先日行った丘の上の公園で見つけた、ツタ2種。

こちらはキヅタ、常緑です。

ウコギ科キヅタ属。
アイビーはこちらの仲間です。

これはツタ、冬には落葉します。

ブドウ科ツタ属。
あと少しで真っ赤に染まりそうです。



蔦で思い出す、歌舞伎の演目、
「蔦紅葉宇津谷峠」(つたもみじうつのやとうげ)。

…盲目の按摩、文弥は座頭の位を譲り受けるため、
百両の大金を持って、江戸から京に向かいます。

その金を狙う、悪人の提婆の仁三。

金策に破れ、京から江戸に戻る十兵衛は、
文弥を仁三から救います。

大金のことを知った十兵衛は、
文弥に借金を申し入れるが断られ、
宇津谷峠で文弥を殺して金を取ります。…


題名の「蔦紅葉」とは、蔦が生い茂る山中、
また季節が晩秋であること、
殺された文弥の血潮を暗示しています。

山中で非業に命を終える哀れな文弥と、
凄みのある悪党 提婆の仁三を
2役早替わりで演じるのが、見どころ。

十兵衛の殺しの台詞、
作者河竹黙阿弥の得意とするところです。
「京三界まで駆け歩き、都合のできぬその金を、
持っていたのこなたの因果、欲しくなったがわしの因果、
因果同士の悪縁が、殺すところも宇津谷峠、
しがらむ蔦の細道で、血汐の紅葉血の涙、
このひきあけが命の終わり、許してくだされ、文弥どの。」

近年あまり掛からないお芝居。
調べたところ、10年ほど前に中村勘三郎さんが
文弥と仁三を演じたのが、最後のようです。

私が見たのは、1992年、
尾上菊五郎さんの文弥と仁三でした。
このときは5月の團菊祭での公演のためか、
「蔦紅葉…」ではなく、「皐月闇宇津谷峠」でした。

この2役を演じきれる器用な役者さん、
他にはちょっと思い付きません。
そんなところが、
上演が絶えている理由かもしれません。