今月歌舞伎座で上演の、
「於染久松色読販」は、「お染久松物」のひとつ。

宝永年間、
大坂の絞り油屋の一人娘であるお染と、
丁稚久松が起こした心中。

人々の口の端にのぼり、
すぐに歌舞伎や人形浄瑠璃で上演されました。

いわゆる、「お染久松」の世界。
その後も様々な脚本が作られたようです。
現在上演されているものは、
今回の「於染久松色読販」の他、
「新版歌祭文ー野崎村」、
清元舞踊の「道行浮塒鴎」が思い浮かびます。


「新版歌祭文ー野崎村
(しんぱんうたざいもんーのざきむら)
野崎村の久作の家では、久作の後妻の連れ子お光が、
かねてより慕っていた養子の久松との祝言を控え、
嬉しさを隠せない様子。
そこへ、久松が丁稚奉公をしていた油屋の
ひとり娘お染がやって来ます。
かつて恋仲であったお染と久松の
心中の覚悟を知ったお光は自ら身を引き、
尼となる決意をします。
迎えに来た油屋の後家お常の配慮により、
久松は駕籠、お染は舟で別々に野崎村を後にする姿を、
お光は涙ながらに見送るのでした。
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉


⋅⋅⋅この演目では主人公はお光。
許嫁久松との婚礼の喜びから一転、
真実を知ってしまい、身を引きます。

お染と久松を気丈に見送った後、
「ととさん、どうしょう⋅⋅⋅」と
すがり付いてむせび泣く哀れさ⋅⋅⋅⋅。


私が観た、印象深い「野崎村」。
1989(平成元)年1月 歌舞伎座。
お光⋅⋅⋅尾上梅幸
久松⋅⋅⋅中村扇雀(現⋅坂田藤十郎)
お染⋅⋅⋅中村雀右衛門(四世)

他に、久松の父久作は實川延若、
お染の母お常は片岡我童、といった
円熟の舞台でした。

昭和64年1月⋅⋅⋅平成が始まった月でした。