山梨県内のリニア中央新幹線工事を巡る静岡県、山梨県、JR東海の3者合意について、静岡県が県有識者会議専門部会の意見を聴取しないまま合意していたことが2日までに、関係者への取材で分かった。専門部会は5月の会合で静岡、山梨県境付近での高速長尺先進ボーリング調査の実施を認めたが、その後のトンネル先進坑工事については可否の判断を示さなかった。専門部会関係者からは「政治的事情を優先させた判断」と3者合意の形成過程を疑問視する声が上がる。

( 静岡新聞7月3日朝刊 )

 

 

アラカンおじさんのコメント

県境まで先進坑や本坑を掘削すれば、大量の湧水が出ることは容易に想像できる。

その回復措置は今後調整するという・・・

回復措置を言う前に湧水を納得できる形で測定することは不可能であろう・・・

この三者協議は鈴木新知事の実績アピールが優先されたということであろう。

 

岐阜県瑞浪市の地下水低下問題では計測された最大のトンネル湧水は20ℓ/秒であり、トンネル掘削工事は問題事故の発生した地点には到達していないという。

これを参考にすれば県境から200mほどの地点でも静岡県側に影響が出ることを間接的に証明したことになる。

従って、三者合意は専門部会の協議を尊重しないどころではなく、瑞浪の地下水低下をも学習していないといえる。

 

高速長尺先進ボーリングは兎も角、対応策を協議合意することなく先進坑や本坑工事を容認することは大井川の水や環境保全を放棄することに他ならない。

三者合意とはその程度のものだ・・・

 

工事現場が山梨県内であることを理由に強引に掘削して問題が発生すれば静岡県域の工事は出来なくなり、工事中止やルート変更が現実味を帯びることを肝に銘じるべきである。

 

さて、日吉トンネルの湧水は20ℓ/秒で水位低下が40m。

一方、南アルプストンネルの湧水は2000/秒で地下水位低下は最大300mと言われている。

 

それは兎も角、静岡工区で高圧大量の湧水に遭遇した場合にはどんな対応が可能であろうか・・・?

一般的には過酷な水圧によるトンネルの破壊を防ぐため敢えて水が染み出す構造となっている。

このことは薬液注入で湧水を防ぐという説明に矛盾する。

 

過去のトンネル工事ではトンネルから水圧を下げるために新たな水抜き坑を掘削して水を抜くことで対応してきた。

要するに、安全にトンネルを掘削するためには前もって水を抜いておく必要がある。

 

この目的で開発されたのが高速長尺先進ボーリングである。

JR東海はこのことを封印して、最近ではボーリング調査という言葉に置き換えている。

高速長尺先進ボーリングによる調査水を抜きながら安全にトンネルを掘削することとは全くの別物であることを肝に銘じておく必要がある。

 

山梨側のトンネルから高速長尺先進ボーリングによる調査を実施しても、しなくても、破砕帯には大量・高圧の地下水があることが既に確認されており、JR東海の説明通りに工事を進めることは事実上不可能である。

別の言い方をすれば「薬液注入では高圧大量のトンネル湧水を止めることは不可能である」ということになる。

 

高速長尺先進ボーリングによる調査をしても、今更ルート変更や工事中止の選択ができないのであれば、工事を強引に推し進め、「人命優先の為にトンネル湧水を全量戻すことはできなかった。想定外であった」との言い訳が聞こえてくる。