今年見た歌舞伎の舞台、覚え書きです。


(浅草公会堂から浅草寺方面・1月)

<今年の心に残る舞台>
①6月歌舞伎座、「義経千本桜」の通し上演。
通し、と言っても、
知盛、権太、狐忠信に焦点を当てた三部制の公演でした。

猿之助さんが新しい歌舞伎座に
本格的に出演するのは初めて、
染五郎さんとの共演も久し振りでした。

第一部では、知盛と典侍局、
第二部では、弥助とお里、
第三部では、静御前と忠信での共演でした。

第三部の「吉野山」では、珍しいおもだか屋の型の踊り。
「川連法眼館」では、3階鳥屋近くの席で観劇し、
宙乗りの引っ込みとともに花吹雪を浴びました。


猿之助さんの宙乗りは、この6月の狐忠信の後も、
7月の「流星」、8月の「弥次喜多」と、
3月続けて見ることができました。

②4月歌舞伎座の「不知火検校」。
幸四郎さんの不知火検校。
鬱屈した情熱、不気味さ。

③国立劇場11月「仮名手本忠臣蔵」第二部。
菊五郎さんの勘平。
色あせない若々しさ、
今そこに、勘平という人が息づいている…と
そんなふうに感じました。


<今年の注目>
①若手の着実な歩み。
児太郎さんの役々、「鳥居前」の静御前、「対面」の喜瀬川、
「浮塒鷗」のお染、大役の「仮名手本忠臣蔵」の小浪など、
若女形の王道と言える道を歩んでいます。
「女暫」の女鯰若葉が似合ったのは、意外な拾い物。

数年前のお正月に「乗合船」の芸者を踊ったときには、
背の高さと、袖からのぞく大きな手に不安を感じましたが、
今はそういったことを全く感じさせないのは、
精進の賜物でしょうか。

新悟さんの静御前の美しさ
台詞の息の詰め方には感心しました。
新春浅草歌舞伎での「四の切」です。
今年は新悟さんの舞台にあまり巡り合わなかったのが残念。

②吉之丞、梅花の名前の復活。
それぞれ、播摩屋、成駒屋のお弟子さんとして、大切な名前。
吉之助さんが吉之丞を、芝喜松さんが梅花を襲名されました。

他には、京妙さんの京屋を離れたところでの活躍がありました。
6月歌舞伎座、「渡海屋・大物浦」での女官は、
猿之助さんの典侍局をサポート。
9月歌舞伎座、「一条大蔵譚」の鳴瀬の抜擢。
(これは私は見ていません。)
8月の音の会、「摂州合邦辻」の浅香姫では、
初々しい中にも退廃の味わいを感じるお姫様でした。

③今年は何と言っても、大きな名跡の復活。
中村雀右衛門と中村芝翫の襲名披露がありました。
襲名前はその名前を見ると、
偉大な父たちのお顔が浮かびましたが、
襲名披露が済んだ今では、不思議なもので、
もう、そのお名前がしっくりくるように感じます。



来年も1月は、市川右團次・右近襲名、
2月には中村勘太郎・長三郎初舞台、
5月には坂東彦三郎家の襲名が、
そして再来年1月には、
高麗屋の三代同時襲名が控えています。

歌舞伎界の大きなうねりを感じます。



<今年見た歌舞伎>
「新春浅草歌舞伎」第二部
*毛抜   粂寺弾正…巳之助
*義経千本桜ー川連法眼館の場   狐忠信…松也、静御前…新悟

「寿初春大歌舞伎」昼の部
*廓三番叟   染五郎、孝太郎、種之助
*義経千本桜ー鳥居前   源九郎狐…橋之助、静御前…児太郎
*石切梶原   梶原平三…吉右衛門、梢…芝雀
*茨木   真柴…玉三郎、渡辺綱…松緑、宇源太…歌昇

「中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露  
                 三月大歌舞伎」昼の部
*寿曽我対面   五郎…松緑、十郎…勘九郎、工藤…橋之助
*女戻駕   時蔵、菊之助、錦之助
   俄獅子   梅玉、魁春、孝太郎
*鎌倉三代記   時姫…雀右衛門、三浦之助…菊五郎、高綱…吉右衛門
*団子売   仁左衛門、孝太郎

「四月大歌舞伎」昼の部
*松寿操り三番叟   染五郎、松也
*不知火検校   幸四郎、孝太郎、染五郎、松也、秀太郎
*身替座禅   山蔭右京…仁左衛門、太郎冠者…又五郎、
奥方玉の井…左團次

「團菊祭五月大歌舞伎」昼の部
*鵺退治   源頼政…梅玉、菖蒲の前…魁春
*寺子屋   松王丸…海老蔵、源蔵…松緑、千代…菊之助、戸浪…梅枝
*十六夜清心   十六夜…時蔵、清心…菊之助、求女…松也
*楼門五三桐   石川五右衛門…吉右衛門、真柴久吉…菊五郎

「六月大歌舞伎」
第三部 狐忠信
*吉野山   忠信…猿之助、静御前…染五郎
*川連法眼館   忠信…猿之助、静御前…笑也、義経…門之助、
亀井…巳之助、駿河…松也、川連法眼…寿猿
第一部 碇知盛
*渡海屋・大物浦   知盛…染五郎、典侍の局…猿之助、
安徳帝…武田タケル
*時鳥花有里   染五郎、梅玉、魁春、東蔵、笑三郎、春猿

「七月大歌舞伎」昼の部
*柳影澤蛍火   柳澤吉保…海老蔵、護寺院隆光…猿之助、
おさめの方…尾上右近、桂昌院…東蔵、徳川綱吉…中車
*流星   流星…猿之助、牽牛…巳之助、織姫…尾上右近

「八月納涼歌舞伎」
第一部
*嫗山姥   八重桐…扇雀、源七…橋之助、太田太郎…巳之助、
沢瀉姫…新悟
*権三と助十   権三…獅童、助十…染五郎、おかん…七之助、
助八…巳之助、彦三郎…壱太郎
第二部
*東海道中膝栗毛   弥次郎兵衛…染五郎、喜多八…猿之助、
金太郎、團子

「第十八回 音の会」
*摂州合邦辻   玉手御前…鴈乃助、俊徳丸…京蔵、浅香姫…京妙

「第二回 双蝶会」
*車引   松王丸…歌昇、梅王丸…種之助、桜丸…梅丸
*寺子屋   松王丸…歌昇、源蔵…種之助、戸浪…米吉、千代…梅枝

「中村橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露 十月大歌舞伎」
*初帆上成駒宝船   橋之助、福之助、歌之助
*女暫   巴御前…七之助、轟坊…松也、女鯰…児太郎、舞台番…松緑
*道行浮塒鷗   お染…児太郎、久松…松也、女猿曳…菊之助
*極付幡随長兵衛   長兵衛…芝翫、お時…雀右衛門、出尻…松緑、
水野…菊五郎、近藤…東蔵

「仮名手本忠臣蔵 第二部」
*道行旅路の花聟   おかる…菊之助、勘平… 錦之助、鷺坂…亀三郎
*五・六段目   勘平…菊五郎、定九郎…松緑、おかる…菊之助、
おかや…東蔵、お才…魁春、源六…團蔵、千崎…権十郎、
原右郷衛門…歌六
*七段目   由良之助…吉右衛門、おかる…雀右衛門、
平右衛門…又五郎、力弥…種之助

「仮名手本忠臣蔵 第三部」
*道行旅路の嫁入   戸無瀬…魁春、小浪…児太郎
*山科閑居   加古川本蔵…幸四郎、由良之助…梅玉、お石…笑也
*天川屋   天川屋義平…歌六、お園…高麗蔵
*討入り   梅玉、米吉、團蔵、錦之助、團蔵、宗之助、松江、亀寿、
種之助、隼人、男寅、梅丸、男女蔵、松緑、亀蔵、玉太郎、左團次