富山地鉄10030形 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。


かつて日本では、鉄道を開業する際に適用する法律として、「地方鉄道法」と「軌道法」の二つがありました。地方鉄道は現在のJRや私鉄に採用される法律、軌道法は路面電車に対して採用される法律でした。地方鉄道法は現在鉄道事業法という名前になっていますが、地方鉄道法の名残を今に伝えているのが富山地方鉄道です。社名に地方鉄道を入れているのは現在この会社だけです。


そんな富山地方鉄道の10030形を取り上げます。勘のいい方ならお気づきでしょう、元々は京阪初代3000系 で、8000系増備による廃車でこの富山の地へやってきました。本来は譲渡の計画はなく、対岸の我らが阪急電鉄の2800系の車体を2扉化の上譲渡する計画だったのですが、クロスシートが調達できず、代わりとして京阪3000系の座席だけを譲渡してもらうために視察に行ったところ、車内がとても秀逸であったこと、元から2扉であったことから改造の手間が省けたなどの理由で、阪急2800系の譲渡計画は中止、京阪3000系を車体ごと譲渡してもらう計画に切り替えた過去があります。

 

ちなみに京阪電鉄は標準軌、富山地鉄は狭軌ということで、譲渡されたのは車体のみ、現在台車はJRで廃車された485系や、あの伝説の迷車、「食パン電車」こと419系の台車を流用しています。譲渡後しばらくは京阪特急色で活躍していましたが、現在は1編成を除いて富山地方鉄道色に塗り替えられています。形式消滅して現存車両もカットモデルと個人所有の1両しか存在しない阪急2800系の譲渡が対岸のライバル会社である京阪3000系によって中止されたと考えると恨み節である車両・・のように思えますが、阪急の車両はマルーン以外は似合わないケースが多いので、これはこれでよかったのかもしれません。



なお、1編成は京阪特急色に戻され、引退した8531Fのダブルデッカーを譲渡の上組み込み3両編成となっています。そちらは別項に譲りましょう。


車内です。そういえば、水曜どうでしょうのサイコロ4で、富山から信濃大町までの目を出した時に、京阪特急色で車内も原型に近かった当時のこの系列に乗っていましたね。その時と比べると、多少の変化が見て取れます。


ドアです。京阪時代から変わらない大型の一枚引き戸です。


車端部です。仕切り扉もありますが、ワンマン運転での通り抜けを考慮し、常時開いたままとなっています。


中には広告枠が設置されていない車両も存在し、京阪時代の雅やかな化粧板が完璧に残っています。


最前面です。車内で一番変化があったのがここで、ワンマン運転に合わせて座席を撤去、中央に運賃箱を設置した広場としています。特に立ち入りを禁止しているわけでもなく、吊革が設置されて立ち席スペースとして開放しています。座席ヒーターだけはどうにもならなかったようで、保護棒を設置し触れないようにしています。かつてはテレビも残っていたようですが、現在は運賃表に置き換えられています。


天井です。蛍光灯には当時と変わらないカバーがかかっています。当時と違うことといえば、広告が吊り下がるようになったことですね。

窓です。二段窓で、日除けはチェーンによるフリーストップ式のロールカーテンです。現在ではよく見かけるようになりましたが、当時は爪を引っ掛けるタイプが大半だったことを考えると、先進的な装備だったのでしょうね。京阪に最後まで残った編成では生地がベージュ系の色になっていましたが、こちらでは当時の青色のまま残っています。


 

座席です。転換クロスシートで原型のまま残っていますが、表地劣化に伴い座席モケットが富山地鉄標準の赤色に貼り替えられています。

 


ただ、肘掛部分は段織りの原型モケットが残っており、鮮やかな赤色モケットから明らかに浮いていますね(^^;; こちらはトップナンバーの編成で、肘掛上部にも赤いモケットが当てられています。なんだか時代を感じますね。窓側には壁に窪みを付けた肘掛が存在します。なんだか583系電車を思わせますね。

 

こちらは後に譲渡された車両の座席です。肘掛上部はモケットではなくFRPになっています。

 


確かにこちらの方が劣化も少なく保守は楽ですが、一気に安っぽくなってしまったのは残念です。ちなみにこの車両は元テレビカーの車両で、窓側に存在したテレビのスピーカーは撤去されており、その跡がなんとなく残っています。

妻面の固定クロスシートです。こちらも肘掛以外はモケットが貼り替えられています。個人的に、背ズリ側面にある鍵穴がすごく気になります(^^;;


最後に補助椅子跡です。ラッシュ時は使用することもなく、データイムでは使うほど混まないということで、取っ手を塞いで封印してしまっています。一応、座席との衝立という役割で残されているようですね。


編成によっては地鉄に来てからの方が活躍期間が長くなっているものも存在する10030系、アルプスエキスプレス共々、末永い活躍を祈ります。