四月大歌舞伎観劇の記録。
二、新版歌祭文ー座摩社、野崎村
「座摩(ざま)社」は上演が珍しい場面。
質屋油屋の一人娘お染と深い仲になった、丁稚久松。
手代小助の策略でお店の金を奪われ、
盗人の汚名を着せられます。
次の場面、「野崎村」の伏線として、丁寧な上演。
「野崎村」、通常の上演では、
婚礼を控えたお光が、
うきうきとした様子で
なますを刻むところから始まります。
今回はその前の場面から、丁寧に。
病気の母親を介抱するお光。
そこへ久松が小助に伴われ、
帰ってきます。
小助はお店のお金紛失のことを言い立て、
返済を迫ります。
久松の育ての親久作は、
そのお金を弁済し小助を追い返します。
⋅⋅⋅と、いつもの野崎村の前に、
いろいろな出来事がありました、
たまにはこういう、
丁寧な出し方もいいものです。
また、この場は、
時蔵丈のお光、歌六丈の久作、
錦之助丈の久松、又五郎丈の小助⋅⋅⋅と、
すべて中村時蔵家ゆかりの役者さん。
そして、ようやくいつもの野崎村です。
時蔵丈のお光は、
田舎娘らしい闊達さや明るさがありました。
後に尼の姿となってから、
あまりギャップを感じないのは、
久松への思いが
一貫しているからだと思いました。
歌六丈の久作。
ただのお百姓ではない、
元武士という硬質さを感じました。
雀右衛門丈のお染。
幼さ、初々しさが際立ちます。
(父の先代雀右衛門丈では
濃厚な色気を感じましたが、
持ち味が異なります。)
秀太郎丈のお染の母。
何と言うことはなく、
出てくるだけで、大店の主という雰囲気。
お染は母と一緒に舟で、
久松は駕籠で店に帰ります。
両花道を使い、華やかな三味線の演奏。
そして、皆が立ち去った後、
静けさを際立たせる鴬の声⋅⋅⋅
ふと、心付き途方に暮れ、
久作にすがり付くお光⋅⋅⋅
ここは胸に迫る名場面です。
お染の豪華な振り袖の衣裳。
背中側に よだれ掛けのように見える、
刺繍のついた布を垂らしています。
これは他のお役ではあまり見ない物。
「襟掛け」、「襟袈裟」と言い、
着物が髪の油で汚れるのを
防ぐ役目があるようです。
他の役者さんでは、
これを付けていたかしら⋅⋅⋅
これまでに観たものでは、
先代雀右衛門丈以外では、
思い出せません。