「菅原伝授手習鑑」②
影のキャラクター編。


今月初めに観劇した「菅原伝授手習鑑」。

特に普段あまり上演されない
「筆法伝授」、「道明寺」では、
主要な人物の他に、
こんな登場人物がいたのか⋅⋅⋅
という再発見もありました。


「筆法伝授」では、左中弁希世
菅丞相の弟子、貴族風の名前と身なりです。

自分こそ
丞相の一番弟子だと思っているようですが、
腰元にしなだれかかるなど品行が良くなく、
丞相の信頼は得ていないようです。

武部源蔵が筆法伝授の候補と聞いて、
散々邪魔をします。
その方法が幼児的で、笑いをとります。

無事、筆法伝授された源蔵から
伝授の一巻を奪おうとするところを
取り押さえられ、
机に縛り付けられます。
これは、寺子屋で悪さをする子どもへの
お仕置きと同じだそう。

市村橘太郎さんの左中弁希世
愛嬌を抑えつつ、ツンツンした感じ。
体のキレも良い方なので、
源蔵の邪魔をする所も、
鮮やかに見せています。

(舞台写真は、前回1995年に観劇のときのものです。)



「道明寺」
土師兵衛宿禰太郎親子。

道明寺のある土地は、
「土師ノ里」と言われます。
土師兵衛はこの土地の有力者のようです。

息子の宿禰太郎は、
覚寿の長女、立田の前の夫。

逗留している菅丞相を、
偽迎えによってかどわかすため、
鶏を使って悪事を画策。

この場面は、「東天紅」と言いますが、
東天紅とは鶏の鳴き声を表しているそう。

この鶏の小道具、
土師兵衛宿禰太郎の役者さんが
手元で操作しているようですが、
なかなかリアルに動き、
客席のクスクス笑いを誘います。

悪巧みを立田の前に気付かれてしまい、
兵衛の目配せにより、太郎は立田を惨殺。
妻を刺し殺すことに
一瞬の迷いはあったようですが、
父の命令が優先。
後先を考えない人物なのかもしれません。

結局、立田の前が死の間際に噛み切った
太郎の着物の裾から犯行が明らかになり、
義母覚寿に刺されて最期を遂げます。

今回の宿禰太郎は坂東彌十郎さん。
ひときわ大柄、とぼけた味もありました。


(このときは、土師兵衛は先代の河原崎権十郎丈。
宿禰太郎は市川段四郎丈。)



奴宅内
覚寿の館に仕える奴の一人。
他の多くの奴たちと共に登場。

池にもぐって
様子を見てくる役を押し付けられたり⋅⋅⋅
池の底に沈んでいた、
立田の前の遺体を引き上げたことから、
疑いを持たれたり⋅⋅⋅と散々です。

中村勘九郎さん、
ぱっと華やかです。

最後は花道を退散、
着物が脱げてしまい、
締まった肉体美を惜しみなく。

見ている途中、この役は
父勘三郎さんでも見たことを思い出し、
懐かしい気持ちになりました。

1995(平成7)年、
当時はまだ前名の勘九郎でした。
あのときの勘三郎さんと、今の勘九郎さん、
もうあまり年齢も変わらないですね。

当時の勘九郎さん。
取り押さえているのは、
助五郎さんと四郎五郎さん。
懐かしい!