







「お茶漬けでもいっぱいどうどすか」は
いい意味にも、その反対の意味にも
解釈され、かつての京都の習慣を
端的に表現するひとつとして
世間によく知られた事柄だった。
今は、そんな事が話題にも乗らなくなって久しい。
時代の情報化の進展による、平準化、一律化、多様化の波が
京都の習慣を変貌させてきている。
それはさておき。
京都の漬物と茶漬けの話題。
ちょっと、古い話になるが平安朝の頃
公家から庶民に広がっていた
年頭の嘉例(めでたい意味の先例)に
「歯固め」というのがあった。
今は、どのように受け継がれているのかは
詳らかではないが、歯は歳を意味し
歳を固めて、長寿を願った。
本来は清涼殿の「昼の御座」で
天皇にお薬を差し上げる儀式だった。
その時に供されたのが、ダイコン・ウリ
塩漬けアユ・イノシシ肉・シカ肉だったという。
京の風土が育んできた、食生活を要約しているようで
おもしろい。
京都の地形は南を除いて山の囲まれた
盆地である。
京都を代表する名産は漬物。
聖護院カブラノの千枚漬け、上加茂のスグキ
大原の志ば漬けが有名なところ。
このうち、スグキの生産が京都・北部の
上加茂、西加茂などで今、ピークを迎えている。
一般的な漬け方は
畑から抜き取ったばかりのスグキの皮をむき
水洗いし、塩をして四斗樽に漬け込む。
この時に天秤式の重石をかけ
10日ほどで出来上がるとの事。
こんな風物は、はじめて見たが
今、流行の「地産地消」を思い出せて
興味深い。ちょっと値段も高そうだが。
茶漬けにあう、ちょっとすっぱい味のするスグキだが
歴史的に生活の知恵が働いている。
冷えためしを、暖めなおす手間を省いて
湯漬けにする事が、その発端になっているらしい。
しかし、昨今は美食、飽食の時代。
お茶漬けなどは、一般の食膳には乗らない。
漬物だけは健在の様子。
参考 「京洛みやびの味 集英社」など。