かつて、平成の「三之助」と呼ばれた3人。

〈「ノーサイド」(1996年6月号)表紙〉
尾上菊之助、市川新之助(現⋅海老蔵)、尾上辰之助(現⋅松緑)
当時、菊之助・新之助は二十歳前、
辰之助は21歳くらいでしょう。
私が歌舞伎を見始めたのは
昭和の最後、そして平成の始め頃。
その頃彼らはまだ小中学生。
歌舞伎の舞台では
ほとんど見ることはありませんでした。
そして、上記の雑誌が発売された頃
(1996(平成8)年5月)、歌舞伎において
菊之助襲名披露公演が行われていました。
その月の筋書が手元にあるのですが、
肝心の襲名披露演目を見た覚えが全くありません。
おそらく⋅⋅⋅他の演目だけを幕見で見て、
後は帰ってしまったのかもです。
ひねくれ者でした、私。
そんな私ですが、
今回、この3人が同じ舞台に立つということに、
深い感慨を覚えました。
海老蔵弁慶、
松緑富樫、
菊之助義経。
舞台に並んだ、三幅対とも言える姿。
新しい令和という時代を迎え、
この3人がこれからの歌舞伎を担う
中心になってほしい、
そうでなくては困ると強く願いました。
海老蔵丈の弁慶。
発声も動きも、癖のあるところはなく、
すんなりと見ることができました。
後は恵まれた姿形に、
思いをどのように込めていくのか、
期待します。
松緑丈の富樫。
義経一行と知りながら見逃す、
気持ちの大きさがありました。
どちらかというと、自分が前に出るより、
弁慶を受け止めるように演じていたようです。
菊之助丈の義経。
思いの外、骨太な印象。
それは姿形についてではなく、
武将として一行を率いる立場
ということを感じたからだと思います。
(近年の菊之助丈は立役志向で、
いずれは弁慶すら演じてしまいそうな勢い。)