坊主の法澤は、村に住む老婆お三からある秘密を聞かされます。実はお三の亡くなった孫は八代将軍徳川吉宗の子で、証拠の品もあるというのです。話を聞いた法澤の脳裏に浮かび上がる壮大な企て…。
老婆を手にかけ、将軍・吉宗の子になりすました法澤は、関白家の元家臣で才知に長けた山内伊賀亮を味方に引き入れると、名前を天一坊と改め、将軍のいる江戸に乗り込みます。
この天一坊を詮議するのは、名奉行として名高い大岡越前守。しかし、越前守をもってしても天一坊の正体は明らかになりません。果たして裁きの行く末やいかに――。
初代神田伯山が得意とした人気の講談を元に
河竹黙阿弥が書き下ろした本作は、
「天一坊事件」という天下を揺るがした
実在の大事件が題材です。
名奉行として知られ庶民の人気を集めた大岡越前守、
稀代の企みの首謀者として悪の魅力を放つ天一坊、
その知性を活かし参謀として天一坊を支える伊賀亮
といった印象的な登場人物が活躍します。
将軍の落とし子として振舞う高貴な雰囲気から一変、
悪の本性を現す天一坊や、
鮮やかに悪事を暴く越前守の名裁きは必見。
越前守と伊賀亮が対峙し緊迫した空気のなか
繰り広げられる問答の場面は
黙阿弥らしい流麗なせりふで聴かせます。
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉
同世代である
松緑、愛之助、猿之助の共演は珍しいです。
この演目自体も
あまり上演されるものではないので、
皆で作り上げたと聞いています。
猿之助の天一坊の
濁った感じのふてぶてしさ、
不気味さは、また新たな境地。