團菊祭五月大歌舞伎昼の部、観劇記録続き。



「吉野山」、
通常は清元・竹本の掛け合いで
上演されることが多いですが、
今回は竹本のみでの上演です。

この舞踊は元々は人形浄瑠璃「義経千本桜」の、
「道行初音旅」ですので、
歌舞伎での初演の頃は、
義太夫節(竹本)で演じられたようです。

その後、歌舞伎で上演される折に、
常磐津節、富本節などに写されました。
現在では清元と竹本の掛け合いの演奏が
定番となっています。

今回は竹本のみの演奏での上演のため、
流れが異なっている部分があったので、
メモです。

***
静御前は通常のように花道からではなく、
舞台中央の桜の陰から登場。

〽恋と忠義はいずれが重い
〽見渡せば四方の梢もほころびて
〽徳若に御萬歳とは⋅⋅⋅
のくだりを一人で踊る。

忠信が花道すっぽんからせり上がり
舞台中央へ。

清元にはない、
〽雁と燕はいずれが可愛い
のくだりを連れ舞いし、
二人で、弥生雛の形で決まる。

その後は忠信の戦物語から
速見藤太の登場と、
いつもと同様の流れ。
***


菊之助の静御前、
きれいだし丁寧に踊っているが、
いつもの見せ場がない分、
少し物足りなさを感じました。

衣裳は赤の着付け、打ち掛けも赤。


海老蔵の忠信、
以前見たときより、手足を使った表現など
かなり良くなっているように感じました。

竹本のみの「吉野山」は、
骨太な海老蔵の芸風に合っているようにも
思いました。

衣裳は明るめの紫に金の源氏車、
襦袢は赤。


男女蔵の藤太、
このような道化役でも、すっかり安定感が出て、
安心して見ていられます。

花道の忠信から菅笠をキャッチし、
片足立ちのまま幕。


菊之助と海老蔵の共演、
最近では珍しいです。


未来の「團菊」となるべき二人、
期待しています。