『住めば都』は永久に来ず。 -2ページ目

『住めば都』は永久に来ず。

浅田 ゆみ、名城 蘭、結城 薫による、リレー小説『住めば都』は永久に来ず。を連載中…?

父の遺産のアパートの管理人になってしまった来島草太郎(華も恥らう高校2年生!)と変わった人ばかりのアパートの住民約6名とのハチャメチャどたばた系(仮)な管理人生活。

29th[GTM→グレートティーチャー帝]

一方そのころの一年生、如月レイはといえば……端的に言うと寝ていた。
HR[ホームルーム]も知ったことあるかと言わんがばかりの勢いである。

教室の一番角、いわゆる一番日光が当たる位置に席を座し、腕を組んで尚且つ顔を伏せて安らかな寝息を立てている。
その陽光に彼曰く地毛の銀髪が日にさらされ、いわゆる天使の輪と呼ばれる髪の輝きが見られる。
たまに身じろぐ程度で、先生の声も彼には届いていない。

だがしかし、必然とそういう時は先生か生徒に起こされるものである。
このときもそれは例外ではなかった。果敢にもこの少年に挑もうとする女性が一人いた。
有倉智子[さくらちるこ]――レイのクラスの担任である女性だ。

「レイ君、起きてください~!」

だが一方のレイはといえば、相変わらず安らかな寝息をたてていた。
……じつはこれは数々の生徒がすでに試した後のことだったのだ。
それには、例外なくレイがこのクラスで唯一覚えているであろう睦月も試みてみたことである。

このクラスの担任智子は新任の教師であり、数学教師でもある。
新任の自分が一クラス任せられると知って早速張り切ってはいたが、この無害な問題児にすでにやる気が削がれそうになっている。
ちなみに、ついでのごとく述べるならばすでに涙目だ。
彼女は元々泣きやすい性質ではあったが、これは思いのほかに手が折れそうで困りきっている。
……もっともそんな智子を見ていた睦月をはじめ、他の生徒のほうが彼女に困っていたのは言うまでもないことだろう。

そんな時だった、救世主が来たのは。

パシーン!と勢いよく扉が開いたかと思ったらそこから見た目より小柄だが、大きく見える女性がいた。
なぜ、こんなところにいるのかといいたくなるような格好の人でもあった。
とても短いスカート。にも関わらず今からバイクにでも乗るのかと聞きたくなるような体にぴったりとしたライダースーツを身に纏い、髪は邪魔なのか後ろで適当に束ねられていた。
もちろん皆「……誰?」と思ったのは言うまでもないだろう。しかし、その女性の登場に違う意味で涙ぐむ智子がいた。

「帝先輩!」
「って、あれ先生なんですか!?」

もちろんあんな格好をして誰も彼女を先生とは思わないだろう。
睦月を筆頭にノリのいい生徒は一斉に突っ込んだ。

「なんや、やっぱり智子あんたのクラスかいな……。HR終わってないのあんたんとこ位やで、私なんか今から帰るところや」
「え、ええぇそんなぁ~。……っていうよりも、帝先生もう帰るんですか?」

現在、9時半過ぎ。
今日の予定別として、HRだけだとしても早すぎる気がするのは智子だけではないだろう。

「しゃーないやろそないな事言われたかて校長に珍しく呼び出されたんよ、校長今度は何か探して欲しいもんあるとかいいおってからに……探すこっちの身にもなれっちゅう話や」

今のこと言葉を早口ではないが誰も口を挟ませない勢いで話す姿には生徒の3割は圧巻させられた。
もっとも、圧巻させられた理由の大半は彼女の方言交じりの言葉遣いがわからなかったからというのも含まれるだろう。

「そうですか~……帝先輩、じゃあがんばってくださいね。私なんか校長と会ったことすらありませんけどね……」
「あはっは、この学校で校長が見れたらレアやで」

……もはや生徒たちは驚くことにすら疲れたというようにうなだれていた。

「んじゃ、私は行くわ……って、なんやあれ。一人完璧に寝てるやん」
「あ……はい、そうなんです。私が起こしてもぜんぜん起きてくれなくて……そうですよね、私なんかが起したからって起きたくなんかないですよね。分かってるんです……私なんかに教師やる資格なんか……!」
「あほ、何いっとんねん。ええか、見ときいやぁあいつはこうやって起したり」

ネガティブループに入りそうだった智子の頭を智子の出席簿で叩き、やさしい笑みをしてレイの方に歩いていった。
その背中を智子は感動したように見ていたが、正面から見ている生徒の顔は皆青ざめていた。
それもそのはずだろう。なんと言ったって彼女の顔はにたりとした黒い攻撃性にあふれた笑みを浮かべていたのだから。

「せ、せんせい……あの、何するんですか?」

さすがにびくびくと声を出した睦月に帝は振りかぶりながらこう言った。

「こうやるんやああぁぁぁああああ!!……起きんかいこのボケがああああああぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

ハリセンでも出ないようないい音が教室中に響いた。
すると……やおらレイを顔を上げた。

「あ……もう少しで……ホームズ、読み終わった……のに……」

寝ぼけ眼でそんなことを言った。
……結論。帝先生の正解。
レイは多少のことでは動じなく、寝起きが悪いということが判明した。

睦月はこれを心に刻み、明日からは学校に来る前に竜宮荘に寄ることを決意した。
そして、帝先生はすっきりとした顔で「ほななー」と言って智子の出席簿を片手に退出していった。
その静寂した教室に残った声は智子の呟きただひとつだった。

「……かっこいぃ……」

何か違う方向へと勘違いしたようである。


「次こそは僕が活躍するはずです……!そう次こそは!
 え、誰ですか?そこの『主役級のはずなのに最近影が薄い』とか言った人は!
 フフフ……甘いですね!こういうのをヒーローは遅れてやって来るというのです!」
「白銀さん、それ意味違うからね……!」



結城 薫
28th[KNIGHT OF MIDNIGHT]

「…草太郎くん。」
「ん?…何?珠実ちゃん。」

一通り午前の授業を終えて昼食の時間。

僕のところに先程自己紹介してくれた珠実ちゃんがお弁当を持ってやって来た。


「草太郎くんとお弁当が食べたくて…いけませんか?」
「え!?駄目じゃないよ!僕も珠実ちゃんと一緒にお弁当食べたかったし…。」
「おいおい。それって俺と弁当喰いたくないってことかな?来島くん~。」


後ろから京介くんにチョップを入れられ僕は頭を抱える。

そう。

今京介くんに学級委員の仕事について詳しく教えて貰っているのだ。

お弁当を食べながらね。


「別に京介くんとお弁当食べるのが嫌だって訳じゃないよ…!」
「ほー。なんだか怪しいですねぇ。俺独り身かぁ寂しいぃ―。確かに俺馬鹿だけどこういう精神は持ってるんだよ?」


…なんで僕嫉妬した彼女に言い訳する彼氏みたいになってるんだろう…。

哀しい。
哀しいよ。

すると京介くんは珠実ちゃんの方を向いて珠実ちゃんに話し掛けた。


「まぁ珠実さんは前学級委員だから丁度良いかも。(まさか珠実さん君草太郎くんにホの字……?いやぁまさか違うよね?)」
「えぇ。だから私は来たんですわ。(ホの字とか流行らないんじゃボケ。年齢疑われるぞ。)」
「じゃあ二人共僕に教えてくれるの?」


非常ににこやかな二人。

僕はすごく嬉しくなった。


「あぁ、だから『俺にも』聞いてくれて構わないよ?」
「『私の方が』詳しいので、好きなだけ聞いて下さいね?」
「うん!!ありがとう!!」


…何か雰囲気がおかしかった?
















「フフ…!僕の出番無し…!!良いでしょう!!次回でしゃしゃり出てやりますから!!…え?次回は違う人が書くから可能性低い?…知るものですか!!」

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浅田ゆみ
27th[鈍感は時に武器になりうる]

少年は顔を怒りに歪めて立っていた。

「…やぁ、裕太。早かったねー。」

しかし波さんはそんな事お構いなしに気楽な調子で少年に挨拶をした。

「何がやぁ、だ!
ホームルームくらい真面目に受けられるだろ!」

「えー、だって朝っぱらからシニセンの辛気くさい顔なんて見れないよ~。テンション下がるしー。」

裕太と呼ばれた少年はわざわざ僕の席までやって来て波さんに注意しているが、如何せん波さん相手ではコントにしか見えない。

「って、ちょっと待って下さい。
波さん、F組なんですか。」

「うん、ボク2-Fだったみたいー。」

「みたいってなんですか。てかさっきC組の人の紹介してましたよね!?」

その時、少年が不思議そうな顔をしながら波さんに言った。

「オイ、波。こいつ誰だ?」

「うん?転校生の来島草太郎くんだよー。同じ寮なんだー。愛称はハニー君、よろしくね。」

「ハニーの部分余計です!」

波さんがそう手短に僕を紹介すると裕太さんは納得して、

「あー、例の特待生か。
俺、望月裕太ってんだ。敬語とか堅苦しいから裕太って呼んでくれよ。
俺もお前のこと草太郎って呼ぶからさ。」

っと言って、笑った。

波さんを怒鳴ってた時はちょっと怖そうな人かと思ったけど笑うとなんていうかお人好しオーラが滲み出ていて、凄くいい人なんだなぁっという印象を受けた。

「こちらこそ、よろしく。
裕太くん。」

だから僕もすんなりと彼ー裕太くんを受け入れることが出来た。

「うんうん、感動的だねぇー。男の友情!ってやつ。さぁ良いもん見せてもらったし、裕太もそろそろ帰ったらー。」

「…ちょっと待てやゴラァ!」

「ぐえっ。」

場の雰囲気に乗じて裕太くんを追い出そうとした波さんは裕太に首根っこひっつかまれておかしな音を出した。

「何、傍観者気取ってやがる。お前も帰るんだよ。」

「やだやだやだやだー。机がーボクはこの机と離れてはいけない運命なのー!」

「どんな運命だ!
机も悲しくて受け入れられねーよそんな運命。」

始めと同じように押し問答を始めた二人の動きを止めたのは僕ではなく、意外な人物だった。

「波華ちゃん。」

静かなでもハッキリと聞こえた声に二人の動きはピタリと止まり、カラクリ人形のようなぎこちなさで入り口の方へと目を向けた。

「「風(ちゃん/さん)。」」

異口同音で紡ぎ出された台詞に僕が振り返るとそこには微笑みを浮かべて廊下に佇む風さんの姿があった。

「ふっ風ちゃん!どうして、ここに!?」

「あら波華ちゃん心外ね。私の教室はここよ。ホームルームが終わったから約束通り帰って来たの。」

驚く波さんにそう風さんが返した。時、一陣の風のようなものが僕と波さんの間に起こり、次の瞬間には裕太くんは風さんの前にいた。

(早っ!!)

「ふふふふ風さん、おっ、おはようございます!」

「ふふ、おはようございます。裕太さん。さっき、いきなり教室を出て行ったからビックリしましたわ。私が波ちゃんじゃないって気付いていらっしゃったのね。」

二人の会話に僕は唖然とするしかなかった。正確には会話ではなく裕太の変化にだが、


風さんが来た途端、裕太くんは顔を真っ赤にさせあからさまにギクシャクしだした。


これは流石に鈍いと言われる僕にも裕太くんが風さんのことを好いてるんだなぁっと理解出来た。

「ひひひ、面白いでしょ。裕太の態度。あれで隠してるつもりなんだよー。」

小声で話しかけてきた波さんは如何にも野次馬といった表情を浮かべていた。

「さぁって、面白いもの見れたし、そろそろ帰ろかな~。んじゃねー、風ちゃん、ハニー君。ほら、裕太行くよ。」

風さんが来た事で諦めたのかそれとも本当に満足したかは分からないが波さんは裕太くんの背中を叩くと教室から出て行った。

「あっ、おい波!
…あっあの、風さん。そっそれではまた。」

「ええ、波華ちゃんのことよろしくお願いしますね。」

未だに顔を赤らめた裕太くんが波さんを追うように去って行くと風さんが僕の席に近づいてきた。

「ごめんなさいね。波華ちゃん、何故か重継先生のホームルーム受けたがらなくて、裕太さんにも毎回迷惑をかけてしまうの。」

ふふっといつもの苦笑を浮かべる風さんに僕は何となく気になって聞いてみた。

「風さんは裕太くんの事どう思ってます?」

「えっ?…うーん、とってもいい方ですよ。
優しいですし、頼りになりっぱなしですし、それに…」


おお、期待あるんじゃないか、裕太くんっと思った僕の思いは続きの言葉に愕然となった。


「とっても仲がいいでしょ?

波華ちゃんと、」




はぃぃぃい!?

その時、僕は波さんの言葉を思い出した。

『鈍感キャラなんて一人で足りるつの』

あれ風さんのことだったんだ。


next…

名城