写真は、雑誌「ノーサイド」(1996年6月号)より。
* * * * * * * * * * *
尾上菊之助丈の「京鹿子娘道成寺」、
備忘録続き。
『恋の手習い』
手拭いをくわえての有名な振り。
そして、恋する相手が
あたかもそこにいるように踊るという口伝。
もちろん満開の花のような美しさですが、
意外とあっさりして見えたのは、
端正さ、清潔感といった、
菊之助丈の芸の持ち味なのかも。
『山尽くし』
羯鼓(かっこ)という、
鼓のような楽器を胸につけ、
撥で鳴らしながら踊ります。
決まり決まりの型も美しく、
引き込まれました。
途中で端折ってしまう上演も多いのですが、
今回はすべて丁寧に。
〽祈り北山 稲荷山⋅⋅⋅の部分では、
狐のような振りから、
後ろ向きに海老反りになります。
ここでは、鬼気迫るものを感じました。
気持ち(鐘に対する恨み)と、
技術が揃ったすばらしい踊りでした。
『手踊り』
〽ただ頼め⋅⋅⋅
ここは可愛らしい振りがついており、
幼い女の子の心持ちで踊るところ。
先代芝翫丈や、
映像で見た祖父尾上梅幸丈では、
あどけない女の子のようでした。
今回の菊之助丈は、
もう少し年かさの若い娘といった雰囲気。
ここは、桜の衣裳から離れて、
紫色の町娘風の着付け。
そこから「引き抜き」で、白の衣裳へ。
『鈴太鼓』
躍動感のある踊り。
鈴太鼓を打ち合わせ、
床に打ち付けて踊るうち、
鐘に対する恨みの念が現れ⋅⋅⋅
そこから『鐘入り』までは、
もう、一気に⋅⋅⋅
鐘に上がり見得を切る姿は、
神々しく見えました。
心、技ともに揃った、
充実の「京鹿子娘道成寺」。
まだまだ見ていたい、
また見に行きたい、
⋅⋅⋅そんな舞台でした。