今、目の前に広がる感動を
全身で浴びながら眺めるよりも
僕はあなたに伝えるためにと
スマホを構えて保存した。
色褪せないデジタル記録で
いつでもどこでも示せるように
いつか、あなたに見せるために
いつか、私の喜びとなるように
車を止めて
人目を気にせず
空に向かってスマホを掲げた。
あなたの見上げた空にはきっと
誰かの気持ちという雲が
フワフワと浮かんでいるのだろう。
私の見つめる空にはきっと
わたしの心を映した雲が
重く湿ったまんまで
留まっているようだ。
この間、思わず見惚れた感激を
素直に受け入れて拝むよりも
僕はあなたに送るためにと
スマホを取り出し写しまくった。
僕にも、こんな感性があるんだよ♪
きっと共感してくれるだろうな♪
急いで浜辺に降りて
帰りの時間を無視したまま
海に向かってスマホを翳した。
あなたが見つめる海には
遠くに繋がる夢や希望が
絶え間なく打ち寄せる波となり
消えないように輝くのだろう。
僕の見渡す海は
濁って乱れる波のように
恐怖と焦りで荒く
波しぶきを散らして彷徨っている。
今日、感じた微風は
少し冷たくなって実りの香りがした。
誰かに伝えようとしてばかりで
自分を感じる事もせず
何処かへ見せようと思ってばかりで
己を見つめることも無く
私は僕を見失い
僕はオレを忘れてしまった!
自分も消えそうになっていたけど
僕の仕事は肉体労働で
日雇い作業の下請け業者♪
ただそれだけのことで
汗臭い体と汚れた作業服のまま
現場と家を往復している日常だ。
でも、涼しくなったら何となく
僕らの存在のままでも
社会に受け入れられる気がする。
温かいコーヒーが欲しくなったり
お湯割りの焼酎が美味いと思ったり
気が付けば9月もだいぶ
過ぎてしまった!
孫から今度の運動会は
見るだけだからね!と連絡があった。
今年の運動会は
囲む仕出し弁当も禁止で
集う応援合戦もしないみたい。
簡素化されたプログラムで
行われるらしいけど
僕は家族の一員として
参加することが決まっている、
らしいです♪
何もかもが
新しい価値観となったまま
不思議な流れで秋となった。
田んぼの稲穂は
鮮やかに色付き
彼岸花が並んで見守る
いつもの風景に
何ら変わりは無かったので
僕も何ら、変化は無い。
多少、やつれて
劣化して、老化しただけ!
ジイジだから
しょうがないよね…
それよりも
運動会が楽しみだ♪
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