先般のブログで何かと難しいことを持ち出して御免なさい。

問題を早期に解決するための専門家(有識者)会議の議論がマスコミや島田市長などが理解できずに本論とはずれたところで発信するため、混迷に陥ってしまったとするのが当ブログの見解です。

解りやすく言えば専門家会議での議論は難しすぎて、YouTubeで視聴していてもその内容を理解するのは難しいということです。

 

理解できないから誤解が始まると・・・

最も、誤解を承知で商売の種にしている一部のメデイアにも困ったことですが・・・

 

先般、電気の法則(公式)を当てはめて水の流れを説明しましたが、改めて記事にしてみます。

 

オームの法則では

電流 I(A)=電位差 E(V)/ 抵抗 R(Ω)で表せる

 

抵抗 は比抵抗 ρ(Ω・cm)と置き換えます。

オームの法則は I = E A/ ρ lとなります。

(但しAは断面積 lは長さ)

 

ρは比抵抗(抵抗率)と言い、電流の流れ難さを表し、単位体積当たりの抵抗値(ρ=A/l・R)となります。

 

電流の流れ易さを表すのがρの逆数で導電率σです。

σ=1/ρ (S/m) 但し Sは 人名 Siemens の頭文字

 

オームの法則で表せば

I=(∝)E/ρ I =(∝) σEとも言える。

 

 

一方の水の流れである水流については

地層や多孔質岩石の単位断面積当たり単位時間に(地下水)が通過する量は、断面に直角方向の水頭勾配に比例するが、この比例係数を「透過係数」または「透過率」という。

電気で言うところの導電率が透過係数に該当する。

 

・透水係数 1 m/s
流量 Q=1 m3/s、断面積 A=1 m2、長さ L=1m、水頭差 Δh=1 mのときの透水係数

 

水の流れを計算するのに ダルシーの法則 がある。

Q =k A h / l = k A i         i=h/l(勾配係数)

圧力差hを一定とすれば

Q = k A / l となる

(流量は透水係数k及び面積Aに比例し長さlに反比例する)

式を変形すれば

k=Ql/A (単位は流量/長さ)となる

これはJR東海が示す管理値50ℓ/10mに似ている。

言い換えればJR東海が示す管理値は流量ではなく、水の流れ易さを示す尺度である透水係数ともいえる。

 

首長に理解されない専門家会議

さて、染谷島田市長は5日の記者会見で

27日の利水関係協議会で田代ダム取水抑制案協議について「あの場で決まらなかったことで結局長引いてしまう。水を守るためもっと建設的議論ができるようになりたい」と述べた。

また前回の記者会見では「高速長尺先進ボーリングをすれば透水係数がわかる」と発言している。

 

また、杉本牧之原市長も6日の記者会見でJRが示した田代ダム取水抑制案などについて理解を示し、「工事中の水が担保されるのであれば安心材料がプラスになる」とし、慎重姿勢を崩さない県には「科学的、工学的な見地での話を」と求めた。

 

島田市や牧之原市などの首長には「国や県の専門家会議が科学的・工学的な見地で協議されていない」と映っているようだ。

 

武田邦彦氏はリニア問題が混迷した原因は「本来、科学的・工学的に検討すべきだったのに政治問題にしてしまったJR東海の姿勢」を指摘している。

 

正しく、島田市長や牧之原市長の記者会見での発言は科学的・工学的発言ではなく政治的発言そのものである。

 

何故そうなってしまったのであろうか・・・?

マスコミや首長などの認識(勉強)不足によるところもあるが専門家会議で協議されている内容が専門的過ぎて一般人には理解できないことだと思う。

従って、専門家の会議が科学的・工学的に議論されていないと真逆の印象(認識)を与えている。

理解できる人が傍にいる県と、傍にいない市町との認識に違いが出てくるのは当然のことである。

 

従って多くの県民の認識を向上させるためには会議の内容を県民に分かりやすく説明する通訳的立場の人が不可欠となる。

 

高速長尺先進ボーリングを止めるとしたJR東海の示す管理値である50ℓ/10m・秒は非常に分かりにくい。

この数値をそのまま読めば高速長尺先進ボーリングによる800mの区間から出る湧水量は4㎥/秒となり、東京都の示す1人当たり1日の平均水道水量(214ℓ)の160万人分に相当する。

これをもって、高速長尺先進ボーリングによる湧水は少ないとJR東海がいくら説明したところで多くの県民は納得しない。

もし、この管理値が50ℓ/秒であるならば素人でも非常に分かりやすくなる。

 

県民が知りたいのは水の流れ易さである透水係数ではなく、どれだけの湧水量が流れ出るのかということである。

 

このような考え方は専門家会議で協議されているその他の事項にも当てはまることは当然である。

 

ところで、JR東海は県の専門家会議の要望に沿って山梨県から県境に向かって削孔している高速長尺先進ボーリングの進捗状況をホームページに公開している。

それによると3月27日~4月1日の削孔量は14mで県境まで679mの地点に到達した。

湧水量が最も多かったのは29日の9ℓ/分(0.15ℓ/秒)であった。

JRの地質想定は砂岩頁岩互層だったが、結果は全て粘板岩だった。

一般的に砂岩・頁岩の透水係数は小、粘板岩の透水係数は中となっている。