降りみ降らずみ、
梅雨らしい天気の今日は、読書を。

大正時代、
東京青山の地にある「帝国脳病院」。
7つの塔を持つ、白亜の宮殿。
一代でこの病院を作り上げた、
楡基一郎(にれきいちろう)。
そして、その家族や
病院に集う人々を描いた物語。
ずっと以前に読み、夢中になった本。
再度読んでみて、
全く色褪せず生き生きと感じました。
この物語の始まりは、
今からおよそ100年前、大正7(1918)年。
原敬が総理大臣になり、
第一次世界大戦が終結した年。
そして、大正12年に起きた関東大震災。
病院は倒壊を免れますが、
小田原の地で震災にあい、
命からがら病院にたどり着いた
基一郎の描写が生々しい。
大正13年には失火により病院を焼失。
失意から立ち直った基一郎は、
新しい土地に病院を建てる構想を
実現する半ばで急逝。
⋅⋅⋅こういった流れの中で、
基一郎の3人の娘、
龍子、聖子、桃子たちの物語。
悲喜こもごもです。
楡家は特別な家族なのかもしれませんが、
家族の普遍的なあり方は今も変わらない、
ということも考えさせられました。
この物語は、
作者北杜夫の家族をモデルに
書かれたそうです。
「帝国脳病院」は、
実際には「青山脳病院」として
現在の南青山5丁目の地に実在したそう。
北杜夫の父、斎藤茂吉は
この作中では楡徹吉。
基一郎の養子であり、
後に龍子の夫となります。
斎藤茂吉と言えば、
アララギ派の歌人として有名ですが、
精神科医としても、義父の後を継ぎ、
病院の経営に尽力したそう。
今回読んだのは、第一部、大正時代編。
まだ読んでいませんが、
第二次世界大戦後を描いた、
第三部まであるそうです。