乗車した瞬間から京都への旅の期待が高まるような演出を施すため、2011年に登場したのが6300系6354Fをリニューアルした「京とれいん」です。
定期の特急運用は2010年を最後に引退しましたが、京都の「和」と「モダン」をコンセプトに内外装を大幅に変えて本線に返り咲きました。
嵐山-梅田間の臨時快速特急として運用開始、後に京阪間の快速特急として土日祝日の日中2時間に1往復運転され、平日は貸切列車として運転出来るようになっています。
停車駅には、専用の乗車位置が貼ってあります。ダイヤ改正以前のものなので、現在は発車時刻が変更されていますね。
2012年夏からは、京の七夕の日に限り、臨時列車としても運用されています。
運行当初は快速としてスタートしましたが、快速幕を出さなかったのは6300系としての意地でしょうか(^^;; なお、2014年以降はヘッドマーク上部の種別色が青色になっています。
そんな七夕臨も、2015年からは快速急行に格上げされ、種別表示幕も臨時から快速急行に変更されています。
現役時代は編成数余剰により、現在の快速急行に当たる急行に運用されたり、茨木市発河原町行きの快速急行にも運用されていた実績が有ります。この臨時列車、嵐山花灯路の時期には嵐山方面へも運転されるようになりました。
中々本筋に入らず恐縮ですが、この列車はそれ程にネタを振りまく列車となっております。2019年に実施されたダイヤ改正により6300系が物理的に十三駅に停車出来なくなったことを受け、「京とれいん」は十三駅を運転停車で通過する列車に生まれ変わりました。
「快速特急A」、阪急単独では初のアルファベットが入る列車種別となっています。しかし、ダイヤ改正直後は快速特急は「京とれいん雅洛」の登場が遅れ、新たに増便された「京とれいん」も全般検査中ということで、「快速特急A」「快速特急」共々一般ロングシート車両で代走するという、まさかのツイン主役不在のスタートとなりました。
全般検査を経て、「京とれいん雅洛」に準じた列車名のステッカーが追加されました。
「京とれいん」も運行開始からはや10年、期間限定で記念ヘッドマークも取り付けられました。
反対側は別デザインでした。休車期間を挟んで一貫して速達種別で駆け抜けて来たこの編成、ホームドアの絡みもあるのか2022年12月をもって快速特急Aの列車設定が無くなります。この列車の運命やいかに‥。
それでは車内を見ていきます。まずは1、2号車です。座席は「蘭の華散らし」をイメージしており、元々マホガニー調の化粧板にゴールデンオリーブの座席が並んでいた姿を知るものとしては中々華やかになったのではないかと思います。
ドアです。形状自体は原型を保っており、近年見られるリニューアル車のように窓は大きくなっていません。
化粧板をドアップで。嵯峨野の竹林をイメージしたものに貼り替えられています。
続いて持ち手をクローズアップ。古くは2000系列から部分的に(?)採用されてきた、2枚で一体的なデザインとなるような形状になっています。この列車が「京とれいん」として登場した10年前までは少数ながら見ることが出来ましたが、廃車やリニューアルの進行で、ついにこの編成が最後の存在となってしまいました。
各車両の扉の上には開閉に合わせて点滅するランプが設置されました。ただあまり目立たないのが欠点・・(^^;;
車端部です。かつて設置されていた補助席は埋め込まれました。こちらは固定座席背面も同様です。新たにブックレットが設置され、日本語、英語、韓国語の京都と嵐山の観光案内が入っています。仕切り扉はそのままながら、ドア同様に竹林柄になっています。
後年、車内でフリーWi-Fiが利用可能となりました。前面展望用の電波も整備されており、最前席に乗らずとも前面展望が楽しめるようになりました。
座席です。ドア間は両端を除いて全て転換クロスシートとなっています。梅田駅では豪快な一斉転換を見ることができます。
座席自体は原型を留めていて、モケットを貼り替えたものです。
ヘッドレストカバーはビニール製のフルカバータイプからレザー製の個別分離した形になりました。座り心地は非常に柔らかくバウンズ感がすごいです。乗車時間は1時間に満たないことからこの程度が丁度いいですね。
但し、固定クロスシートは転換機構が不要なことから、このようにスペーサーを入れて幅を広く取っています。
各座席にはバーレストがついていますが、シートピッチが狭いのとヒーターで座席下が埋まっているため少し窮屈に感じます。
運転席背後はロングシートとなっています。2人掛け×2列×2両の計8人分のみの座席です。・・ロングシートですが(^^;; 座席自体は肘掛が豪華仕様になり、壁側にも肘掛がついており、クロスシートとの格差をなるべく少なくしています。
3、4号車を飛ばして先に5、6号車から行きます。座席のイメージは「麻の葉」で、リニューアル以前の雰囲気が少しだけ伺えます。
最前面です。こちらの乗務員室への扉も車端部の仕切り扉同様に貼り替えられています。窓は前面展望も考慮し大きくとられています。
天井です。カバーのかかった照明は電球色に交換され、荷棚も新品に交換されました。しかし扉付近に設置された吊革とスポットタイプの冷房吹き出し口はそのままです。
窓です。2枚で1ユニットとした下降窓で、国鉄急行型車両のグリーン車のイメージに重なる配置となっています。日除けは阪急伝統のアルミ鎧戸のままです。お年よりや子どもには少々辛いものがありますね…。
6300系オリジナルの形状をした非常通話装置も、化粧板交換・SOSボタンステッカーを貼り付けた上で健在です。窓にはご時世柄、換気のステッカーも追加で貼られています。
座席自体は1、2号車と同様で、モケットを異なるものとしています。
こちら窓側の肘掛です。もう少し幅が広ければしっかりと使えるのですが…。
各座席には貸切運用を考慮し座席番号が設置されました。
さて、飛ばした3、4号車へ入ってまいります。今までの阪急にはなかった車内に仕上がっているので、家族連れを中心にこの車両を目当てに乗車する方も多く、この3、4号車から先に埋まって行く傾向にあります。
まず扉付近です。3、4号車は格子状の仕切りが取り付けられ、デッキ風となっています。
暗くなる照明を補うためにスポットライトが増設され、なかなかムーディな雰囲気をかもし出しています(笑)
3、4号車の仕切り扉は新規製造されたものに交換されました。他の車両は化粧板貼り換えのみにとどまっているところを見ると、全車特別料金不要・自由席ながらちょっとした格差構造が見て取れます・・(^^;;
妻面、右側には先ほどのブックレットが、左側にはテーブルが設置されています。
車番の下には京都線の案内が貼られています。快速特急の停車駅の色を変えたり、神戸線と宝塚線がいい加減なのが実に「京とれいん」仕様ですね(^^;;
そして車内のフリーWiFiの表示。こちらは少し前のものですね。
そうそう、車内にも10周年記念のプレートが貼られていました。
車内です。さすが、「京風の車両」と謳うだけあります。落ち着きと温かみのある車内です。
格子の仕切りを抜けるとボックスシートが整然と並んでおります。
天井です。こちらも他号車と違い、照明を半間接照明に、荷棚を9000系列に似たものに変更しています。それでも空調はそのままです(笑)
座席です。河原町方面を向いて右側は4人掛けボックスシートになっています。ヘッドレスト上部には仕切りを設置して側面にも覆いがされており、ある程度の個室感を出しています。そしてクッションの下には畳を仕込むほどの徹底振りです。如何に阪急が力を注いだかを伺うことができます。
デッキ壁よりのみ1人掛けで、3人1組となっています。
そして左側は2人掛けボックスシートです。
各ボックスに1ヵ所、テーブルも設置されています。これは嬉しい配慮です(^^)
そして車椅子スペースも設置されています。右上に申し訳なさそうにマークが(^^;;
日除けもフリーストップ式のものに交換されています。座り心地は、足元が広々としているものの、今一歩でしょうか…。シートピッチ拡大の犠牲として背ズリの角度が垂直に近く少々疲れます。また、側面に設置された板、なんのクッションも無い木でできているため、うっかり居眠りで横を向くとぶつけて怪我をする可能性があります。ここは要改善ですね。一応グループ向けの車両ですので、3、40分みんなでわいわいしながら乗車することをオススメします。
観光列車共々優先座席は設定されております。日除けを降ろしても窓下のステッカーで識別出来るようにしています。
優先座席のステッカーです。モケットや日除けまでの変更は無粋と考えたか、ここのステッカー貼り付けで落ち着いたのでしょうね。
七夕臨では車内に笹がセットされており、京の七夕限定の短冊も配布されておりました。懐かしい一コマですね。
京阪間の移動、速さを重視してJR、ダブルデッカーを目当てに京阪、そして阪急の特急を使うのもいいですが、土日休日限定ではあるものの、桂~淡路間無停車で行楽期以外は大幅には混雑しない快速特急「京とれいん」を使ってみるのも悪くありませんでした。