ロードバイク歴1年の新潟県の南魚沼市議会議員の黒岩揺光です。
今回はロードバイク歴1年(プラス、クロスバイク歴2年)の私が、距離では国内最長クラスの「佐渡ロングライド210」に挑むと、どうなるか、という話です。
「佐渡ロングライド210」は、その名の通り、自転車で佐渡を1周するというもので、距離は210キロ。(13キロと100キロのコースもあります)毎年3000人ほどのサイクリストたちが全国から集まるイベントで、午前5時半にスタートし、午後6時に終了。完走率は93%です。11~12人に1人が完走できないという、ガチな自転車イベントとなります。
210キロですよー。
このコースマップを見ても、210キロという距離がどれだけのものかわかりづらいですね。
私の南魚沼市の自宅から210キロとなると、丁度、「東京駅」となります。
え? 東京駅?? 新幹線で1時間半くらいかかるとこじゃないですかーー!!
無理じゃないですか?
私のこれまでの実績は、地元の「グルメライド」という100キロ走るイベントに2回出て完走したことがあるくらいです。50キロ以上走行したことがあるのがこのグルメライドだけです。つまり、人生で50キロ以上走行したことが2回しかなく、最高走行距離が130キロの私が、突然210キロのイベントに出るというものです。
ロードバイクを買ったのが昨年3月。スコットのスピードスターというもので、100万円以上するロードバイクもありますが、私のは安い方で15万円くらいだったと思います。エントリーレベルのものですね。
5月18日、車で新潟港まで行き、自転車を下ろし、乗船します。車をフェリーに載せると1万5000円くらいとられるので、自転車だけで行きます。
↑の感じで自転車を船の中に入れます。自転車を載せるのだけで2200円とられます。人間と同じくらいとられます。
佐渡に行くのは30年振りです。
2時間半くらいで両津港に着きました。
ここから、スタート地点近くの宿までの18キロを自転車で行きます。
宿はゲストハウスです。
宿の廊下には自転車がたくさんあります。皆さん、ロングライドの参加者たちでしょうか。
5月19日は午前5時半スタートですので、目覚ましは午前4時にセットしました。
が、午前2時半には起きてしまいました。変な緊張感からでしょうか。
午前3時半に宿を出発。近くのローソンで朝ごはんを食べます。
午前4時過ぎに大会本部で受け付けをします。
まだ肌寒いのでウィンドブレーカーを着ます。
午前4時半から続々とサイクリストたちがスタート地点に集まってきます。
近くにいる男性に話しかけます。
なんと75歳!千葉から来たとのこと。
75歳で210キロ??
全国たくさんある自転車イベントでも、佐渡には毎年来ているとのこと。佐渡の魅力について尋ねると、「ゴールした時に名前をコールしてもらえるから」と言っていました。
へえええええ。
南魚沼のグルメライドでは名前なんてコールしてもらえません。
佐渡は各参加者に「計測チップ」が渡されますので、走行時間が計測されますし、大会本部はどの参加者がどこにいるか正確に把握することができるので、ゴール時に名前をコールするのが可能なのでしょう。(ちなみに、グルメライドと佐渡ロングライドの参加費は約1万円でほぼ同じです)
さあ。スタート10分前。皆さん、スタートの準備をします。
ここで、佐渡市の渡辺竜五市長が挨拶。I Love 佐渡のTシャツを着て登壇。「私も130キロに参加します!」とのこと。
おーーー。
南魚沼市の林茂男市長も頑張ってほしいですね。グルメライドは100キロと60キロのコースがあるので、是非、60キロでも参加されたらいいと思います。私が参加した2回の大会では、林市長は開会の挨拶だけで、参加はしてませんでした。
午前5時半、スタートです。18人ずつスタートしていき、私は3組目でした。
↑がコースの高低差になります。私は210キロのAコース。
最初の50キロはほぼほぼ平坦です。
車がほとんど走らない、海岸沿いの美しい景色に癒されます。
あっという間に最初の19キロ地点の相川エイドに到着します。驚いたことに、水とアクエリアスとコーラが支給されていました。コーラ?? なんでだろう、、。
ここでそばを頂きます。ここで、知り合いの魚沼市在住のサイクリストさんに会います。完走目指してお互いの健闘を祈ります。子どもができてから、自転車に乗れなくなったとボヤイてました。そうなんです。自転車は時間が必要なので、子育てが始まると、なかなかまとまった時間がとれなくなるのですよね。私みたいに、外回りの仕事を自転車でできる人じゃないと難しいかもしれませんね。
休憩はほとんどせず、すぐに走行再開します。
午前7時40分に42キロ地点の入崎エイドに到着。2時間で40キロは良いペースです。
この後に、「Z坂」と呼ばれる坂を登ります。
「Z坂はきついぞ」と言われましたが、正直、そこまできつくありませんでした。
普段から、市内の標高500メートルとか600メートルとかに自転車で行っているからかもしれません。
坂の上からの景色は最高ですね!
とにかく、車がほとんど走らない、広い道路を自転車で駆け巡れるのが楽しくて仕方ありません。
これなら200キロなんて結構簡単に行けるのではないでしょうか?
登りが終われば下りになり、時速50~60キロで走り降りることができます。ジェットコースターに乗っている気分です。
そして、景色は、最高。
こんな感じの岩場がそこらじゅううにあります。自然の芸術祭を自転車で駆け巡っている気分ですね。もう最高です。あ、あと、天気が最高なんです。気温は15~20度くらいでした。風もそこまで強くなく、完走できなかったとしても、天気だけは言い訳にできないレベルの天気でした。
こういう当たり前の景色がとても美しく感じます。
こんな「漁村」もとても美しく思えます。
午前9時過ぎに75キロ地点のエイドに到着。愛知県から来たという方と話しますが、「このペースなら十分、完走できる」と言われました。
私が好きな「Rapha」というブランドのサイクルジャージを着ている5人組がいたので、話しかけると、何と南魚沼市出身で、私と同じ六日町高校に行っていたとか!狭いですねーーー。
ここ過ぎたあたりから、ケツ、太もも、首が痛くなり始めます。
75キロ以上走ることは人生で2回しかないので、体が悲鳴を上げ始めました。平坦な道は平坦な道で、同じ姿勢で、同じ筋肉に負担がかかり続けるので、辛いは辛いのです。
ケツがいたいので、時々、立ち乗りをして、ケツの痛みを和らげようとしますが、立ち乗りをすると、今度は膝上の筋肉がつり始めました。
やばいです。まだ前半なのに、筋肉がつり始めるなんて、、、。
寝不足もありますし、色々不安が付きまといます。
午前10時26分、103キロ地点の両津港エイドに到着。
ここはエイドの中でも一番大きいところで、カレーに豚汁が出ます。
同じテーブルに座った愛知県からの方たちに撮ってもらいました。カレーは2杯頂きました!
名古屋から来たという自転車屋のオーナーさん。毎年、佐渡には数人のグループで参加するとのこと。自転車大会の醍醐味はエイドで他の参加者に話を聞くこと。
佐渡の魅力を尋ねると、210キロという長い距離なのに、離島だから、車がほとんど通らない道を走れるというところらしいです。確かに、信号もほとんどない道路です。コンビニも一度も見かけません。
膝がつった話をすると、筋肉がつらないようにするゼリーをもらいました。サイクリスト同士の連帯感。いいですねー。
両津港エイドの制限時間は12時で、私の到着時間が10時26分なので、速い方だとのこと。
しかし、もう疲れて、あと110キロ走れる自信がありません。「100キロ走れるなら200キロも走れるよ!」とか、言ってくれますが、そんなもんですかね?
ここでは20歳前後にみえる若い男性たちが「ストレッチいかがですか?」と声をかけています。
なんと、新潟市の専門学校でスポーツを学ぶ学生たちがボランティアで参加者をストレッチしてくれるというのです。
私もやってもらいました。
最高です。15分くらいでしょうか。かなり体が楽になりました。
しっかり休憩をし午前11時15分ごろ出発します。
ストレッチのおかげで、楽に走れるようになりました。
ただ、無理しないよう、ペースを緩めました。
138キロ地点の多田エイドに午後1時20分に到着しました。
ここでもストレッチコーナーがあったので、ストレッチしてもらいました。
残り70キロ。制限時間まで4時間40分。
しかし、ストレッチで15分ほど取られたので、出発は1時40分ごろになりました。
140キロ、150キロ、と10キロごろに出てくる看板を見るたびに、達成感に満たされました。
たまに止まって景色を楽しみます。
後、60キロだ。気合だ。
午後2時半、163キロ地点の小木エイドに到着。
ここの制限時間が午後3時なので、ギリギリの到着です。「ストレッチコーナーは終了しました」という看板が。そりゃそうでしょ。この時間にストレッチされていたら、もう制限時間になってしまいます。
なんと、このエイドでは「リタイア受付」のブースがあり、何人かの参加者がリタイア手続きをしています。
エイドには横になれる室内の休憩用のスペースもあり、そこには仰向けになって目を閉じている参加者の姿も。
完走率93%ですから、ここでリタイアをする人がいてもおかしくないでしょう。
そして、ここでリタイアをする理由はもう一つあります。
↑の高低差グラフをご覧ください。160キロ地点以降、大きな坂が3か所あることがわかります。
エイドでは係員が「ここから大変な坂があります」と呼びかけています。
無理はしないようにということでしょう。無理して怪我をされては困りますからね。
ここで、試しにコーラを飲んでみました。
私は、リタイアせず、そのまま走り続けることにしました。
最初の標高190メートルまで登る坂が始まります。
ここでは自転車を降りて歩く人の姿もあります。
私は歩きませんでした。
というか、登坂では、結構な数の参加者を追い抜きました。
ロードバイク歴1年の私が、なぜ、他の参加者たちを追い抜けるのでしょう?
勝手な解釈ですが、私は坂というか山が多い南魚沼市でたくさん走っているのに対し、都会で走っている人たちは、普段、坂を上るという機会があまりないのではないでしょうか。
標高600メートルの栃窪や後山等へ頻繁に登っている私にとっては、この坂はそこまできつくありません。
しかし、徐々に筋肉が痛くなっていき、「まだかー」「まだかー」と登り続けます。
「もうだめだ!」と思っていたら、係員の方が立っていて「あと100メートルで山頂です」と言ってくれました。
山頂では太鼓の演奏のサービスがありました。
(必死に作り笑顔をします)
ジェットコースターで坂を下ると、最後のエイドになります。午後4時で、184キロ地点の素浜エイド。残り26キロを2時間です。
海岸沿いの美しいエイドですが、もう美しさを楽しむ心の余裕はありません。
埼玉から来たという若者と談笑します。
「あと、坂が二つあるらしいです。ここまで来たら何とか完走できそうですね」
と言います。
そうですよね。残り26キロを2時間なら、完走できそうですよね。
海を見ながら足のストレッチをします。
さあ、残り26キロ、スタートです。
いきなり、登りから開始です。
登りで使う筋肉が違うからでしょうか。
いまだに、登りの部分だけは他の参加者を追い抜くことができます。
ケツの痛みが限界にきています。
首も痛い。
小木エイドでコーラを飲んでから、なぜか咳が止まりません。
坂を上ったせいで汗をかき、夕方の時間で気温が下がったせいで、寒気に襲われます。
ウィンドブレーカーを着て、寒さを和らげます。
鼻水が出ます。
咳が出ます。
体中が痛いです。
190キロの看板が見えました。天使のほほ笑みのようです。
残り20キロ。
最後の最後の登りが始まります。
もうここまで来たら気合です。
残り20キロということは、自宅から湯沢くらいまでです。
最後の登りは標高90メートルくらい。
ていうか、今だから冷静に標高90メートルとかかけてますが、実際に走っている最中はそんなこと知りません。
一体、登りがいつまで続くのかわからないのです。
「もう終わりですかね?」と他の参加者に聞きますが、誰も知りません。
何とか、登り切ったと思われるところに、トイレ休憩所がありました。
私はそこに駆け込みます。何人かそこで休憩しています。
「もう疲れました!だめです」と他の参加者に言います。
「残り15キロくらいですかね?」と言うと、「はい。あと2キロ下がって、後は平坦だと思います」と言います。
もう登りはない。
でも、きつい。
平坦は平坦できつい。そもそもこれまで130キロしか走ったことないのだから、ここまで長い距離を同じ姿勢で保つこと自体に体が慣れていないのです。
販売機があったので、アイスコーヒーを買います。
ベンチで最後の最後のストレッチをします。
「まだ1時間以上あるから、完走はできそうですね」と言うと、隣にいるおじさんが「もう30分くらいでゴールだろ」と言います。
アイスコーヒーは半分くらいしか飲めず、最後の最後の15キロ走行を開始します。
下り坂はできる限り漕がず、体を休ませます。
下り坂が終わると、最後の平坦な道13キロ。
まもなくして、「200キロ」の看板が出てきました。
あと10キロ。
あと10キロ。
10キロというと、自宅から石打くらいまで?
こんなに肉体的にも精神的にも苦しいのは人生で何度もありません。
「きつい」「もうだめ」と何度も言います。
どんどん街中に入っていきます。沿道から声援をくれる人も増えていきます。
逆走してくるサイクリストたちがチラホラ見えます。
おそらく、もうゴールをして、宿に帰る人たちでしょう。
「後何キロあるの?」と自答し続けます。
しかし看板はもうありません。
沿道の人が「あともう少し!」と言ってくれますが、あともう少しってどれくらいなの?と思ってしまいます。
登り坂では何人も追い抜いたと書きましたが、最後の15キロで追い抜いた人はゼロです。追い抜かれたのは何人か数えきれません。それくらい徐行運転でした。
もう進むのがやっとと言う状態。
最終ゴールはスタート地点の小学校のグラウンドだということはわかっていたので、小学校のグラウンドらしきものが見えると、「おお」となりますが、違う小学校の様です。
しばらくすると、ようやく誘導する係員の姿が見えます。左折するようです。「あと少しです。あそこ曲がって、真っすぐ行けばゴールです」と言ってくれます。
スタート地点が見えてきました。
司会者の声が聞こえます。
「また1人、やってこられました。黒岩揺光さん。新潟県の方です」
本当にアナウンスしてもらえるんだ。
「カラフルな格好ですね」と言ってくれます。
本来なら腕を上げて、ガッツポーズをしたいところですが、そんな余裕はありません。
ゴール!!
自転車から降りて、記念撮影します。
妻に写真を送ったら、💮をつけて返してくれました。ありがとう!
もう走れません。
グラウンドに自転車を置いて、少し座り込みます。仰向けに横たわります。
終わったーーーー。
午後5時28分。
ちょうど12時間。
司会者が「まだあと100人ほどがこれからゴールしてくる予定です」と言います。
ちょっと寒いです。
宿舎がスタート地点から徒歩5分のところで本当に良かったです。中にはゴールしてから、さらに宿舎まで20キロ走る人もいたようです。
もう自転車を漕ぐ気力はありません。
歩いて自転車を押しながら、宿舎に到着。
部屋に入って、サイクルジャージをすべて脱ぎ、布団の中に入りました。
もう自転車を漕がなくていいんだ。
体がもう動きません。
でも、とても良い思い出になりました!
皆さん、ありがとうございました!!
感想: 南魚沼市の場合、185キロのゴールデンサイクルルートの整備とかをやっていますが、ハード整備が主ですよね。サイクルステーションを作ったり、幟や看板作ったり、道路に青い表示を作ったり。でも、一番大事なのは、自転車人口を増やすことです。例えば市の職員の自転車通勤を奨励するとか、サイクリストによる自転車授業をしたりとか、中学、高校で自転車クラブを作ったりとかですかね。クロスバイクやロードバイクを乗る楽しみを中学、高校で知る機会があれば、大分、変わると思いますよ。