もう間近に迫った橋之助さんの芝翫襲名。

近年見た舞台では、
「伽羅先代萩」の仁木弾正、「鳥居前」の狐忠信など、
動く錦絵…とも言えるような存在感を示しています。

「寿曽我対面」では、まだ比較的若いのに、
五郎よりも工藤の方が似合うという
役者としての得難いニン。

十三代目片岡仁左衛門丈に見込まれて、
「輝虎配膳」という重厚な演目を
直々に教わったというエピソードがあります。

「天保遊侠録」や「暗闇の丑松」などの新作でも、
すっきりとした姿が印象に残ります。

不思議なのが、「曽根崎心中」の九平次、
嫌味な敵役ですが、持ち役のようで
三演しています。


襲名披露公演でのこの役、
「極付幡随長兵衛」の番随院長兵衛。

立派な押し出しです。

八代目中村芝翫を名乗る橋之助さんは、
中村勘三郎丈の義理の弟であり、
舞台をともにすることが多かったようです。

特に歌舞伎座八月の公演、「納涼歌舞伎」では、
勘三郎さん、坂東三津五郎さんと
同じ舞台に上がるとともに、
いろいろな大役に挑戦するチャンスを
与えられていたようです。

勘三郎さん、三津五郎さんは今はなく、
兄、中村福助さんは舞台を離れている今、
どのような思いで襲名に取り組まれるのでしょうか。

今の歌舞伎界、立役は70代になった
松本幸四郎丈、尾上菊五郎丈、
中村吉右衛門丈、片岡仁左衛門丈など
活躍されていますが、
その下の世代がいない状況です。

襲名を機に、
さらに大きな役を演じる機会が増えることと思います。
今後の歌舞伎界の主軸として、
また身に付けてきたことを次世代につなぐ役として、
活躍を祈りたいと思います。