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此処はsnow dropsテキスト置き場です。

突発的なSSを気ままに更新します。

Amebaでブログを始めよう!

寒さがなければ生きていけない

たとえばこの地に 春だけが舞い降りて

(それはこの地の凍るような春ではなくて)

全てのひとが暖かく花のような微笑みで生きていくとするなら


それはもう僕のものではないのだ


地面に広がる雪のつめたさがなければ

僕は生きていけない


春だけが舞い降りて

僕から冷たさを奪っていくとするなら

(それこそ冬が僕の全てを奪っていったときのように)

きっと世界は 僕を必要としていないと


ずっとひとりぼっちの僕に 


君は必要ない と


そう言っていると同じことで


冷たい手 氷のような息 凍える瞳

そしてこの視界を白だけで埋め尽くすこの雪がなければ


僕はもう生きていけない




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うん、何?あれ?一年ぶり?

あはは



お久しぶりですというかこのブログまだ生きてたんですね。

なんかものっそいこっぱずかしいものが下に残っておりますが…

気にしないで下さい



というか「これは何」と聞かれれば…

ろしあさま妄想…としか言えないんですが…(痛)


ヘタリアすっごく色々やりたいんですが、

いかんせん資料&本家を読みつくす時間がなく、

小説書くには不確定不明確なことが多すぎるのです…orz

自分としてはロシアさまあたりの歴史をひととおり読んで妄想しまくりたいんですが…


へたりあは読み専かな、と(遠い目)



ちなみに上記の短いのはただのイメージです妄想ですごめんなさい


ろしあさまは

・自分の国の人々が好き⇔自分の国の人々が嫌い

・変わらず降り積もる雪が大好き⇔冷たいだけの雪なんて大嫌い

・あたたかいところを夢みている⇔実際そんなものの存在が厭わしい

・春のような日本が大好き⇔春のような日本が大嫌い


現在こんな感じで妄想爆走中です。

どちらもろしあさまにとって本当なんです

暖かいところを夢見ているのも本当で

でもそんなものが自分の目の前にあるのは怖い

一人はいやだと泣きながら

一人でいないと立ってられない



初期妄想のこれが今後どんな感じになるのか恐ろしいものです

ろしあさまサイトまわりたい!!サーチでロシア単品を全然期待しないで検索したら

結構な数がヒットして、大喜びと同時にすでに出かける時間になって涙をのみました。

まだ全然まわれてないよー…



露日 いいよね (きゅん





――――――――――――





例えば―例えばだ。

彼が恋などでもしようものなら、一体どのようになってしまうのだろうか。


僕は考える。彼の考えていることを。

他人からはわかりやすい、と言われている彼の事を。

自分だって彼が見た目どおりの、堅物で、自己中心的で、それでいて自分のためになることならば平気で柔軟なものの考え方―悪く言えば陰険な―をする人間だと解ってはいるし、それから矜持が驚くほど高く、背も高く、鼻も高――あれは、高いと言っても差し支えないのだろうか。


「おいハスモダイ。ぼーっとするだけなら出て行け」


それはまったく差し支えある。とでも言うようにヒースマがハスモダイの頭を書類でぱこんと叩いた。

ハスモダイは一瞬、自分の思考を読み取られ、鼻についてのツッコミを入れられるのかと思ったが―

彼はいつもの様子でカリカリしているだけだった。叩かれた頭の痛み具合から言って、本日の機嫌はそれほど悪くなさそうだ、とハスモダイは真剣に思った。傍から聞いたら笑いの起きる考察だ。



「ぼーっとなんてしてないよ。考え事してたんだ」

「――どうせくだらないことだろう。新作のポエムだとか、どこぞの誰の噂だとか―」



ヒースマが溜息をつきながら自分より何歳か年下の同僚を見下ろした。

あどけない瞳がじっとこちらを見上げて、なんだか異様に真摯な色をしている。



「君のことだよ」

「―――は?」


「君のことを考えてた」


まったくの真顔で言ったハスモダイに対して、ヒースマは口を半開きにしながら数秒固まった。そのあと、ハスモダイはあまりにも見たことのない―それこそ世にも珍しいものをみて、さきほどのヒースマと同じようにぽかんと口をあけっぱなしにした。


ハスモダイの言葉に、ヒースマはばっと耳まで肌を真っ赤にして、無言で身をひるがえしたのだ。


「――は、」


自分の口元から抑えきれない笑い声が響いてしまって、あわてて口元をおさえた。


「―っふ、あはは、なんだヒースマってば――」


案外かわいいところがあるんだ。そんなことを思いながら爆弾を落としたことにはさも気付いていないような「フリ」をしながら、ハスモダイはころころと、嬉しそうに笑うのだった。














――――――













ごっ



ごめんなさい…!(ぎゃああ!)



基本的にわたしの文章の書き方はそりゃーもう突発的で、

冒頭の「例えば―」の文の時点ではまだ誰を書きたいのかも何を書きたいのかも決まってません

あとは勝手に手がうごいてフィーリングで書き連ねて、長編でもないかぎり途中で手を止めないので

書き終えてみればあらびっくり。なんでヒーハス!?!?どうしたわたし!!!!好きですけど、自分で書くことがあろうとは!



すんませんなんか、ハスモダイが勝手にやったんです(最低)



――――




「なべて世はこともなし――とはよく言ったものですね」


唄うような声音が、秋の夜長に響いた。

それはひっそりと、しかし滑らかに夜風に乗って消えゆく調べだった。


「…『こともなく 生き来しものを老いなみに かかる恋にも我は逢へるかも』」


そっと呟かれた、今度はほんとうに歌かなにかの独白が木霊する。

その意味を脳内で反芻でもしているように、ユーリはゆっくりと目を眇めた。彼の目には、黒く透きとおった夜空に小さく輝く星がおぼろげに見え隠れする。その目はなにかをはっきりと捉えることができない。視力嬌声装置としての眼鏡をかけていてもそれはほとんど変わらなかった。だからこそユーリは、星そのものを「見」ているのではなく感じ取るように、ひっそりと目を細めた。

空の黒々さに魅入られていると、背後の草木が揺れる音がして、その肩がぴくりと反応する。


「こんなところで何をしている」


咎めるような声には答えず、ユーリは空を見上げていた。その気配が隣に立って、幾ばくかして苛立ったように腰を降ろすのを確認すると、それに顔を向けてゆるりと微笑む。


「…珍しいこともおありですね。貴方も星を見にいらっしゃったのですか?」

「くだらんことを言うな。いつも書庫で本の虫か、自室でこれまた本の虫か、俺の部屋で説教の虫になっている以外行動範囲のないお前が、どうして姿が見えないのか、珍しく講義の質問でもしてやろうと思ったところをだ―、一体なんの一大事か天変地異の前触れかと王子らしく偵察に来てやったんだ」


ユーリはちょっと感心したように―しかしわざとらしく目を見開くと、可笑しそうに笑った。


「それはそれは。貴方にも王子のお役目、というものが…やはり解っておられないようですね、ゲオルカ様」

「当たり前だ」


ゲオルカはくだらなそうに言って、少し口元に微笑を浮かばせた。それからちょっとどうしたものかと考え込むと、ユーリを横目で見やって口を開く。


「それで――なんだ、さっきの、呪文みたいなのは」

「は?」

「なにか言っていただろう」

「あ、ああ―聞こえていましたか」


こんな夜更けに―何があった、と詰問されるかとユーリは少しだけ身構えていたので、ゲオルカが気にしたのが自分がなにげなく―彼にとっては『意味』はあったのだが―発した言葉だったことに些か驚いた。しかし、自分の思考に少し呆れて、ユーリは溜息をつく。

彼は、『何があった』など聞く人間ではない。そんなことは重々承知しているはずなのに。

それが気を利かせているのか、それとも本当にどうでもいいのか、ユーリの心の変化にさえ気付いていないのか―これは彼に限って有り得なかったが―ユーリには解りかねた。ただ、ゲオルカは自分の臣下の様子がおかしかろうと「何があった」と聞く人間ではなかっただけだ。

そしてユーリにとっては、彼が自分を探しに、ここに来てくれたことだけに意味があった。



「少しお勉強が足りないようですね」

「―――、」



やはりいつもより少しだけ様子の違ったユーリがからかうように言ったのを、ゲオルカは睨みつけた。

なにかをごまかすように冗談めいた口調は、ユーリの心境になにかあったときのみだと、彼は知っていた。わかりやすいユーリの言葉が、たちどころに煙のようにつかみ所のない、不安定な言葉に変わっていく。普段は取り立ててこういう腹の立つ喋り方はしない。別の意味で―生真面目すぎて―腹が立つことはもちろんあるが。



「冗談ですよ。さきほど私が唄ったのは遠い、違う惑星の歌です。先日書庫で面白い書物を見つけましてね。昔に他の惑星と交流を取っていたときのものでしょう。色々な歌が載っている本でした」



主の鋭い視線にあわてて説明し始めたユーリの言葉に、それほど興味のなさそうだった彼の目が僅かに輝く。


「……なんという歌だ」

「―実はその本があまりに古いものでして、題目などは全く解りません。誰が書いたのかも――しかし、意味は、―意味も書いてなかったのですけれど、なんとなく解る気がしますね」


なぜ解る、とゲオルカが無言で先を促すと、ユーリは僅かに口元を自嘲の笑みでゆがめた。


「なんとなく、なので。ただ―これを書いたひとはきっと、私のようだ、と思ったのです」

「お前みたいに小賢しく小うるさく小姑みたいな奴ということか」

「……あながち、間違ってないかもしれませんね」


思わぬユーリの切り返しにゲオルカはちょっと目を瞬いた。ユーリの態度がおかしいことなど、こんな時刻にこんなところにひとりでぼうっと座っていることから明らかだったが、やはりいつもの馬鹿真面目で、規則としきたりを重んじるユーリの言とは、ゲオルカでなくても思えないものだったのだ。



「おそらくですが、矛盾を唄った歌なんじゃないでしょうか」

「――矛盾?」

「はい。平穏な世を望んでいればこそ、激情に駆られ―そして激情をともなっているからこそ、世はこともなし――」



訳がわからない、という顔をしたゲオルカを見て、ユーリはちょっと勝ち誇ったようだった。わからないことが少し、嬉しいとでもいうように、ユーリは顔をほころばせた。それから少し読めない微笑を湛えていた顔をきっとひきしめると、まっすぐにゲオルカの目を捉えた。


「そうですね、折角の機会ですから書庫に戻って異文化を学びましょうか」

「…どうしてそうなる」

「それでなくても貴方は風情とか、趣ってものは全く理解しませんからね、たまには芸術方面に力もいれませんと」

「さて、くだらないことに時間をつぶしたな。帰って寝るか」


ユーリの言葉の途中でゲオルカは立ち上がった。それに倣ってユーリも腰を上げて、にっこりと続ける。


「授業数増やさなくてはなりませんね。王には私の方から言っておきますので」


げ、と苦い顔になりながらゲオルカはユーリを置いて歩き出した。それを追ってくる気配を背中で感じながら、ゲオルカはなんとなく物思いにふけっていた。それは面倒事がひとつ増えたという事ではなく――


―詩のような男だと思った。ユーリのことを、どこか儚げで、しかし意思はしっかりと強く。ぱっと見ればこいつほどわかりやすい男はいないだろうとも思うのに、傍によりそう時間が長くなるほどつかみどころのない、意味の汲み取りにくい人間へ変わっていく。まるで詩のように、それが元々決められていた、難解で、見るたびに違う意味を持った、詩のように。











―――――








いみわかんねえよ!とツッコミいれた貴方様は正しいです(にっこり)

だーかーらーもうユーリを書くのはやめろ!と自分に言いたい。いやしかし、若いゲオさまを書こうとするとユーリが出てきてしまうのです。えへ。ちなみにこれはゲオさま10代のころ―なんじゃないかな?(おい)ちょっと子供っぽく書きました。ので10代前半かしら。


出てきた歌は万葉集第四巻559(だったっけ)大伴百代の作品です。とりあえず、恋慕のうた(笑)

ユーリネタを妄想するときはなんでか詩とか俳句とか引用させたくなるんで…なんでだろう、唄わせたいのか(笑)



それにしても…眼鏡という単語が出てくると一気にムードが壊れますね。…ああ…


突発



++++++++++++++++++++++++++++++++++



「綺麗だな」


突然隣から響いた声色に、ヒースマは眉をひそめて不機嫌に振り向いた。


「何?」

「綺麗だ、と言ったんだ。どこにいても星の美しさは変わらないんだな」

「……」


不機嫌に眉を寄せて口を閉じていたヒースマの顔が、さらに苦虫を噛み潰したようなものに変わった。

アギは時々こうなる。普段は黙って空を見上げ、不必要なことのためには口を開かない男だ。
どこまでも黒い夜空を見上げて想うことは、きっと自責の念と隠し通せぬ慕情といまだ見えない未来――。
それなのに、時々こんな風に、何もかも諦めたような、すべてを放り投げてしまったような晴れやかな顔でこの惑星にやさしくなる。
ひっそりと咲くちいさな花に、まだ幾分か冷たさをまとう風に、少し寂しげな街の喧騒に、想いを寄せる。


そして故郷の空とは似ても似つかない、この星空を、後悔ややりきれなさとは違った感情で見上げるのだ。

そんなアギを見るたびに、決まってヒースマは「また始まった」と思いながら不機嫌になった。
なぜならアギがこの惑星に「やさしくなる」たび、彼のこころに隙が出来ているということに繋がるからだ。



道端の花の強さを褒めながら、自分の中の弱さに負けている。



「この惑星はまだ発展途上だ。自身を過信して、力を抑制することも知らない馬鹿共の所為で空気が悪い。
そんなやつらの作ったこの空が、僕らの星と同じくらい綺麗な訳ないだろう」


ヒースマの言葉に、振り仰いでいた顔をゆっくりと戻して、今度はアギが不機嫌に眉を寄せた。


「そういう意味で言ってるんじゃない」

「じゃぁ、どういう意味で言ってるんだ」

「どちらが綺麗だとか、それの所為であちらをないがしろにしているとか…そういうことじゃない。
ただ、どこにいても、どんな人間も、たとえ違う地面から見ても、綺麗と感じたものを僕は綺麗だと言いたかったんだ」

「…は、理想論だな。…お前らしくもない。それじゃぁどこかのロマンチストと同じ考えじゃないか。
この地面に存在しない僕らが綺麗だと感じても、それはまやかしだ。残らない。誰の心にも伝わらない」

「お前こそ、そういうのをこじつけと言うんだ。それこそ理想論になり得る。
…それでも、お前にならわかるだろう?ヒースマ」


少し悲しげに呟かれた自身の名は、予想以上にヒースマをイラっとさせた。
わからない訳ではない。だがわかりたくもない。わかったところでなんの意味もないと思うのだ。


「…お前もハスモダイのように、無責任に放り投げる気か」

「違う。…違う。そうじゃない…。それに彼は…放り投げようとしているんじゃない。
むしろ捨てられないから、拾い上げようとしてるんだ…」

「逃げることが拾い上げることか?間違ったものを拾い上げることと真実を放り投げることは何が違う。大した理論だな。アギ」


怒りが呆れを通り越してヒースマに微笑をもたらした。
同時に付け加えられた皮肉に、アギはなにより苦しそうに顔を歪める。
アギの表情がこういう風に動くのも、いつもなら決してありえない「こういう時」に限ってのことだ。
だからヒースマは、こういうときの彼を一種の「病気」あるいは「発作」のように思っていた。
しかし別段それを強制的にやめさせたいとも思ってはいなかった。


弱音を吐かれるのは何より嫌いだ。
けれども愚痴がなければやっていけないと言うのなら、それは仲間として聞くべきだとも思っていた。
どこかの誰かのように毎日弱気になられるのは心底御免だが、アギの「発作」は本当に稀だったのだ。
そして大抵、こういう会話でアギが納得したことも、ヒースマが説得されたこともない。
会話の終わりにはアギが誰ともなしに謝って、それからまた黙って空を見上げるだけだった。


そろそろその頃合だな、とヒースマは思った。
アギは無理やりにこちらの思考をねじまげようとも、駄々をこねることもしない。
きっと全てを理解していて、それでも言葉を紡ぎたくなってしまうのだろう。
だからこういう時の会話は別段波もなく、押し問答で終わる。傍から見たらなんの意味もないやりとりだが、
―事実ヒースマも意味のないものだと思っていたが―これはこれであるべきなのだろうと最近思い始めた。

しかしいつもと違ったのはアギが食い下がらなかったことにある。



「…美しいものを美しいと思うのは…罪か?」

「……?」

「自分の信念と違うものを受け入れるのは…悪だと思うか?」

「なにを言ってる」

「自分と違うものを認めない。この世界から認められていない僕らの方が悪だと…お前は思わないのか?」








飽きた。(最悪!)

つか、これ表に書いてもいい内容だった…
あとで表にうつすかもー。つーか表、更新とか無縁だなー…
そして思ったのですが、すんごい書き方が変わってしまいました…汗



裏の裏日記で突発的になぐりかいたやつでした。

えーとココ、更新しなすぎでアイタタ…それでも見てくださる方がいらっしゃるみたいで、ありがとうございます!!

ちなみになにがやりたかったかはよくわかりません…フィーリングなので。

※親世代過去編捏造です

うちの本を持ってくださってる方はできればそちらを先に読んだ方がいいかもです。

色々引用したり内容が繋がってる所があるので。つっても大したもんではありませぬ…

本のアトガキでやりたかった~と言ってたゲオレダ話。こんなんゲオルカじゃねぇよ…という感じですほんと















――――――――




―耳鳴りが

何年も前から鳴り止まなかったそれが、今、この瞬間にぷつりと途切れた。

同時に『何か』が途切れた。それは目の前のいのちか、それとも自分の人間としての感情か。




――――【Mebius】―――――





「もう、数時間の御身です」

「……ふ、やはり弱い女だ」

「……」

「全員下がらせろ」


主はそれだけ言って回廊を進んだ。

その声がほんの僅か震えているのを、従者は見逃すことができなかった。

家臣を誰一人その部屋に入らせたことはない。その場所へ、最後まで一人で向かおうとしている。

傲慢で、自己顕示欲に溢れ、冷淡で、残虐な主。だからこそ本物の王ではなく、彼に仕えてきた。

揺ぎ無い瞳は自信に満ち溢れ、崩れることを知らない。だからこそ故郷に背く事になろうと、全員が全員、彼の後を追ったのだ。


そしてこの船に乗った誰もが知っている。 ――彼が誰より弱い人間であること。


辞儀をしたまま主の後姿を見送り、顔を上げたころにはもう、その姿はなかった。

一介の臣下の自分には、彼の本当の感情など解るはずもない。

本当は愛していたのかもしれないし。本当に愛していなかったのかもしれない。


ただ。―ただ、彼の震えた声色からは、悲しみより怒りを、強い怒りを感じた。



―――――――――



暗い室内、広い部屋、簡素な家具、冷えた空気。

ここはこんなにも寒かっただろうか。誰にもこの場所を任せていないから、空調設備がおかしくなっているのかもしれない。

大きな展望用の窓が目に入った。あの女が、よくそこの椅子に腰掛けながら宇宙(そら)を見下ろしていた、窓。

飽きもせず宇宙を見ては涙を流していた。―それしかすることがなかったのだろう。知っていた。自分がそう仕向けたのだから。


流れた涙は床に弾け落ち、吸い込まれ、あの銀河へと還ったのだろうか。


部屋の端にある大きなベッドに近寄ると、乱れた髪をシーツに散らして、真っ白な肢体が横たわっていた。

虚ろな青の瞳で天井を仰ぎ、呼吸を繰り返すそれは、美しく、儚く、そして脆く醜い。

―”死にぞこないが”―、そんな言葉が喉を込み上げた。もう自分の口からは、誰かを傷つける台詞しか出ないようになっている。


「……レダ」


声をかけると、青い瞳が僅かに揺れた。

こちらは見ずに唇だけがゆっくりと、ちいさく開かれる。


「これで…満足、ですか…」

「……ああ」


ゲオルカがく、と喉を鳴らし僅かに口元を吊り上げると、それは微笑となった。

見ていて気持ちの良い微笑ではない。いやらしい、見下した笑みだ。

人の神経を逆撫でするはずのそれが、今はむしろ懐かしく、レダを安心させる。

それはその笑みが、いつもとほんの少し違っているからだろうか。


「私が逝っても…貴方はなにも変わりませんね」


声が掠れた。全身がだるくて、もう自分の意思で自由に動かせるのは唇のみだ。

何かを伝えることの出来る最後の器官で言葉を交わすのは、誰より憎んだ目の前の男。

人の生とはなんと滑稽なものだと、レダは穏やかに思う。


最後に本音を言って欲しいなどとは思っていない。この男の本音など、あるのかどうかも解らない。

だからこちらも―最後まで本音は言わないつもりだ。


「そうだな。お前が死んでも何も変わらん」

「…貴方にデュマを頼んで逝くのは…本当に心残りです」

「つれないことを言うな…儂なりに愛情を注いでいる」

「その方向が捻じ曲がっていることがお解りなのに…ですね」

「………」

「どうして、嘘をついたのですか…利用できると、お思いに?」


(共にギリシアを変えよう)


彼の言葉が本物かどうかは自分にとって、大した問題ではなかった。

ただ手を取る以外に選択肢がなかったのだ。他にあったたくさんの道は、全てこの青い瞳にかき消されてしまった。

嘘かもしれない、と思った。ギリシアを奪うことしか頭にないこの男が、嘘をつかない訳がないと。

―それでも、良かった。今、目の前にあるのは濁った青。それでも。


「――兄上のモノは全て奪う。それだけだ。その延長でお前に利用価値があるのなら、それはそれで好都合だったがな。…それにあながち嘘でもない。タイタスは外乱を望んでいた。―自分の、ギリシアの力を過信してな」

「そう…ですか」


安堵した。

彼が嘘をついていたこと

兄から自分を奪おうとしたこと

たとえそれが自分への想いからでなくとも

自分が利用価値がある女として連れてこられたのだとしても


それが”『彼』らしい”と思ったから。


(本当に…だめな女)


解っていながら騙され、解っていながら愛され、解っていながら傷つけた


(デュマ……)


どうしても心残りなのは、まだ幼すぎる我が子のこと。

何年も前に同じようにまだ幼すぎた娘を手放した。

その時の後悔を決して二度とは感じないように、あの子のちいさなてのひらを放さないと、誓ったのに。

弱すぎた。自分が出来るのは、我が子の幸せを祈ることだけ。―なんて、なんて身勝手な祈り。

そして自分は、生涯を賭けて欲した青い瞳に殺される。―なんて、なんて贅沢な願い。

せめて、自分の死の所為で、彼の矛先が息子に向かうことのないように――


誰よりも前を向き、何よりも光を湛えたあの青年を想って逝けることは、自分にとって幸なのか不幸なのか

幸せだったと言える生ではなかった。―でも、不幸だったと言って死ぬことはできない。


あまりにも悔しいのだ。彼には最後くらい、最大の嫌味を言ってやりたい。



「…ゲオルカ」

「なんだ」

「老けましたね」

「…お前もな」

「貴方は本当に…いつまで経ってもお兄ちゃん子だこと」

「…なんだと?」

「――…ゲオルカ…」


これできっと、名を呼ぶのは最後だ。

この何もない部屋から宇宙を見下ろすときより

我が子のぬくもりを腕に感じられないときより


哀しくも、辛くも、悲しくも、哀しくも―ない


ただ、最後まで胸が焦がれた。



「私は…しあわせ、でした…」

「―――、」


ゲオルカが目を瞠った。大きく目を見開き、唇を噛み締める。

肩がぶるぶると震えた。怒りのような感情が体中を侵食していく。

―怒り?悲しみでもなく、喜びでもなく、胸を焼く、掻きむしりたくなるような衝動。

最後まで、この女はこちらの意思に従順ではない。「しあわせだった」など―


一番聞きたくない台詞を。


こくりと息を飲み込み、押さえ込んだ怒りのまま、低く口を開いた。


「レダ。――死ぬのか」

「は…い」

「悔しくは…ないのか」

「貴方を…悔しがらせましたから、じゅう…ぶん」

「お前が死んだからと言って、儂は泣きも悲しみもせぬ」

「それでも…悔しい、でしょう…」


最後の力でふわりと微笑む。うまく笑えただろうか。

心からの微笑に見えただろうか。そうであれば自分の勝ちだ。


「―お前みたいな、女。死んでしまえばいい」

「……」

「強情で、口うるさくて、目障りで―」

「『女は従順なのが一番いい』…でしたっけ」

「―――、」

「それならわたし、『わたし』でよか…っ」


声が出なかった。ずっとぼやけていた視界が、一面真っ黒に染まってしまう。

彼への最後の復讐は、自分が死ぬことで成し遂げられただろうか。

誰より愛していたから、誰より憎んでいたから


―最後まで彼にとって『めざわりな存在』で居たかった―



「……レダ」


しん、とした室内に低い声が響く。

―耳鳴りが、途切れた。自分を纏っていた雑音のようなもの、それが、ぷつりと。

それが消えると、急速に世界は冷えていった。こんなにも"音"の存在しない世界があったのか。


「レダ」


縋りたい訳でもない。認めたくない訳でもない。

目の前の存在が、今ここにある白い体が、もういないことなど理解している。

せいせいした。どうでもよかった。くだらなかった。

―早くいなくなって欲しかった。目の前から消えて欲しかった。


利用できるならしてやろうと思ったのも本当だ

自分の女だったからでなく、『タイタスの女』だったから奪い返したかったのも本当だ

ギリシアに、王に背くことの自分の罪の重さを思い知らせてやりたかったのも

怖いもの知らずなお嬢さんを、悪の色で汚してやりたかったのも


全て本当だ


―だが


「…レダ…っ」


力を失った身体を強引に揺さぶった。

触れた手がひやりと冷たい。だらりと腕が落ちて、強張ったまま肌が白から青へと変わる。


死とは、いつからが死なのだろうか

声が出なくなったとき、意識がとぎれたとき、呼吸が止まったとき―?

身体が灰になりつくしたとき、土に埋められたとき、花をそえられたとき―?


それとも、自分が彼女の存在を忘れたとき、だろうか


(私は…しあわせ、でした…)


「ふざけた女だ…」


この期に及んで「しあわせだった」と言う


ゲオルカの喉に、じわじわと抑えきれない怒りが込み上げた。

ひどく苛つく。怒りで胸が焼けて気持ちが悪い。悲しみなどこれっぽっちも湧かない。ただ、狂いそうな怒り。


「ふざけおって…っ!」


素早く腰の剣を抜くと、寝台横の花瓶に振りかざした。甲高い音を立ててそれが割れる。

床と目の前の遺体に破片が散らばり、それを確認する前に今度は寝台の天幕を引き裂く。

布のちぎれる音が耳に不快で、それさえも怒りを増幅した。あまりに苛立って、嗚咽が込み上げそうだ。


「最後まで気に食わぬ奴だ…!」


荒い息で見下ろすと、その死に顔は驚くほど安らかだった。

―ほんとうに、ほんとうに未練も無く幸せを感じたまま逝ったと――?


嘘に決まっている。そんなことがある訳がない。


この女に対する愛など、とうの昔に崩れ去った。

愛していたかどうかも解らぬ、ぼやけた感情だ。

ただ、兄を憎む上での良い材料だった。

どうして連れてきたかも、今聞かれれば「奪ってやりたかったから」。


特別な存在ではなかった。


自分にとって特別なのは、自分と、兄と、ギリシアだけだ。



「…『女は従順なのが一番良い』か…」


確かに愛した少女だったはずの女性。その頬に触れる。

白い肌。しかし病のためその艶は見る影も無く、それに触れた自分の指も節くれたものだ。

言われて思い出した。それは昔、自分が言った言葉だった。あんな昔に言った言葉を。

それと同時に、確かにあった穏やかな日々が走馬灯のように蘇る。


自分にとっての全ては『今』だ。

過去など、想像の産物と相違ない。

だからいくら過去が輝かしかろうと、美しかろうと、自分にとっては何の意味もなかった。

過去に確かに愛し合ったことがあったとしても、『今』の自分にとってこの女は、『意味の無いもの』。

時を待たずして、この死さえも意味の無い過去になり果てる。その時、自分は――


「…ばかな女だ」


ちいさく呟いた。

誰にも聴こえないその囁きには、僅かに昔の優しさが含まれていること、ゲオルカ本人にも、誰にもわからない。


耳鳴りが途切れた。

凪いだ海のように静かで、なんの波も感じない。

ただ、なにかどうしようもできない憤りだけがじわじわと燻っている。


この怒りが消えたとき、目の前の死を過去として葬り去ったとき、


その時、自分は―――


「ばかな女だ……」



再び呟きながら、くるりと踵を返した。

剣を鞘に戻しながら扉へと向かい、振り向かずに部屋を後にする。


物音一つしなくなった部屋で、物を言わぬ女性の睫毛が涙で濡れていたことを知る者は



誰もいなかった







END













――――――――









…ここまで読んでくださり有難うございます。

捏造…はい。ほんと捏造なんですうちのゲオさまは(笑)

ちょっと途中で間が空いてしまったので前半と後半で言いたいことが食い違っているような…。汗

もういろいろこっぱずかしいんで説明はしませ…未熟でごめんなさい(凹)

次はユーリを書きたいな~…とか。(だからオリキャラ補完はやめろ…


ベフォとかセスとかも書きますよ。とっぱつてきに。


あーっとゲオさま本の補足(こんなとこで書いてもな…

外伝―Deep Blue―で、ゲオさまが外乱云々言っておりますがあれはもちろん嘘です…

で、えーとレダさまも嘘だと解ってはいます。その辺がごそっと抜けてしまって…(汗)

まぁ書かなくても訳がわからないほどではないですが、あれだとゲオさまが良い人じゃん…みたいな

基本的にうちのゲオさまは純粋だけど「いいひと」では決してないので(滝汗)

こずるいことは平気でやります。むしろそれが当たり前だと思ってます

三人で暮らそうだとかほざいてますがそんなことは欠片にも思ってません

つーかこれやっぱ書かないと駄目だったよね…うわーん時間足りなか…っ


ここ読んでくれるひともきっといるかどうかだし…まぁ、えーと懺悔てことで。