スーパー歌舞伎

三代猿之助四十八撰の内

 ヤマトタケル

第三幕



尾張の国造の家
~伊吹山
~能煩野(のぼの)への道
能煩野の民家
~志貫の里~エピローグ

主な配役

小碓命<ヤマトタケル>

…市川團子


兄橘姫(えたちばなひめ)

…中村米吉


帝…市川中車


タケヒコ…中村福之助


ヘタルベ…中村歌之助

尾張の国造…中村錦之助

国造の妻…市川笑也

みやず姫…市川笑野

山神…市川猿弥

姥神…市川門之助

帝の使者…市川青虎


伊吹山の鬼たちの討伐を

命じられた、ヤマトタケル一行。


尾張の国造の家に立ち寄り、

勧められるままに

娘のみやず姫を妻にめとります。


(前の場面で、

弟橘姫の哀れな最期を

見送ったばかりなのに…

当時、この身分では一夫多妻

とは言え、あまりなこと!

と思う観客は私だけではないはず。


しかし、みやず姫の元に、

大切な草薙の剣を置いてきたことが

命取りになるわけです。)


伊吹山では、山神、姥神が

力を振り絞って応戦。


この場の猿弥丈、門之助丈、

尾張の錦之助丈、笑也丈、

倭姫の笑三郎丈など、

三代目猿之助からの演者たちが

厚みを持たせています。



伊吹山で深手の傷を負った

ヤマトタケルは、

大和に向かって道を進めます。


能煩野の地で

命の終りを迎えるまで、

これまでを振り返り、

自問自答を繰り返します。



哲学者でもある

原作者梅原猛氏が

最も描きたかったのは、

このヤマトタケルの苦悩では

なかったかと思います。


人はいかに生きるのか、

いかに死んでいくのか…



草薙の剣を置いてきたことを

悔やみながら死ぬ、

ヤマトタケル。


哀れであるとともに、

悟りきれない人間くささを

感じました。


まだ若い團子さん。

この件は今後上演を重ね、

深みを増していくことでしょう。



白い鳥となって飛び立つ

ヤマトタケル。

清々しい姿でした。

エピローグでは、
演者全員が登場。
(これもスーパー歌舞伎の
楽しいところ。)


最後には、ヤマトタケルも登場し、
父帝の手を取り、
長く長くひざまずきます。



亡くなった三代目猿之助丈、
段四郎丈のこと…

当代猿之助丈のこと…

中車、團子親子、
そしておもだか屋の
来し方行く末…

思いがいっぱいになりました。