段から喘息の治療薬を内服しており、風邪ぎみであったこともあり、感染を契機に喘息重積発作になったものと考えましたが、よくよく、ご家族にお話を聞いていると、熱があったので、普段内服しないアスピリンを内服したようでした。 アスピリン喘息の可能性は、最後まで、否定できませんでした。
喘息というのは、春や秋など季節の変わり目で気温や天気の変化が大きくなります。また、梅雨、台風などによっても気候が目まぐるしく変わります。そのため気道が刺激されたり、ウイルスが原因となる風邪にかかり発作が起こりやすいと考えられています。また、ぜんそく発作を起こすような花粉が飛んだり、湿度も高くなり抗原であるダニやカビが増えるため、ぜんそく発作の引き金になります。
ぜんそく発作の起こりやすい時間
ぜんそく発作は、夜から早朝にかけて起こりやすくなります。寝ている間は昼間より呼吸する量が少ないので気管支がせまくなります。さらに、朝の冷たい空気 を吸い込むと、気管支はいっそうせまくなり、冷たい空気が刺激となって発作が起こります。 室温を一定に保ったり、マスクで保温と加湿を心がけるなどして、発作の予防に役立ててください。
ぜんそくを悪化させる病気
アレルギー以外に、風邪などの感染症もぜんそくの悪化の原因になります。細菌やウイルスが感染すると気道の炎症が一層悪化するためです。この他に、食品(食品添加物)、大気汚染、タバコの煙、天気や気温の変化、運動(あばれる)、激しい感情の変化(笑う、泣く、怒り、恐怖など)等がきっかけで悪化する場合があります。
寒暖の差もますます厳しくなってきました。どうぞ、みなさまご自愛くださいますように。