一、金閣寺
児太郎の雪姫。
幽閉されたはかなげな姿、
しかし運命を自ら切り開く強さも感じさせる姫。
姫とは言いつつも狩野之介とは夫婦であり、
そういった色っぽさも感じさせました。
幕開きから終盤まで、
テンションを保って演じていました。
何というか⋅⋅⋅とても力量、熱量を感じました。
筋書によると、
幼少時から「金閣寺」がかかる度に劇場に足を運び、
演じられる日を夢見ていたとのこと。
児太郎丈、まだ24才だそう。
その若さで歌舞伎座でこの役を勤められるのは、
名門であることだけではなく、本人の努力。
慶寿院尼で5年ぶりに舞台復帰の中村福助丈。
懐かしいそのお声は、
3階席までよく届きました。
まだまだ完全ではないのかもしれません。
この舞台姿を見て、
かつで鉛毒という不治の病におかされながら、
名女形として君臨し続けたという、
五代目歌右衛門を思いました。
松永大膳は松緑。
悪役としての大きさ、色気も感じます。
終盤の立ち回りには迫力がありました。
狩野之介直信は幸四郎。
襲名以来、初めて見る歌舞伎らしい役。
(先月は、「花魁草」の米之助と弥次さんだったので⋅⋅⋅)
憂いのきいた、優しげな風情。
この役は先代の芝翫丈が得意にしていて、
その古風な舞台姿がふっと目に浮かびました。
二、鬼揃紅葉狩
この演目ではどうしても、
新歌舞伎十八番の「紅葉狩」と比べてしまいます。
幸四郎は3年前のこの秀山祭で、
「紅葉狩」を演じています。
こちらの「鬼揃」は、
後半の立ち回りが眼目でしょうか。
鬼女幸四郎に付き従う侍女は、
高麗蔵、米吉、児太郎 宗之助。
若い女形である米吉、児太郎にとって、
隈取をとり毛振りをするような役は
初めてなのではないでしょうか。
前半の清楚な侍女と、
後半の醜悪な隈取の鬼女はインパクトが大きいです。
「紅葉狩」では、
眠った平維茂一行を起こしに来るのは山神ですが、
この「鬼揃」では、
男山八幡の末社である女神、男神の二人です。
東蔵、玉太郎の祖父孫コンビでほほえましい。
玉太郎はついこの間まで子役を演じていましたが、
今、大人の役の入口に立っています。
きびきびとした踊りが頼もしい。
幸四郎の更科の前。
女形としても美しいし、
この演目の芯としての気概も感じます。
三、河内山
吉右衛門の河内山は、悠々と。
愛嬌と無頼漢のような凄みも自由自在。
幸四郎の松江出雲守。
酒乱であり、身内には無理を通そうとするが、
体面を気にするお殿様。
屈折した難しい役ですが、
そういう人らしく見えました。