この時期、芝生の中で咲いているのを見かける、
桃色の螺旋状の花、ネジバナ。

別名を「モジズリ」と言うそうです。

『陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに
乱れ初めにし我ならなくに 河原左大臣』

百人一首にある有名な句を思い出します。


この句にある「もぢずり」とは、
古来、福島県の特産だった「文字摺」のことだそう。

「文字摺」は、
絹織物を乱れた模様のある石にあてがい、
草の汁を擦り付けて染めたもの。

染め物の文字摺とネジバナとは無関係だそうですが、
なぜか江戸時代にはそう呼ばれていたそうです。

ネジバナのよじれた姿と、
文字摺のよじれた模様の
イメージからの命名でしょうか。


文字摺の産地だった信夫の里には、
河原左大臣(源融)と、
土地の娘虎女との恋物語と共に、
「みちのくの⋅⋅⋅」の句が残されているそうです。




今は途絶えてしまったらしい、
文字摺とはどんな染め物なのか、興味があります。


歌舞伎「競伊勢物語」(はでくらべいせものがたり)は、
小由(こよし)という老女の家が舞台。

小由は元はみちのくに住んでいましたが、
娘 信夫と共に奈良春日野の里に移り住み、
今は文字摺の染め物を商いにしています。

幕開きでは、手伝いの女性が文字摺の布を
庭先に干す光景を見せていました。


文字摺の産地、信夫の里⋅⋅⋅
東北の枕詞として有名な信夫山のふもとの地。
今でも「文字摺」、「文知摺」という地名が残るようです。

源融と虎女の伝説、文字摺石がある文知摺観音は、
いつか訪れてみたい場所です。