観光サイクリングの下見で栃木県の益子に行ってきました。
益子といえば益子焼!と連想するのが一般的ですが、
鎌倉・室町まで遡る貴重な文化財が市街地を囲むように山麓に点在。
国指定重要文化財が7つもあるのです!
さらに益子そば、天然酵母のパン、おしゃれなカフェなど、
観光客に若者が少ないことが逆に良い効果をもたらし、
落ち着いた文化の薫り漂う魅力ある町になっています。
ツアーでは、自転車で25kmほど走りながらの観光。
歩くより行動範囲が広く、自動車より訪れた土地の空気を感じられますよ。
益子駅を出発して自転車で20分程度走ると円通寺に到着。
1402年に良栄の開山に創建された円通寺。
この表門も開山当時の1402年に建てられたもの。
茅葺き屋根が銅板に変わったぐらいでしょうか。
国の重要文化財に指定されています。
表門から石段を上がっていくと一切経塔が目につきます。
こちらは1816年頃に建てられたそうです。
涅槃仏が迎えてくれます。
釈迦が入滅する様子を仏像としてあらわしています。
入滅とは煩悩が消えた悟りの境地に達すること。
広義的には死というのも含まれています。
涅槃仏は、右手を枕にし、頭は北向き、顔は西向きが多いのだそう。
「北枕」というのはここからきているのですね。
ちなみに開山した良栄は円通寺に大沢文庫を設け、
学問所として多くの僧を育成し、明治時代ぐらいまで隆盛したそうです。
円通寺は1872年に火災にあいますが、表門と一切経塔は焼失を免れました。
円通寺から自転車で20分ぐらい走ると、地蔵院&綱神社&大倉神社に到着。
まとまってるので散策も楽々です。
入口に交遊館があり清潔なトイレもございます。
まずは地蔵院の本堂から。(国指定重要文化財)
地蔵院は1192年に宇都宮朝綱の開山。
宇都宮朝綱は源頼朝から「関東一の弓取り」と称えられた武将です。
本堂は1542年に建てられたそう。優美な佇まいが印象的ですね。
地蔵院に隣接した綱神社と大倉神社にも立ち寄ります。
金属製の鳥居が違和感ありますが、ほどよく苔むした石段が良い感じ。
石段を登りきると綱神社の本殿。(国指定重要文化財)
こちらも宇都宮朝綱によって1194年建立。(1399年再建)
茅葺き屋根と横から見た時の優美な曲線が印象的。
綱神社本殿のすぐ隣に建てられている大倉神社本殿。(国指定重要文化財)
大倉神社の歴史は古く807年の創建だそう。本殿は1527年に再建。
昭和25年に1kmほど離れた大倉林から保存のために移築されました。
続きましては高館山を越えて西明寺を目指します。
今まではフラットな道が中心でしたが本格的なヒルクライム。
標高差約150mの登りとなります。
舗装路の最高地点から高館山の山頂までが近いので軽くハイキング。
栃木百名山にも選ばれている高館山の山頂は301m。
車道からは、ゆっくり登って下りても約10分程度とお手軽。
高館山は西明寺城が築かれた山城でもあります。
平安時代に築かれ、戦国時代末期の廃城したと云われています。
山腹から山頂に至るまで広い範囲で郭跡など観察できます。
高舘山から急な舗装路をダーッと下ると西明寺に到着。
西明寺は737年に行基菩薩によって開山の古刹。
石段両脇の椎林叢(しいりんそう)は天然記念物。
石段を上りきると楼門。1492年建立。(国指定重要文化財)
その隣に三重塔。1538年建立。(国指定重要文化財)
軒下の木組みが実に緻密!匠の技ですね~!
西明寺で特徴的なのが閻魔堂。
堂内に5体の仏像が並んでいます。
日本で唯一の笑い閻魔がいるのです。左は悪童子。
豪快に笑う閻魔大王と善童子。
左手に鎮座していた奪衣婆。ある意味、一番のインパクト。
俗説ですが、この奪衣婆は閻魔大王の妻なんて説も。
右手には地蔵菩薩。いわゆるお地蔵様です。
そして西明寺の本堂。1394年建立。
内部にある厨子(ずし)は国指定重要文化財です。
本堂内陣に入る場合は300円必要。
厨子は仏像などを中に安置する仏具で室町時代の作。
鎌倉時代に作られた仏像を8体納めています。
本堂軒下の彩色の透かし彫りも素晴らしいですよ。
西明寺から町の中心部に移動してランチタイム。
益子で作られたそば粉を使用した十割そばがオススメ。
ボリュームたっぷりで美味!
ランチの後は益子参考館へ。(入場料500円)
陶芸家の濱田庄司さんが自ら参考とした世界中の品々を、
広く一般の人々にも「参考」にしてほしいとの意図のもと開設された美術館。
濱田庄司さんの自邸・工房の一部を活用しています。
基本知識として益子焼について。
笠間焼で技術を身につけた大塚啓三郎という方が、
山を越えた益子で1853年に創業したと云われています。
創業から約160年ほどしか経っていない比較的新しい窯業地です。
1924年に民芸運動の指導者であった濱田庄司さんが移り住み、
益子の土と釉薬を用いて作陶。益子焼の名が一躍有名に。
益子焼の特徴としては、造形は厚手でシンプル。
民芸調と言われ鮮やかな色彩や細かな図柄はなく、
地味で飾り気のない素朴な色合いとなっています。
鉄分を含んだ土は、造形しやすく耐火性も大きく、
また釉薬ののりが非常によいそうです。
益子の釉薬として5種類が代表的で、
柿釉(かきゆう)の落ち着いた渋い茶色、
糠白釉(ぬかじろゆう)の白色、
青磁釉(せいじゆう)の深みのある美しい青色、
並白釉(なみじろゆう)の透明。
本黒釉(ほんぐろゆう)の黒色。
釉薬は焼くとガラス質に変わるため、水に強く美しいツヤが出ます。
話を戻します。益子参考館の内部です。
濱田庄司さんは恐ろしいほどのコレクターでもあるのですが、
この益子山水土瓶もそのひとつ。
明治時代に人気があったらしいのですが、
濱田庄司さんはコレに魅かれて益子に来たのだとか。
濱田庄司さんの作品もたくさん展示されています。
濱田庄司さんの蒐集(しゅうしゅう)は、日本国内にとどまらず、
アジア、中近東、ヨーロッパ、アフリカ、南米など世界中から。
極めつけはこの古民家の移築です。
内部も素敵な感じで、世界各国の諸品が置いてあります。
ここの内部は一部を除き立ち入り禁止。
一部がカフェスペースになっていて、コーヒーなど飲めますよ。
凄い空間だなぁ。ずっと居たい人がいるかもしれません。
濱田庄司さんが使用していた工房。
登窯。
益子参考館から移動して「つかもと」さんへ。
益子最大の窯元で140年の歴史を持っています。
「おぎのや」さんの釜めしの容器も作っています。
工場見学コースというのがしっかりあって、
作業工程を回ることができるのです。
ふむ。
ふむふむふむ・・・。(疲れたので若干手抜き)
隣接してある「つかもと作家館」や「ショッピングプラザつかもと」で、
益子焼を展示販売してあるのでお買い物もできちゃいます。
ギョッとするお高いものから、手軽に購入できるリーズナブルなものまで。
益子焼を堪能したら、ゴールの益子駅に向かいます。
途中、天然酵母のパン屋さんの前を通るのでお買い物も可です。
歴史と文化の薫り漂う益子散策、ご興味のある方はご参加下さいね。
2012年のツアーに関してはレンタルバイクは予約で一杯なので、
自転車を持ち込める人に限ります。ごめんなさい。
来年以降も定期的に益子ツアーを開催しますので、
楽しみにお待ちいただければ幸いです。