ー概要

 

赤ちゃんの健全な脳発達にとって欠かせない、母体の手厚い保護。赤ちゃんは羊膜という多くの羊水に包まれたベールの中に身を委ね、来るべき分娩(出産)のときまでじっと待機します。しかし、母体はそう全てがうまくいくものではありません。羊膜が破れて破水を起こしたり、陣痛が遅れて赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼしたり、母体を保護する医者や助産師、特にママにとっては死活問題です。言い方は悪いですが、もし脳に障害を抱えた子どもを産んでしまった場合、母親はどう思うでしょうか。

 

私は障がい児を否定しているわけではありません。私の学校のクラスにも4組という特別枠が設けられ、そこに障がい児の生徒たちを集めて授業をしていました。でも4組の生徒たちの授業と、他のクラス(1〜3組)の授業から受ける温度感というものは、さして感じませんでした。むしろ「4組」という特別枠が、「障がい児と健常者を区別している」という明確なヒエラルキー意識を作り出してしまってるのではないでしょうか。

 

少し話がそれましたが、昔は「優生保護法」というとんでもない法律が存在していました。人工過密による労働者の増加を抑えるため、あるいは優秀な遺伝子同士を交配させて優秀な子孫を残そう、という触れ込みで制定されました。今ではもちろん存在しませんが、本当に恐ろしい法律だったと思います。戦後スローガンの「産めよ殖やせよ」はその逆をいくものでしたが、どちらにせよ大切な赤ちゃんを産むママの感情を逆撫でする行為…。さらに言えば、女性を所有物としか思っていない最低な施策だったと思います。そしてその一環である、堕胎罪。語弊のある表現でしたが、堕胎の全てを否定しているわけではないということをあらかじめ断っておきます。

 

ー堕胎罪とは

 

まず「堕胎」とは、生命の保続が不可能、もしくは見込みがない赤ちゃんを死産させ、そのまま母体外に出す行為です。これは「堕胎罪」という法律により禁じられています。しかし、特例の認める限り、堕胎罪が免除される場合があるのです。それは詳しく後述しますが、まず堕胎罪の構成要件について。堕胎罪は、主に赤ちゃんを産むママや医師、助産師、またはその他の第3者による行為で成立します。

 

ママ自身の場合、危険なピルや避妊具などを用いて、強制的に赤ちゃんの発育を阻害しようとすると堕胎罪が成立します。ピルは発がん性のある経口避妊薬のことで、母体に大変な実害を及ぼします。そのため、赤ちゃんの発育が遅れるばかりかそのまま死なせてしまう場合だってあるのです。次なる構成要件の2つ目は医師による堕胎罪。少し複雑ですが、これは「業務上堕胎罪」というものに該当します。医師の承諾を受けたママが、堕胎の対応を仰ぐことで成立する犯罪です。また、赤ちゃんに限らずママも死なせてしまった場合には、「業務上堕胎致死罪」が適用されます。

 

そして第3者による堕胎。これは例えばホストやクラブでの交際で知らない男と妊娠してしまい、誰の子かわからない赤ちゃんが誕生した際、男が強制的に堕胎の片棒を担ぐ行為。例えば、女性が寝ている際に薬を飲ませる行為がこれにあたります。いずれにしても堕胎罪における構成要件はケースバイケースであり、それによって適用される法定刑も変わってきます。母体外に出された赤ちゃん(死産)の場合、ママや医師助産師の精神的な負担を考えると、堕胎罪という存在意義も問われることになるでしょう。また、堕胎において例外が適用される場合があり、それに関しては「堕胎罪」に問われることはありません。

 

ー母体の安全には変えられない

 

具体的には、母体の健康を著しく害している状態(破水や鬱血など)や、赤ちゃんにとって生命の保続が困難な状態であること、および医師もママも同意していて赤ちゃんを堕胎させることに同意している場合などに限り、例外的に「母体保護法」という特例の認める範囲で、「中絶」という扱いになります。厳密な区分はさておき、私は母体の健康が損なわれる、あるいは生命に関わるものであった場合、たとえ堕胎罪の有無にかかわらず、医師やママの気持ちを汲んであげることが大事だと思っています。

 

2010年に医師が母体の保護のため、苦肉の策としてママに子宮収縮剤を点滴し、陣痛を促して赤ちゃんを死産させたことで批判されましたが、これも母体にかかる安全上の配慮から下した至上命令であり、ただひたすらに「堕胎罪」というレッテルを貼るのは早計かなと私は思っています。どうしてもの場合、そういった母体保護法の観点からしかるべき処置を施し、立場上母体の安全を最優先するという判断はあながち間違ってはいなかったと思います。母体の保護という、極めてシビアな立ち位置である以上、そういった医師やママの気持ちを最大限に配慮してほしいというのが私の意見です。