29th[その男、謎]
「校長ー。来たけど用ってなんやー?
うち、早よ帰ってDVD観ながら一杯やりたいんやけど。」
バンっとドアを開け放った帝は敬意の欠片すらも見えない気だるげーな態度で椅子に座る男性に声をかけた。
「相変わらずだねぇ。帝は。」
そしてそれに怒ることなく、くすくす笑っている
「さぁこれから旅にでよう!」
と言わんばかりのふざけた恰好をした半月眼鏡の男性は
悲しいかなこれでも私立龍ノ宮学園の校長だったりするのだった…
まぁ、実際は世界中を冒険しているため殆ど学校にいないし、校長室すら一般の生徒には見つかっていない。
あるいみツチノコと張り合えるくらい謎な人間なのだが、
因みに本名は不明あくまで校長が彼の名前である。
「変わり映えのせーへん挨拶と無駄に長い地の文はえぇから早よ用件言えや。」
「帝ー、地の文なんて言っちゃダメだ…
「えぇから早よせや!ボケ!」
はいはい。」
のらりくらりと話を逸らす校長に痺れを切らした帝が怒鳴ると校長は仕方なさそうに用件を切り出した。
「ほら、この時期って言ったらさぁ、
色々生徒もそわそわしだして落ち着きがなくなると思うんだよね。
だからさ、そんな生徒を保護者と協力してしっかりと新学年としての自覚を持たせる必要があると思うんだ。」
自分で言いながら自分で納得してうんうんっと首を縦に振りながら校長は続けた。
「だからさぁ…
家庭訪問やってくんない?
勿論、帝一人で。」
校長室には一瞬の静寂の
のち、
「はぁ!?」
帝の驚き呆れた声が響いた。
「あれ?なんか問題あった?」
「ありまくりやボケェ!
なんで色々ややこしい事言うた結果、
家庭訪問に辿り着くねん!
後、何が勿論や!最後になしてうちだけやねん!
1年だけでなんぼ居るか分かっとんのんかワレェ!
理由を言え!10字以上15字以内でスパッと答えい!」
ボケボケな校長にマシンガントークならぬマシンガンツッコミを炸裂させる。
だが、
「その方が面白そうだから。かな?
あっ、漢字にしたら12字だからセーフだね。」
それすらもこの校長はあっさりと流してしまうのだった。
「あぁ、でも流石に大変だから
帝が行きたいと思った所だけ何軒か回るだけでいいから。
面白いことがあったら話してね。」
「…もぅ、えーは、行けばえぇんやろ。行けば!」
校長のペースに半ば脱力しながら投げやりに帝が言うと、校長は嬉しそうに微笑んで
「わぁ、ありがとう。帝ー、それじゃあお願いね。ちょっと出掛けて来るから。」
そう言うと大型の使い古したリュックを背負い、ツルハシ片手に校長室を出ようとする。
「…ってちょい待ちぃ!
どこ行くねん!」
「イタリアの古代遺産が呼んでるんだ。
大丈夫、体育祭までには帰ってくるから。」
一体、何が大丈夫なのだろうか。
まるで、スーパーに買い物に行くようなノリで校長は言う。
(前は
「卒業式には間に合うから。」
とか言うて結局入学式なっても帰ってこーへんかったよな…。)
これはマズいと校長よりは幾らか常識のある帝は止めようとするが
「あっ、帝。今度のお土産はテキーラでいい?
美味しいおつまみも付けちゃうよ?」
「おっしゃあ!!
後のことはうちとその他のまともな先生に任せとき!
あんたのおらん分しっかり働いてもらうさかい!」
悲しいかな帝も常識は一般人基準をはるかに下回っているのだった。
かくして、校長は笑顔で親指を立てている帝に見送られ意気揚々と校長室を後にしたのだった。
「ふっふっふ…、誰ですか。やっぱり今回も出番が無かったとか言っている方は。」
「残念ですが僕の出番はやって来るのです!!次こそ、次こそは鮮やかに登場して見せますとも!」
「…ネーゼ知ってた?
一々こうやってひょこっと最後に出てきて愚痴ってる方が余計虚しいんだよ?」
next…
名城 蘭