先日、番組で勝谷誠彦さんが石原慎太郎氏と橋下徹氏を分析して、石原氏はオタク気質、橋下氏はヤンキー気質なので実は両者は合わないのではないか、と発言していたのを聞いてなるほど、と思った。
 確かに石原氏はある種オタク的な要素がある。文筆活動以外にもいろんなこと凝り性で、青年時代に書いた絵が公開され、その緻密なことに驚いたこともある。
 橋下氏は松井大阪府知事は元不良だったとも聞くし、確かに熱くなったり、行く時は一気に行く感じがヤンキー的な統率力を感じる時がある。
 人間は不思議なことに同じタイプが共振し合って集まるものだし、石原氏と橋下氏はもしかすると共振し合えない気がするのも確かだ。
 
 よく芸能人のイベント、コンサートなどに行っても思うのだが、やはりその中心にいるタレント、アーティストに共振、共感して集まってくる人たちはやはり似ている。
 それが例えメディア越しであっても共振する人たちはちゃんとお互いに響き合っているようだ。
 もちろん僕自身も共振できる方達と仕事をしているわけだし、同じタイプの人と一緒にいるのは心地よいことだ。
 
 この共振の輪は人によっては狭かったり、広かったりする。
 国民的アイドルとして今や伝説になった山口百恵さんやプロ野球の長島茂雄さんは幅がとても広く、共振力が大きいとも言えるだろう。
 AKB48のようなアイドルもはじめは狭い範囲でしか共振させられなかったが、今や日本中を共振させている。
 
 こんなことを考えるとまるで音楽における楽器のようだなと思う。
 管楽器で「いい音」とは一般的には倍音成分ゆたかな音と言われていて、倍音成分が多い音はオーケストラがフォルテッシモで鳴っていてもきちんと抜けて聞こえて、あらゆる音と共振してハーモニーを響かせる。
 
 どうせなら国を背負って立つ人には豊かな音で日本の隅々にまで届く共振力を持ってほしいと思う。そしてその音と響き合いハーモニーを世界に向かって奏でられたらと思うのだ。

 
 
 ビジネス雑誌とか、ビジネス啓発本のタイトルやキャッチコピーで最近目にして気になったフレーズに「好きなことを仕事にする」というのがあった。
 「2番目に好きなことを仕事にしなさい。1番好きなことは趣味にとっておきなさい。仕事にすると嫌いになるから。」かつて、こう言われたことがある。
 僕はずいぶんこの教えを意識しながら生きてきた。
 かつては景気も良く、仕事の選択肢もたくさんある時代だったからこその教えだったのかもしれない。
 今は景気も悪く就職難。こんな時代には「好きなことを仕事にする」ことで厳しい状況も「好きなことをやっているんだから」と乗り越えていく方が幸せということなのかもしれない。
 
 今から20年前、僕が松任谷由実さんのオールナイトニッポンという番組を担当していた頃、ミーティングの席上の雑談で、「節丸って仕事辞めたいの?」と突然聞かれたことがある。
 当時の僕は自分の仕事について「今の仕事でいいんだろうか?」と悩んでいた。
 今、思えば若さゆえの悩みだが、どこかで「自分この仕事に向いているのだろうか?」と思っていた。僕が一番好きなことは音楽。でもラジオの制作の仕事についてみると、音楽も扱うが「笑い」に関わる機会も多い。そうした「笑いの現場」で僕自身がどうにも上手くやれずにいたのだ。「こんなことならもっと音楽中心の業界に転職しようか」、そんなことを思っていたのだ。
 松任谷由実さんは勘がいい人だ。そんなこと自分では話したことなどないので、その質問にびっくりし、自分の感じていることを説明した。
 彼女はそれを聞いて少しアドバイスをしてくれたのだが、その中で心に残ったのが、「どんな仕事をしていても、あなたの音楽への思いと、音楽を聴く“耳”は音楽業界のプロレベルだから自信を持ちなさい」と言われたことだ。

 当時は20代後半でどこか「ものづくりのプロ」としての自分に懐疑的な思いを抱いていた。だからそう言ってもらったことがすごく嬉しかったのだ。
 そしてそれをきっかけに、ラジオ番組制作においても、与えられた「笑い」の仕事も一生懸命やり、その上で自分の大好きな音楽方面の仕事にも積極的に取り組めるようになった。
 好きなことが仕事だと時間を忘れ夢中になれる。そして失敗しても「もう一度」とすぐに気持ちを立て直すことが出来る。
 
 あのときの松任谷由実さんの言葉は僕を褒めてくれたのではなく、「好きなことにフタをするのは止めなさい」というアドバイスだったのだ。
 
 同じようなことがもう一度あった。やはりその番組を担当していた福山雅治さんが、あるとき「なんでみんな好きなことを仕事にしないんだろう」と言ったことだ。
 福山さんにはきっと好きなことを普通に選んで今の仕事に辿りついたのだろう。
 普通の人はそんな簡単じゃないんだよ、とツッコミながらも、「向いている向いてない」という基準ではなく「好きか嫌いか」で職業選択をしてきた強さを福山さんに感じた一瞬だった。
 
 若い時の僕の悩みも結局は「自分はこの仕事に向いているだろうか?」という悩みだった。
 でも大切なことは「自分が好きなことをやっているだろうか?」ということなんだ、と教わった瞬間でもあった。
 
 そんなことを「好きなことを仕事にする」という言葉を聞いて思い出した。
 そういえばエイベックス・グループの総帥、松浦勝人社長がニッポン放送で持っている番組のタイトルは「仕事が遊びで遊びが仕事」だ。松浦社長の心境も深いなあ。
 今日は大学時代からの友人でプロのサックス奏者日野林晋さんのバンドNF4のライブにこれまた大学時代の音楽仲間と行って来た。
 このバンドの演奏を聞くのは今回が2度目だったが、お客さんも適度に入り、お酒も楽しく、美味しく頂きいい気分で今帰って来たところだ。
 大学時代の友人というのはよくも悪くも学生時代の印象を引きずっているので、良くも悪くもあまり客観的に見ることが出来ない。最初にこの日野林さんのライブを聞いた時は僕自身もサックスを演奏するし学生時代も一緒に演奏した経験もあるが故、「上手い」「下手」というような視点で見ていたような気がする。つまり、邪念が入って来て純粋な気持ちで聞けなかった記憶がある。
 しかし今日は違った。
 日野林さんの演奏はときにファンキーに、ときに繊細な表情を魅せる。このバンドのピアノ奏者の表現力も素敵だった。
 前回のような邪念は入る余地のないプレイなのだ。
 曲も7割オリジナル。3割スタンダード&オリジナルアレンジのカバー。選ばれた曲はビートルズのラブ・ミー・ドゥーとジョン・レノンのイマジン。
 意外な方向のアレンジで嬉しい裏切られ方をした。
 
 今日のライブを聞いていて昔ジャズピアニストで作曲家でアレンジャーの前田憲男さんが言っていたことを思い出した。「ジャズは自分が伝えたい分だけのテクニックとフレーズがあればいい」。
 ジャズに詳しく無い人には少しわかりにくいかも知れないが、ジャズというのはアドリブ、すなわちインプロヴィゼーションがその主軸となる。そのときの感情、感覚に任せ、思いつくがままのフレーズを繰り出して行く。そのために憶えているフレーズとミュージシャンとして「言いたいこと」のバランスがとれていることが重要で、言いたいことが大して無いのにテクニックだけがすごくても、言いたいことがたくさんあるのにそれを表現するフレーズを持っていなくても、どちらの場合も「音楽」にならないと言うのだ。
 もっと一般的な言い方をすれば、伝えたいことを伝えるために必要な言葉だけ知っていればいいということだ。
 
 今の日野林さんのプレイはまさにそのバランスが取れたいい状態だった。
 そこには一度就職したのに音楽への夢が捨てきれずやはりプロミュージシャンになってしまった日野林さんの人生そのものが、今音楽で表現し続けている喜びを感じることが出来た。
 そしてその表現のために自分で作り出した素敵な曲の数々。そのすべてが今の日野林晋そのものをリアルに感じさせてくれた。
 感動した。ここまで音楽に対して真摯な態度で生きて来た日野林に感動した。

 僕はミュージシャンではないけれど、エンターテインメントの送り手としてラジオ番組を作っている。僕は伝えたいことと、そのために必要な言葉のバランスは取れているだろうか?
 自分をあらためて振り返った夜でもあった。

 こんな話、照れてしまって本人に面と向かって話せないからここに書いてしまった。
 もしもこれを読んでくれるようなことがあったら伝言です。また飲みに行ってキリのない馬鹿な話で盛り上がりましょう。