尾上梅幸、菊五郎、菊之助(当時は丑之助)、
親子三代で踊った、「京鹿子娘三人道成寺」。

平成4(1992)年歌舞伎座にて。
尾上菊之助丈の「京鹿子娘道成寺」の
ルーツとも言えます。

写真は、雑誌「ノーサイド」(1996年6月号)より。

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尾上菊之助丈の「京鹿子娘道成寺」、
備忘録続き。

『恋の手習い』
手拭いをくわえての有名な振り。
そして、恋する相手が
あたかもそこにいるように踊るという口伝。

もちろん満開の花のような美しさですが、
意外とあっさりして見えたのは、
端正さ、清潔感といった、
菊之助丈の芸の持ち味なのかも。


『山尽くし』
羯鼓(かっこ)という、
鼓のような楽器を胸につけ、
撥で鳴らしながら踊ります。

決まり決まりの型も美しく、
引き込まれました。

途中で端折ってしまう上演も多いのですが、
今回はすべて丁寧に。

〽祈り北山 稲荷山⋅⋅⋅の部分では、
狐のような振りから、
後ろ向きに海老反りになります。
ここでは、鬼気迫るものを感じました。

気持ち(鐘に対する恨み)と、
技術が揃ったすばらしい踊りでした。


『手踊り』
〽ただ頼め⋅⋅⋅
ここは可愛らしい振りがついており、
幼い女の子の心持ちで踊るところ。

先代芝翫丈や、
映像で見た祖父尾上梅幸丈では、
あどけない女の子のようでした。

今回の菊之助丈は、
もう少し年かさの若い娘といった雰囲気。

ここは、桜の衣裳から離れて、
紫色の町娘風の着付け。
そこから「引き抜き」で、白の衣裳へ。


『鈴太鼓』
躍動感のある踊り。

鈴太鼓を打ち合わせ、
床に打ち付けて踊るうち、
鐘に対する恨みの念が現れ⋅⋅⋅

そこから『鐘入り』までは、
もう、一気に⋅⋅⋅
鐘に上がり見得を切る姿は、
神々しく見えました。


心、技ともに揃った、
充実の「京鹿子娘道成寺」。
まだまだ見ていたい、
また見に行きたい、
⋅⋅⋅そんな舞台でした。