「70歳や80歳の高齢者に玄関前の雪の除雪を自力でさせるなんてありえない」と令和5年度予算案に反対をした、南魚沼市議会議員の黒岩揺光です。(詳細は議事録のページ29)
7月10日は、京都の同志社大学で非常勤講師をしている旧友から特別講師としてお招きいただき、「地方の貧困と政治システム」と題して英語で講演してきました。
午前7時半に家を出て、越後湯沢駅午前8時11分発の新幹線で東京へ。新幹線の中で、講義で使うパワーポイントの資料作成をします。そこから東海道新幹線に乗り換えて、正午に京都駅着。知り合い(国連勤務時代の知り合いでドイツ人)が迎えに来てくれていて、一緒に昼ご飯を食べた後、午後2時55分から同志社大学で講義が始まりました。リベラルアーツという専攻科目の一環、すべて英語でやる授業だそうです。他の国の提携校から来ている留学生が多くいるとのことで、オランダ人、カナダ人、韓国人などなど国際色豊かな感じでした。
「(全身オレンジ色の)政治家見たことありますか?」と最初に友人が紹介してくれます。
講義は1時間半ですが、とにかく私は対話形式を重視します。
最初に、「1700ある日本の自治体で一番平均所得が高い自治体と、低い自治体では、何倍の差があるでしょう?」というクイズから始まります。
正解は港区の1400万円と、青森県西目屋村の222万円で、6~7倍の格差があります。
日本はOECDの中でも貧困率は高く、さらに地方に行けば行くほど、平均所得は低くなり、自殺率も高くなっていきます。
私が暮らす南魚沼市は1700自治体中、1300位くらいで、平均所得は低い方です。にもかかわらず、水道代は全国でトップクラス。自殺率もトップクラス。豪雪地帯のため、冬は除雪のために生活費が余計にかかってしまいます。生活保護を受ける方は、ここ15年で2.5倍に増え、過去最高を更新し続けています。
これだけ生活に困っている人が増えているのに、福祉や子育てに予算が回りません。1人暮らしほど貧しくなることはデータで裏付けされているのに、当市の水道料金システムは、1人暮らしほど割高な料金を支払わされ、逆に大きな事業所には割引をしています。そんなシステムを採用している自治体は全国でも珍しいです。
例えば、除雪支援を見てみましょう。80歳や90歳の1人暮らしの方が1600人、市内にいます。
その方たちが玄関前や屋根の上に積もった雪を除雪できるでしょうか?できないと思いますが、市の支援は限定的です。毎年、数人の高齢者が屋根から落ちて命を落としています。
屋根の上については支援がありますが、玄関前については支援がありません。高齢者は自力で除雪をしなければなりません。隣の魚沼市は支援をしています。
それでは、皆さんに質問です。皆さんのおじいちゃんおばあちゃんが、「玄関前の除雪ができない!」と悲鳴を上げましたが、市が支援しない場合、何ができますか?
男子学生が「議員に立候補する!」と即答します。私は驚きました。
私が「議員になってどうしますか?」と尋ねると、「支援ができるよう条例を改正します」と答えます。
ほかの学生も「ボランティア団体を結成する」とか「市民社会で何とかする」などの答えがありました。
ここで、「2元代表制」という言葉を伝えます。市長と議員、両方を市民が投票で選ぶことで、市長がやりたい放題するのではなく、議員という代弁者が、市長の政策が市民の声を代弁しているかどうかチェックするのです。
もし、半数以上の議員が、「玄関前の雪も除雪してあげるよう予算を組むべき」と、市長の予算案を否決すれば、市長は別の予算案を作らなければなりません。これが二元代表制です。
しかし、南魚沼市の場合、これまで1707件、市長が提案したことについて、1707回連続で可決してきています。私1人が反対しても、賛成する議員が半数以上いると、その予算案は可決されてしまうのです。
なので、市民の方たちが選挙で、「玄関前の除雪に予算を付ける」と公約する方を擁立し、その方たちが半数以上を占めれば、変わるかもしれません。
しかし、都会と違い、地方では議員の担い手不足が深刻です。前回の南魚沼市議選は、22人の定数に対し、23人しか立候補しませんでした。京都市議会議員選挙は、定数65人に対し、90人以上が立候補し、30人超過でした。地方の方が生活が苦しいのに、それを救うべき議員の担い手が地方ほどいないのです。
それでは、この写真をご覧ください。私が市長選に出た時の街頭演説の写真です。200人くらいの人が集まっています。これを見て、若い皆さんは選挙に出るには何が必要だという印象を受けますか?
女子学生が「お金が必要だという印象を受けます」と答えました。
そうですね。選挙カー、運転手、ウグイス嬢、お金がたくさんかかる印象を受けます。誰でも立候補できる感じがしませんね。
でも、実際に市議選に必要な金は供託金30万円だけです。それも、一定の得票数があれば戻ってきます。なので、一定の得票数があれば持ち出しゼロで立候補できるのです。
でも、実際に立候補する人はほとんどいません。
若い人たちが政治に関心を持たなくなってしまっています。
特に地方では地縁血縁が大事ですから、皆さんそれを重視します。
高齢者の非課税世帯の水道料金は今は1300円安くなっているのですが、それが9月から廃止されます。これも、議会で賛成多数の議決があったので、廃止されるのです。市の基金はここ数年で倍増しています。これだけ物価高騰で生活が苦しくなっているのに、今廃止する理由が理解できませんでした。
そこで、私は署名活動を開始しました。しかし、多くの市民が「ごめん。共感はするけど名前は出せない」と言います。それはなぜでしょう?
男子学生が「反対していることを他に知られたくないのではないでしょうか」と答えます。
はい。そうなんです。市と密接に関わっている人ほど、署名したがりません。
地方では、市役所が一番大きな雇用主であり、待遇が一番良い雇用先であることが多く、さらには、あらゆる事業の発注元となっています。市と関係がない市民を探すのが難しいくらいです。
なので、私は、まず選挙に出るハードルを下げるため、2年前の市議選では、自転車1台で選挙に出ました。
かかった経費は名刺代の3万円だけ。街頭演説もしませんでした。選挙カーも使いませんでした。それでも当選できました。私の場合、政治家家族だから当選できたというのがあるかもしれませんが、愛知県の豊橋市では、30代の女性の方が、選挙カーも使わず、事務所もなく、当選しました。そういう流れが起き始めています。
より多くの人が選挙に出れるようになれば、より多くの民意が市政に反映されるようになるでしょう。
玄関前の雪の除雪もしてもらえるようになるかもしれません。
と、私の話が終わると、多くの学生が手を挙げて質問してくれました。
● 今後の予定は?
● 市はたくさんたまった基金で何をしようとしているのか?
● 今後、多くの若い人に選挙に出てもらいたいと思いますか?
● 多くの市民が名前を出して抗議活動をするよなことはないのですか?もしそれが起きるとすれば、どんな時に起きると思いますか?
● 「コシヒカリ」で有名な場所なのに、なんで平均所得が低く、人口が減っているのですか?
とても活発な議論になりました。
最後にグループ写真を撮りました。
その後、2人の学生が「一緒に写真を撮ってください」と言ってくれました。とても嬉しかったです。私が学生時代、講師の方とツーショットを撮った覚えはないので、、、。
午後4時半ごろに終わり、私を招いてくれた友人とお別れをし、同志社大から京都駅まで5キロの道を歩きます。この日は全く運動をしていないので、これが私の運動です。
妻に頼まれた豆餅を買い、途中、こじんまりとしたカウンター7席しかない洋食屋でご飯を食べ、午後7時半、京都駅から新幹線にのり、東京駅では最終の午後10時28分発の越後湯沢駅にのり、日付が変わりそうな時間に越後湯沢駅に着きました。東京駅では駅弁が半額で売られていたので、三つほど買いました。車で自宅に到着したのが午前0時半ごろ。
京都日帰り出張。とても楽しかったです。ありがとうございました。