「堀川波の鼓」は、
近松門左衛門作の浄瑠璃、
「堀川波鼓(ほりかわなみのつづみ)」
を原作として歌舞伎化された作品。
歌舞伎の初演が大正3年と比較的新しく、
古典というよりも、「新歌舞伎」の趣を
持った作品と言われています。
上方を舞台とした近松作品ということで、
上演は今回の片岡仁左衛門丈や、
先年お亡くなった坂田藤十郎丈などの
上方枠の役者によることがほとんどです。
劇場も大阪や京都などでの上演が多く、
有名な作品にもかかわらず、
これまで見たことがありませんでした。
今回、「歌舞伎オンデマンド・ミレール」
にて、大阪松竹座公演の配信があり、
視聴することができました。
〈あらすじ〉
小倉彦九郎は、殿の参勤交代に付き添い、
隔年の江戸詰めを余儀なくされていました。
そんな離れている時間の多い夫を
妻お種はとても恋しく思っています。
お種は、実の弟文六にこのほど
鼓を習わせていました。
彦九郎が不在のなか、
お種は鼓の師匠である宮地源右衛門と
ふとしたきっかけで関係を結んでしまいます。
その噂が広く知れ渡ってしまい、
彦九郎の妹おゆらや、お種の妹お藤らが
なんとかしようとお種のために腐心します。
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉
不義密通は死罪と決まっていた
時代の出来事。
しかしながら
登場人物一人一人が、個性的。
キャラクターが立っています。
小倉彦九郎
鳥取藩士。
殿の参勤交代に付き従い、
1年置きの江戸詰め。
地元にいるときも、
毎日の城詰め、月に10日の宿直だそう。
彦九郎の妻、お種
もともと酒好きでしたが、
彦九郎不在の寂しさを紛らすように
酒に溺れます。
それが仇となり、ふとしたはずみで
鼓の師匠と不義の仲になり懐妊。
お種の妹、お藤
姉のように結婚はしておらず、
武家奉公の身。
姉が夫から離縁されれば
死罪から逃れられると考え、
彦九郎に迫ります。
文六
お種の実の弟。
子どものいない彦九郎お種夫妻の
養子になっています。
鼓の師匠、宮地源右衛門
文六の稽古の後、
お種に勧められるまま盃を重ね、
はずみでお種と関係。
磯部床右衛門
彦九郎の同輩。
お種に横恋慕しており、
仮病を理由に江戸へは行かず、
お種に付け入る隙を狙っている。
お種に付きまとい、
不義の証拠を入手し、
恋の意趣返しから噂を広めます。
小倉彦九郎の妹おゆら
義理の姉お種の噂が広まり、
婚家を離縁される。
兄嫁を成敗すれば復縁と言われ、
長刀を手にして
小倉家に乗り込んで来ます。