八月花形歌舞伎「真景累ヶ淵」視聴。
真景累ヶ淵ー豊志賀の死
(しんけいかさねがふちーとよしがのし)
〈あらすじ〉
富本節の師匠・豊志賀は、20歳ほど年の離れた
弟子の新吉と恋仲となりますが、
顔に腫れ物ができる病にかかり、
醜さを増す自分に焦りと不安を募らせます。
新吉と若い娘お久の仲を勘ぐっては嫉妬に狂い、
豊志賀の病は重くなるばかり。
一方、その看病に疲れ果てた新吉は、
お久と逃げる決心をしますが、
そのとき、燭台の灯りがフッと消え…。
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉
原作は、江戸から明治にかけて活躍した
名人、三遊亭園朝の人情噺「真景累ヶ淵」。
その長い因果話の中から、
若い男に執着する女の哀れと凄みにあふれる
「豊志賀の死」の件を独立させたのが本作品。
新吉は中村屋の部屋子である、鶴松。
この役は、鶴松の師匠である
十八代目勘三郎も演じていました。
その役を演じるのは、大抜擢。
豊志賀は、七之助。
病気になるまでは、
美しかったのであろうと思わせます。
病の床で、新吉には
甘えてしなだれかかり、
お久には凄んで見せるさまは、
迫力があります。
お久は児太郎。
こういうけなげな娘役も
よく似合います。
しかしながら、いつの日か
豊志賀の役も手掛けることでしょう。
新吉の伯父勘蔵は、扇雀。
本来は美しい女方の扇雀丈、
ちょっともったいない気がしますが、
さすがに舞台が締まります。
* * * * * * * * * * *
怪談話と言うことで、舞台には
豊志賀の幽霊が登場します。
しかし幽霊より怖いのは、
実は人間であり、
その怖さの根源は、怖いと思う心にある⋅⋅⋅
ということがテーマのひとつのようです。
(「真景」とは実は、神経なのだそう。)
そういう眼で見ると、嫉妬心から思い詰め、
命を落とすことになった豊志賀は哀れです。
また、師匠に対してたった一度でも、
裏切りの気持ちを持った新吉は、
ずっと引け目を抱いていくことでしょう。