新橋演舞場で上演されている、
スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」。

小栗判官と照手姫を主人公とした物語は、
これまで、脈々と受け継がれてきました。

〈「説経節」の小栗判官伝説〉
気ままな振る舞いの果てに、
照手姫という美貌の姫と結ばれた小栗判官。
照手姫の一門によって殺され地獄へ落ちます。
閻魔大王の裁きにより、
餓鬼阿弥という姿になり蘇生します。
「熊野の湯に入れば、元の姿に戻れる」との
閻魔大王からの言葉によって、
小車に乗せられ、多くの人の手によって
熊野を目指します。
やはり落ちぶれた身分となった照手姫は、
小栗判官とは知らず、小車を引きます。
やがて、熊野にたどり着き、
湯治の末、元の姿に立ち返り、
照手姫と再会します。

「説経節」というのは、
仏教の教えを分かりやすく説いた、
中世における語りもの。

この「説経節」の小栗判官の物語をテーマに、
歌舞伎でも繰り返し、上演が行われてきました。


私が観劇した、歌舞伎の「小栗判官」。

當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)
先代猿之助が定めた、
『猿之助四十八撰』に数えられる演目のひとつ。

私が観劇したのは、2011年10月、
猿之助襲名を翌年に控えた、市川亀治郎の小栗判官。
照手姫は市川笑也。


遊行上人によって復活した
小栗判官と修行僧たちの喜びの群舞。
そして、白い天馬に乗った
小栗判官と照手姫の宙乗りが印象的。

亀治郎は他に、小栗判官の忠臣浪七と、
青墓の長者の娘お駒を演じました。
浪七の壮絶な最期、
お駒の初々しさと打って変わった怨念。
猿之助襲名前直前の勢いが感じられる舞台でした。



「通し狂言 世界花小栗判官」
こちらは2018年、国立劇場での
菊五郎劇団の、恒例お正月公演でした。
小栗判官の筋に、
盗賊風間八郎と、
足利家の執権細川政元の対決を絡めた物語。

菊之助の小栗判官は、輝くばかりの美しさ。
照手姫は尾上右近、古風で芯の強そうな風情。
浪七は松緑、一本気な持ち味が生きていました。