JR四国2000系「TSE」試作車 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。


世界初の振り子気動車、JR四国の2000系。従来気動車に振り子を搭載するのは技術的に難しかったそうで中々実用化されなかったとのこと。その世界初の振り子気動車として登場したのがこの量産先行車の3両編成です。この技術が実用化されたことにより他社でも導入が進み、JR北海道キハ281系智頭急行HOT7000系JR西日本キハ187系へと発展していきました。



四国島内の高速道路網整備が行われる一方で、国鉄から引き継いだ四国の路線はほとんどが単線非電化で線形が絶望的に悪いことから根本的な線形の改良を諦め、車両側の改良による高速運転を実現するために登場しました。そうそう、JRグループでは初の4桁の系列名となっており、以降登場する四国の系列名は全て4桁表記となっています。


Trans Shikoku Experimental、略してTSEの愛称が付けられています。こちらは宇和島方の先頭車2001号車で、量産車と比べるとヘッドマークがなく試作車らしい前面となっています。そういえばこの列車は全車普通車のモノクラス編成で、この前面で普通車なのも2001号車だけですね。


こちらは松山方の先頭車2101号車。2001号車と違って量産車とは顔つきが全く異なります。かつては貫通扉がプラグドア方式で存在していましたが、現在は埋められています。3両固定で松山-宇和島間の「宇和海」1,6,17,22号に固定運用されています。検査の都合で量産車が紛れ込むこともあり、私が初乗車した時もこの車両が差し替えられており、二度目の乗車でフル編成に出会えた次第。キハ185系の普通列車が息絶え絶えに登っていた立間→下宇和の絶景ポイントを有する鬼畜な急勾配を、何食わぬ様子の猛スピードで駆け上がっていったあの力強さはとても印象的でした。


それでは参りましょう、デッキドアです。鉄道車両では珍しいプラグドアが採用されています。近年量産車のドアが窓の小さいものに換えられている中、TSE編成では原型のままで残されています。化粧板は木目調で、右側にはイエローラインが入れられています。車内でのアナウンスでは「閉まり始めたドアはそのまま最後まで閉まります」という聞きなれない文言が流れます。モノを挟んだり駆け込み乗車をするとシャレ抜きで危ないですよ、ということですね。


くずもの入れです。字体は国鉄時代のそれですね。さすがはJR黎明期の特急列車。


先頭車には灰皿の撤去跡が残ります。かつては喫煙がOKだったのでしょうか・・。


トイレです。登場は洋式トイレが普及し始めるかどうかと言った時期、中は和式となっています。


洗面台です。自動蛇口にオシャレに縁取りされた一枚鏡、バブリーな時代を感じさせる仕上がりを見せています。


荷物置き場です。かつては車内販売準備スペースとして使われていたようですが、現行の「宇和海」では車内販売は実施されていないので、握り棒を取っ付けて荷物置き場に早変わりしたと言った具合ですね。


携帯電話の通話スペースです。90年代までは公衆電話が設置されていましたが、2000年代になって撤去されています。


車内です。ヘッドレストカバーが途中で変わっていますが、一部指定席となっている関係でございます。看板特急ですら半室グリーン車で済んでしまう四国の特急列車、編成が短かったり末端の連絡特急ともなると多少の指定席を設けるだけで解決してしまうんですよねぇ…。自由席主体の急行列車をルーツとしている側面もありますが…。


デッキとの仕切りです。仕切り扉は自動化されています。登場時の中間車には前面展望の様子を映すためのモニターが設置されていましたが、現在は普通の壁となっています。


デッキとの仕切りその2。2101号車のもので、微妙に化粧板の色が異なっています。仕切り扉上にはLED表示機が備わります。


最前面です。前面展望を重視するために両側ともに仕切り窓があけられています。相変わらずデッキを挟んでいるのがイマイチですが…。


天井です。飾りパネルが貼り付けされていますが、微妙に波打ったデザインとなっています。


荷棚下にはバスで見かける回転式の冷房吹き出し口があります。キハ185系から引き続き設置されたものですが、量産車では姿を消したアイテムですね。


中にはパネルごと交換されたものもあります。どこから持ってきたのでしょう…。


そしてグリルが交換されたバージョン。自由席主体の運用なので、好みのポジションを探してみてはいかがでしょうか。


座席です。量産車と決定的に違うのはバックシェルが無いこと。どちらかと言えば国鉄時代に見られたリクライニングシートのそれに近いと思います。登場時からモケットは貼り換えられており、かつては1両ごとに色が異なるパターンを採用していました。


座席下にはバーレストが備わります。2人掛けにして1本モノというのもどうかと思いますが…。


引き上げるとこの通り。ですがイケないのは固定機構がないため足を置くとそのまま元の状態に戻ります。どう使えばいいんだこれ…。


指定席はこの通り、ヘッドレストカバーを換えて対応しています。座り心地は柔らかめ、多少クッションがへたっていても気にならないくらいの作り込みの良さを感じます。最近は硬めのクッションの方が疲れづらいという風潮から薄くて硬いリクライニングシートが増えていますが、実際問題これくらいの方がいいんじゃないかと密かに思っています。


さて、登場時のTSEはデッキ仕切りにあったモニターもさることながら、2101号車にはソファが設置され、量産化がポシャれば団体列車に転用することも考慮されていました。実際には量産化され特急列車の高速化に寄与したわけですが、TSEについても輸送力上等と言わんばかりにソファが撤去され座席が設置されています。


こちらは量産車と同じバックシェルを持つ座席が設置されています。バーレストも個別タイプとなっています。シートバックテーブルは試作車の座席と比べると小さくなっています。


デッキ仕切り際には折り畳み式のテーブルが備わります。量産車ではあっけなくフツーの固定テーブルとなってしまいました。


団体用途を想定していた名残、マイクジャックがあります。AV機器も撤去されたので、繋がるのかどうかは闇の中…。


気動車初の振り子車両、そりゃあローレル賞のひとつでも取って見せます。


そして、日本機械学会賞なるものも受賞しています。「いかにも」な気はしますが(笑)  現在は営業線からは引退し、両先頭車が多度津で余生を過ごしています。


 

 

 

 

 

 

 

 


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