泉比良坂でイザナミが日に1000人殺してやると呪ったのに対し、
イザナギがそれなら日に1500人産まれるようにすると言祝いで、
ようするに、一日一日どの日も誰かの命日であり、誕生日であるということになるわけです。
私の昨日のTLは18世中村勘三郎の命日に彼を偲ぶ写真や言葉でいっぱいでした。
もう5年経ちました。
私は勘三郎の享年を越えてしまいました。
今、勘三郎のシネマ歌舞伎「め組の喧嘩」が公開されています。
2012年の5月の隅田川沿い桜橋の近く、舞台の後ろを開くとスカイツリーが客席から見える場所に建てた平成中村座。
難聴に苦しんで、そこから復帰して始めた半年のロングラン、最後の月の演目です。
「め組の喧嘩」は江戸の市中で対立する鳶と力士の喧嘩の話ですが、
彼らはしょっちゅうこういうことをやってたようで、
旗本奴と町奴の喧嘩から長兵衛がだまし討ちにされる「番隨長兵衛」のような後味の悪さはありません。
鳶頭の辰の女房も喧嘩に行くのを止めるどころか、行かせたがってるし。
そして喧嘩の期をみて、炊き出しの喜三郎という人が、ちゃんと止めてくれるのです。
一度この成り行きを知れば、安心して江戸っ子ってこういうものかと楽しめます。
映画なので、役者のアップがたくさん入っています。
舞台で観たときより細かにわかる勘三郎の表情。
いい顔です。
最期、喧嘩が喜三郎に預けられ、中村座の舞台の後方が開くと、
そこには三社祭で担がれるお神輿が浅草や中村屋縁の人に担がれて賑やかに揺れているのでした。
いい初夏だったなー。
文扇堂の荒井さんが勘三郎ににこにこ駆け寄って。
エンドロールでは千穐楽のものでしょう、七之助が孫の七緒ちゃんを抱いてきて勘三郎に渡して。
(七之助はこの月演舞場で「椿説弓張月」に出てて、楽が一日早く終わったので、中村座の千穐楽に鳶で参加してた)
きょとんとしているナオちゃん。
ナオちゃんのその後の活躍すごいですよね。
いまや立派に勘太郎。
それから、さよなら公演の助六。
2010年の4月ですから、もう7年も前になるんですね。
久しぶりに観たけど、やっぱり綺麗で荒唐無稽でおもしろい芝居だな。
前の歌舞伎座には三階の袖の舞台寄りのところにも出入り口かあったんだっけ。
勘三郎は通人で出ています。
通人は一言二言おもしろいことを言って、助六と甘酒売りの股をくぐって去っていく役ですが、
勘三郎の通人は、まず助六の團十郎が大病から回復したことを祝い、
それからタカトシ(海老蔵)が落ち着いて(婚約したころ)おめでとうございますと述べ
たっぷり時間をかけて團十郎の股をくぐる。
次は甘酒売りの菊五郎にしのぶちゃんおめでとう!世界に羽ばたいちゃったねとお祝いを述べ
(ベルリン銀熊賞を取ったことだと思う)、一首詠んでまた股をくぐる。
とても長い通人の場面です(笑)
そして花道へ入ってからさよならをする第四期の歌舞伎座へお礼とお別れを言い、
新しい歌舞伎座でもいい夢をたくさん見させてもらいましょうねと言って去っていくのだった。
あ~あ、天井席で夢見る人になっちゃって(涙)
さて誰かの命日は誰かの誕生日ですが、
12月5日が誕生日の役者さんがいます。
「め組の喧嘩」では遊郭の女と鳶、「助六」では並び傾城のひとりを勤めています。
坂東新悟、27歳になりました。
彼は中村座やコクーンに出る機会もあったし、きっと勘三郎から種を撒かれたひとりでしょう。
女性の個性もいろいろですから細身で背が高いことを強みに、花をたくさんつけてほしいと思います。
7年って長いようで短いような。
並び傾城五人のうち、松也・新悟・巳之助を息子は観たことがあります。
が。
居間を通りかかったので「この人たちわかる?」と聞いても全員花魁姿。
「これはナミとサディちゃんの新悟」「あ、ああ」
「これは氏真とメイ(羊)の松也」「そういえば」
「これはゾロとボンちゃんとスクアードの巳之助」「!(@_@)」
こんな感じ?(笑)
私もこの二十歳そこそこの花魁姿の人たちが、その後こういうことになるとは、
あのころまったく想像できなかったですよ。
狼と羊の絵本や、海賊の漫画が歌舞伎になるとも思わなかったし。
色々なことが起こってこの先どうなるんだろう?と案じられることはあるけれど、
自分一人が案じることのできる範囲を超えて、現実はダイナミックに動くのね。
ふりかえれば懐かしく寂しいことがあるけれど、
そういう存在を持てることも幸せなんだと思う。
この季節は喪中の葉書もぽつぽつやってきて、
やっぱりそれは様々な感慨をもよおすのだけれど、
でもきっと新年には「子ども産まれました」や「孫産まれました」な年賀状が来るだろう。
今はイザナミの時、年が明ければイザナギの時。
つながってるから、大丈夫。