歌舞伎座四月大歌舞伎「小鍛冶」。

歌舞伎オンデマンドにて視聴。

 

市川猿之助、中車の二人が、

家の芸「猿翁十種」の「小鍛冶」

を演じます。

 

〈あらすじ〉

当代随一の刀匠・三條小鍛冶宗近のもとへ、

帝からの勅使・橘道成が訪れ、

御剣を献上するように命じます。

宗近は、神仏のご加護を得ようと

氏神の稲荷明神に祈りを捧げるところへ、

忽然と気高い童子が現れ出でて…。
平安時代に実在した名匠が、

名刀「小狐丸」を打つ伝説を描いた作品。

前半は童子が放つ神秘性、

後半は稲荷明神の荘重さ、

リズミカルな槌音に合わせ

刀剣がつくられていく動きなど

みどころにあふれます。

世の禍を鎮める霊力をもつとされ、

時を超えて重宝される御剣。

能『小鍛冶』を題材に

初世猿翁(二世猿之助)が初演した

澤瀉屋の家の芸

「猿翁十種」のひとつに数えられる舞踊劇。

〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉

 

「小鍛冶」は元は能の演目ですが、

後に文楽や歌舞伎でも

演じられるようになりました。

 

 

二代目市川猿之助(初代猿翁)が、

1939(昭和14年)に初演したものが本作。

 

作者は木村富子。

彼女は従兄である猿之助のために、

他に「黒塚」、「独楽」、

「酔奴」、「蚤取男」など

多くの舞踊劇を書きました。

 

 

本作は義太夫による舞踊劇であり、

演者は基本、言葉を発せず、

台詞は義太夫によって語られます。

 

本来は文楽座の演奏なのだそうですが、

コロナ禍において出演が難しく、

今回は歌舞伎の竹本による演奏です。

 

 

 
今回の配役。
 
勅使橘道成として、市川左團次丈。
久々にお姿を拝見しました。
 
間狂言に工夫を凝らし、
巫女と弟子の男女4人が踊ります。
(チラシに名前がありませんが、
猿三郎丈が加わります。)
 
 
三條小鍛冶宗近の、市川中車丈。
立ち居振舞い、
白塗りの化粧をした顔立ちも、
凛として見えます。
 
歌舞伎役者デビューからここまで⋅⋅⋅
と感慨深いものがあります。
 
 
童子実は稲荷明神の、市川猿之助丈。
前段の童子は、大人ではない、
しかしただの子どもでもない、
性別さえも越えているような
不思議な存在。
 
後段の稲荷明神は、
獅子物のような姿に、
時折見せる狐の仕草。
 
キッと口を開くと、
金色の歯が覗き、神秘的な印象です。
(この金歯は
どうなっているのだろう?)
 
 
宗近と稲荷明神が
槌を打ち合い、
名刀を作り上げる場面。
 
互いの槌音が、
快い音楽のように響きます。
 
(この音を出す小道具は、
何を使っているのでしょう?)
 
 
 
劇場で実際に、この雰囲気を
味わってみたかったと思います。
 
猿之助丈は今回が初演ですので、
今後もさらに練り上げて
再演してくれることと思います。
 
その頃には、
気兼ねなく劇場に行ける日々に
なっていますよう⋅⋅⋅
 
 
 
「小鍛冶」の舞台写真、
手持ちの「演劇界 増刊号」にありました。
稲荷明神は、先代猿之助(現・猿翁)、
宗近は、市川段四郎。
 
今回の猿之助、中車それぞれの父親が、
(配役は逆ですが)演じているわけです。