高い城の男
フィリップ・K・ディック
浅倉久志訳
早川書房
1963年のヒューゴー賞受賞のディックの最高傑作、とされている作品。
第二次世界大戦に日本とドイツが勝利していたら、という歴史改変物である。
第二次世界大戦で勝敗が逆に描かれているものは、非常に多いらしい。
登場人物は易で占い行動を決めるのだが、この易経の描写は本格的である。
そして、外人が易で占い行動を決めるというのは、日本人から観て興味深い。
ディックが神秘主義に目覚めたきっかけの一つはユングの著作であり、易経の存在を知ったのもユングを通じての事らしい。
また、アメリカでは神秘体験は社会現象にまでなっている。
アベンゼンが著した「イナゴ身重く横たわる」と易がこの物語の大きな核となる。
日本はともかくドイツが勝利していたら、第三次世界大戦は免れなかったではあろうが、しかし、勝利が逆転したところで、特に世界に大きな変化があるわけでもない。
ユダヤ人の迫害については止む事はないのだろうが、ヒトラーは既に死んでいる。
しかし、アメリカが勝利した事が本当に良かったのかどうかは、相対的な視点で考えてみる必要がある。
そこで歴史改変小説が役割を果たすのだ。
現在、他の歴史改変小説にも興味を覚えているところである。
(2011~2014年頃、執筆)